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篠崎家の家庭事情
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昼休みは、実にとって、別の高校に通っていて、ここにはいない誠を身近に感じる事のできる、唯一にして貴重な時間である。
誰にも邪魔されたくないという、実の胸の内を正確に理解できるのは、幼稚園からの付き合いで、篠崎家の事情をよく知る兄弟の幼馴染み、辻堂聡(ツジドウサトシ)しかいない。
昼食をともにする友人は聡の他にも数名いたが、彼らは皆、高校からの付き合いだ。
実に双子の兄がいる事を、彼らは知らないし、あえて言う必要もないと実は思っている。
そして聡も、そんな実の性格を理解しているから沈黙を貫いている。
その日の昼休み、担任に呼ばれて職員室に行っていた聡が戻って来た時、問題の少女は、何故か聡の後から教室に入って来た。
彼女は、何かを物色するかのように教室内を見回すと、あろう事か、聡を押し退けて実の前に立ち、聡が呆気に取られている間に、勝手に話を始めた。
「篠崎クンってぇ、お弁当食べてる時ぃ、ホントぉ幸せそうだよねぇ。
ねぇ。今度お弁当持ってくるからぁ、食べてくれるぅ?」
他者を押し退けるという、自分勝手さも去ることながら、間延びした独特の話し方をする彼女に、実は、あまりいい印象を持てなかった。
声を聞いてるだけで、せっかくの『誠のお手製弁当』が不味くなる気がする。
うんざりして傍らを見やると、聡が、何か言いたそうにこちらを見ている。
その様子から、聡にとってもこの状況が不本意なのだとわかった。
小さく溜息を吐いた実は、手早く弁当を片付けて、改めて少女を見た。
どこかで見た気もするが、まったく知らない顔だと結論付ける。
「あンた…」誰?…と、続けようとした実より早く声を上げたのは、同じサッカー部員の島田徹也(シマダテツヤ)だった。
「…田村恵美(タムラエミ)チャン。去年の、那岐高準ミスの…!」
まるで憧れのアイドルと遭遇した時のように、緊張と興奮で、それ以上言葉が出て来ない様子の島田に、恵美はまんざらでもなさそうにポーズをとって見せていた。
誰にも邪魔されたくないという、実の胸の内を正確に理解できるのは、幼稚園からの付き合いで、篠崎家の事情をよく知る兄弟の幼馴染み、辻堂聡(ツジドウサトシ)しかいない。
昼食をともにする友人は聡の他にも数名いたが、彼らは皆、高校からの付き合いだ。
実に双子の兄がいる事を、彼らは知らないし、あえて言う必要もないと実は思っている。
そして聡も、そんな実の性格を理解しているから沈黙を貫いている。
その日の昼休み、担任に呼ばれて職員室に行っていた聡が戻って来た時、問題の少女は、何故か聡の後から教室に入って来た。
彼女は、何かを物色するかのように教室内を見回すと、あろう事か、聡を押し退けて実の前に立ち、聡が呆気に取られている間に、勝手に話を始めた。
「篠崎クンってぇ、お弁当食べてる時ぃ、ホントぉ幸せそうだよねぇ。
ねぇ。今度お弁当持ってくるからぁ、食べてくれるぅ?」
他者を押し退けるという、自分勝手さも去ることながら、間延びした独特の話し方をする彼女に、実は、あまりいい印象を持てなかった。
声を聞いてるだけで、せっかくの『誠のお手製弁当』が不味くなる気がする。
うんざりして傍らを見やると、聡が、何か言いたそうにこちらを見ている。
その様子から、聡にとってもこの状況が不本意なのだとわかった。
小さく溜息を吐いた実は、手早く弁当を片付けて、改めて少女を見た。
どこかで見た気もするが、まったく知らない顔だと結論付ける。
「あンた…」誰?…と、続けようとした実より早く声を上げたのは、同じサッカー部員の島田徹也(シマダテツヤ)だった。
「…田村恵美(タムラエミ)チャン。去年の、那岐高準ミスの…!」
まるで憧れのアイドルと遭遇した時のように、緊張と興奮で、それ以上言葉が出て来ない様子の島田に、恵美はまんざらでもなさそうにポーズをとって見せていた。
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