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続編

初めてのお茶会③(ソフィア視点)

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「さっそくですが、私の息子を紹介させてくださいませ」

 コール伯爵夫人に促されて一歩前に出る男の子。……恥ずかしがっているのかしら? 少し俯き加減で、頬にも赤身が差している。

「は、初めてお目にかかります。 コール伯爵が次男、 オリバー・コールと申します!  えっと、よ、よろしくお願いします!」

「ふふっ、自己紹介をありがとう。 私はカトル公爵家当主のリーナ・カトル。貴方のお母様とお友達だから、そんなに緊張しなくても大丈夫よ」

「あ、ありがとうございます……!」

 オリバー様は優しく微笑んだお母様に、顔をさらに赤くしている。これは……

「初めまして、コール伯爵令息。私はウィリアム・アストラ・カトル。カトル公爵の夫という立場だが、個人としてはアストラ伯爵位を所有している。閣下と呼ぶ者が多いが、好きなように呼んでくれ」

 お父様は笑顔を浮かべながらコール伯爵令息と握手を交わしている。……だけど、どこか迫力のある笑顔のような気がするわ。まったく、大人気ないわね。

 お父様のアストラ伯爵位は、お父様が皇家を出てお母様と結婚する時に授かったもの。 だから、ミドルネームにアストラ伯爵としての名前をもっていらっしゃるの。カトル公爵領の隣にアストラ伯 爵としての領地も授かっているから、そちらの領に出向かれて数日間不在になるということもあって、少し……本当に少しだけど寂しいと感じることがある。

 普段はカトル公爵の夫として諸々の対応をしてい らっしゃるお父様だけれど、貴族としての集まりの際にはアストラ伯爵としての立場の方が重くなるから、そちらの立場に立って対応することもある。……なかなかに難しい立場だと思う。

「さぁ、 二人も挨拶を」

「はい、お母様。 ……僕はカトル公爵家の長男、エリオット・カトルと申します。 同い年のオリバ一様とは今後も関わる機会が多くなるかと思いますので、仲良くしていただければ嬉しいです」

「カトル公爵家の長女、ソフィア・カトルと申します。兄のエリオット共々よろしくお願いいたします」

 エルは紳士の礼を、私はカーテシーをしてコール伯爵夫人と、コール伯爵子息に挨拶をする。

「わぁ……」

「丁寧な挨拶をありがとうございます。お二人とも10歳とは思えない美しい礼ですわね……オリ バーも私も感嘆してしまいましたわ」

「お褒めいただきありがとうございます」

 エルに合わせて頭を少し下げる。……ふふっ、今までたくさん練習してきたカーテシーがこうして褒めてもらえて嬉しいわ。いっぱい練習してきてよかった。

「皆様が会場に入られた時かからお聞きしたいと思っていたのですが、カトル公爵家の皆様は今日のお洋服の色を揃えていらっしゃるのですね?」

「えぇ、そうなのです。家族みんなでというのはおかしいでしょうか?」

「いいえ!とっても素敵ですわ。……貴族であると、家族としての絆が希薄になってしまいがちですが、カトル公爵家の皆様からは仲の良さが伝わってきますわ。ふふっ、私達も今度やってみようかしら?」

 改めて自分達が着ているドレスを見る。コール伯爵夫人が言っていたように、今日は家族みんなで色を揃えた服を着ているの!
 揃えた色はカトル公爵家の象徴である青銀色と白金色。

私とお母様のドレスは形こそ違うけれど、 色は同じだし、刺繍も同じ意匠のものが施されている。お父様とエルは青銀色の上着に白金色のアスコットタイを合わせたという感じ。

 ……私は他の貴族家については歴史や構成員について知っているだけで、家族仲なんかはよく知ら ないけれど、やっぱり全ての家で家族の仲のが良い訳ではないのね……貴族であっても何かあった時に支え合うのが家族であると思うのに……

 

「──つい長話をしてしまいましたわね。 皆様は、この後も他の方々との挨拶があるでしょうから、失礼しますわ。また後でお話ししましょう」


 しばらく話をした後でコール伯爵夫人は軽く頭を下げて去っていった。……オリバー様とは挨拶以外で話ができなかったけど、挨拶回りが一通り終わったらまた時間があるでしょうから、その時に話してみましょう。

 お父様の様子に少し萎縮してしまったみたいだから、その事も謝らないと……と思っていると、エルも同じように感じていたみたい。

「お父様。オリバー様に対して少し大人気なかったのではありませんか?」

「うん?  あぁ、そう見えてしまったか……」
 
 苦笑しているお父様を見るに、他にも理由があったのかしら? てっきり、オリバー様がお母様に向ける視線が気に入らなかったのだと思ったのだけど……

「……挨拶が終わったら、彼ともう一度話をしてあげてくれ。彼には色々な人と関わるということが必要だ」

「? わかりました。私自身、もう一度話してみたいと思っていましたので」

「……ソフィー、もちろん僕も一緒で大丈夫だよね?」

「えぇ、私の方からお願いしたいわ。やっぱり少し緊張してしまって……。 あっ! 話しは変わりますが、みんなで服の色を揃えてよかったですね」

「ふふっ、そうね」

「そうだな」

「僕もあのように言ってもらえて嬉しかったです」

 服という形で家族仲を目に見えるようにするというのはいいものね。絆を再確認できるもの。
 また家族でお揃いのドレスを着たいわ!











~~~~~~~~

 詠んでくださりありがとうございます(*^^*)

 オリバー君が幼いのか、 エルとソフィーが早熟な のか、その両方なのか……私の十歳はオリバー君みたいな感じでした!


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