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8「告白は、何度もしてる」

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「それでも、先生の一番近くにいるのは僕だから」
 恋愛対象から外れた弟枠でも、一番近くにいる。
「今はそれでもいいかなって」
「そんな気持ちでだらだら過ごして何もしないから、そういう目で見てもらえないんだろー? ちゃんと告白して家族枠から抜け出さないと」
「告白は、何度もしてる……」
 ぽつりと呟くユラン。
「え?」
 怪訝な顔になるカイ。
「俺も何度か見掛けたな、告白してるとこ」
 横からヴェイセルも肯定する。
「は? それで付き合ってないってことは、振られてるってこと? ユランは振られてるのに家に出入りしてんの? どんな鋼の神経の持ち主だよ?」
 説明を求める! とカイは机を叩く。
「振られてる訳じゃないんだよな、告白自体を流されてるんだ。俺が見たのはこんな感じだったな」

  『僕、先生のこと大好きなんです』
   真剣な顔で告白するユランに対し。
  『そうかそうかありがとな、嬉しいよ』
   笑顔で答えて、ユランの頭をよしよしと撫でるエイダール。
  『えへへへへ』

「うわ、なにその子ども扱い」
 カイが思うところの、告白を流されるというのは、『聞かなかったことにする』というような対応だと思っていたのに、そんな段階までたどり着いていなかった。
「そうなんだよ、恋愛の『好き』だと認識されてないんだよなあ。照れてそんな風に流そうとしてるのかなと思ってよく観察したが、裏のなさそうな満面の笑みだった」
 可愛い弟分に懐かれて嬉しい、という兄貴分の顔なのだ。


 実はそれを目撃した後、さすがにユランが哀れで、ヴェイセルはこっそりエイダールに探りを入れてみたのだが。

  『え、あいつのことどう思ってるかって?
   そうだな、ガキの頃、おにいちゃんおにいちゃんつって
   転がるようにあとついて来てたの可愛かったんだよなあ……
   いつの間にか俺よりでかくなってて驚くけど、中身はあんま変わらなくて。
   俺がちゃんと見ててやんないとなって』

 思いっきり保護者目線で語られた覚えがある。脈なしもいいところであった。


「ユランもそこで頭撫でられてへらへら笑ってないで、訂正しなきゃだろ」
「あ、それは、子ども扱いはされたくないけど、頭撫でて貰えるのは嬉しかったっていうか……それでつい」
 僅かな葛藤を経て、ユランの心の中で頭を撫でられるほうに天秤が傾いたらしい。


「ああ、うん、お前がなんか、だめなのは分かった」
「うん、ほんと、だめなんだよね、僕」
 恋愛対象になりたいが、訂正して恋愛対象ではないとはっきり切り捨てられるのは怖い。それならまだ弟枠で甘やかされている方がいい。
「結局、一歩踏み出して今の関係が壊れるより、恋人じゃなくても一番近くにいられる現状維持でもまあいいかって思っちゃって………………あああああっ」
 突然叫び出したユランにぎょっとする二人。
「それなのに出入り禁止になったんだった……どうしよう」
 何一つ解決しないまま、三人の昼休憩は終わった。
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