美しく優秀な次女がいるのなら、私は必要ありませんよね? 〜家を捨てた私は本当の姿に戻り、追いかけてきた皇子と街で暮らす〜

夜野ヒカリ

文字の大きさ
上 下
56 / 57
続編

初めてのお茶会⑥(エリオット視点)

しおりを挟む


「──僕には6つ年上の兄がいます。……兄上はとても優秀で、学園ではいつもトップの成績を取っていて、今は皇宮で文官をしています。皇宮で経験わ積み、8年後には父上の後を継いでコール伯爵となる予定です」

「まぁ、まだお若いのに皇宮で仕事をされているのですね」

 6歳差ということは、お兄さんもまだ学園を卒業してすぐのはず。普通、学園を卒業したらまずはそれぞれの家に戻り、両親や祖父母などから領地経営についてを学ぶ。そして、学園で学んだ知識をある程度応用して活用できるようになってから、皇宮やその他の仕事を始め、知識や経験を深めるというのが一般的だ。

 それにも関わらず、すでに皇宮に勤めているということは、十分な知識と、その知識を応用できるだけの素質が学園を卒業した時点であるということになる。
 それに、家を継ぐ時期が決まっているということは、すでに伯爵を務めるのに十分な素養もあって、あと必要なのは経験を積むことだけなのだということだと思う。 

 ちなみにお母様も大変優秀な成績で学園を卒業していて、学園に通っていた頃から領地運営の仕事の一部を担われていたとロバートから聞いた。……ロバートに『私がエリオット様とソフィア様にお話ししたことは内緒にしてくださいね』と言われてしまったけど……普通は学園を卒業しても基礎的な知識を覚えられているだけらしいから、それがどれだけ凄いことなのかは言わずもとわかることだ。

「すごいお兄様ですね」

「はい。……ですが、兄上が優秀な方なので、僕に勉強を教えに来てくださる方々も“も優秀なはず”と期待していらっしゃいます。……だけど、実際に勉強を進めていくと、皆さん落胆してしまうんです。僕が兄上みたいに優秀じゃないから……」

「勉強は人と比較するものではないと思いますけど……」

「僕も妹と同意見です。オリバー様自身、努力をされているのでしょう?」

「もちろんです! でも、なのに…僕は兄上のようにできないんです……」

 “成績は人と競う比べるものではない”。そう言うのは簡単だけど、実際に比較しないというのは難しい。身近に優秀な人がいて、周囲が比較してくるとしたらなおさら。

 さっきは、彼の気持ちを引き出すために、『周りが勝手にしてくる比較に勝手に傷付いているのは自分自身じゃないのか』、というようなことを言ったけど、目の前で落胆される様子を見ていたら傷付かない方がおかしい。

「……家庭教師の誰かが僕の話をしてしまったみたいで、“コール伯爵家の次男は落ちこぼれ”という噂が広がってしまいました」

「それは……」
「そんな……」
 
 きっと、オリバー様が落ちこぼれというわけではないはずだ。“お兄さんと比べてしまうと”というだけで、年齢にしたら十分な教養が身に付いている。

 しかし、一つ疑問が浮かんだ。

「答えにくいことかもしれませんが、その噂をどこで耳にされたのでしょうか?」

「……僕の家で開催されたお茶会で、いらしていた方々がそのように話されているのを……」

「あれ? オリバー様は今日が初めての社交でしょう?」

「はい、正式に参加するのは、ですが。……以前コール伯爵邸で開かれたお茶会が気になって覗きに行ってしまったことがあるんです」
 
 オリバー様は苦笑した後で、暗い表情になった。

「その時に、他家の方々が『コール伯爵家の次男は落ちこぼれだ。長男が優秀なだけに、未熟さがより一層際立っている』といったようなことを話しているのを聞いてしまって……もちろん、主催者の息子を直接的に貶すような言い方ではなかったのですが……」

 なるほど……“お茶会”というものに興味があって覗きに行ってしまったら、自分を貶すような会話が行われていたと……

「その時に庇ってくださったのがカトル公爵なんです」

「僕達のお母様が?」

「はい、カトル公爵は僕がいたことにお気付きでなかったと思いますが、『会ったことのない子のことをそのように言ってしまうのはどうでしょうか? ……確かにコール伯爵のご長男は優秀だと聞きますが、弟君がどうという指標にはなりません。子は皆、宝石の原石です。それぞれが秘めている輝きを発揮させられるかどうかは私達大人の働きにかかっているのでは?』と言ってくださったのです! さっき、初めてご挨拶しましたが、お綺麗でお優しい方でした」

 オリバー様はさっきまでの暗かった表情が一変し、キラキラと輝くような瞳でお母様の話をしている。……すごいな。何年も前のことだろうに、お母様が言った言葉を全て覚えているみたいだ。

 ……このお母様に心酔……いや、依存してしまっている様子。さっき挨拶した時にお父様があのような態度をとったのも、お母様に依存してしまっているからか?
 まぁ、僕とソフィーが想像したような理由もあったのだろうけど……

「僕もお母様の言うように、オリバー様にはオリバー様にしかない才能があるかと思います。もっと自信をもたれてよろしいのではないですか?」

「私もそう思います」

 お母様がすでにオリバー様の悩みの種を取り除く言葉を言っているならと、ソフィーと共に言葉をかけるが、オリバー様は顔を歪めてしった。

「………ですが、僕はまだ自分の輝きというものを見つけられていません。僕は……僕は、宝石の原石などではなく、ただの石ころなんだっ……」

 










~~~~~~~~

 読んでくださりありがとうございます(*^^*)

 オリバー君はちょっと(大分?)面倒臭いことになっちゃってる子ですが、立派な子になる予定ですので、それまでは暖かい目で見守っていただければと思います_(..)_

 長くなってしまった「初めてのお茶会」ですが、次回で(たぶん)終了する予定です!
 その後は以前少しお話しした通り、別の話としてエリオットとソフィアの学園生活を描いていこうかなと思います!
しおりを挟む
感想 132

あなたにおすすめの小説

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。

藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。 何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。 同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。 もうやめる。 カイン様との婚約は解消する。 でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。 愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません! 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。

【完結】側妃は愛されるのをやめました

なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」  私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。  なのに……彼は。 「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」  私のため。  そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。    このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?  否。  そのような恥を晒す気は無い。 「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」  側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。  今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。 「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」  これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。  華々しく、私の人生を謳歌しよう。  全ては、廃妃となるために。    ◇◇◇  設定はゆるめです。  読んでくださると嬉しいです!

処理中です...