39 / 57
リクエスト集
《if》並行世界の悪夢③
しおりを挟む「リーナ、これを!」
「こ、これは……二重帳簿ですか?」
「あぁ、一つ目の不正の証拠が見つかったな」
皆様お分かりでしょうか?
私とウィリアム様は現在、闇夜に紛れてレクト公爵の執務室を漁っております。
……泥棒のような状態ですが、本当にこれで良いのか、、
それにしても、探し始めて5分で見つかるなんて……侵入も私ですら容易いものでしたし、警備はこれで大丈夫なのか、逆に罠なのではないか、など色々考えてしまいます。
「──あっ! ウィリアム様この引き出し、底に仕掛けがあって、二重底になっています。………これは契約書でしょうか?」
「っっ! リーナ、これはまさにカトル公爵と夫人の事故に関係するものかもしれない」
「本当ですか!? 」
「あぁ、公にはなっていないが、この“ファントム”というのは暗殺集団だ。現在も騎士団で追っている組織なのだが、中々尻尾が掴めなくてな。レクト公爵はどうやって奴らと接触したのか……確認する必要があるな」
暗殺集団……そんなのがいたなんて知りませんでした。これを公にしては、民の不安を煽ることになってしまうでしょうね。
それにしても、色々出てきますね……探し始めてからまだそこまで経っていないというのに、、
これがお父様とお母様の事件の真相を解き明かす手掛かりになれば良いのですが……
「──今日はここまでにしてまた後日、別の部屋も探ってみよう」
「はい」
「リーナがいてくれて良かった。私ではあのような場所に仕掛けがあるなんて考えもしなかった。床の窪みにソファーの足を嵌め込むと隠し部屋が出てくるなんてな」
「私も勘によるものが多かったのですが、外から見た時と実際の部屋の広さで違和感を感じたのです。ソファーを引きずった痕がありましたし」
私としては隠し部屋への扉が開いた時、板が壁に当たって音が鳴らないようにしてくださったウィリアム様の咄嗟の対応がすごいと思いました。
反射的にあのような行動が出来るなんて……もし、ウィリアム様が板を止めてくださらなかったら、大きな音がしてこの屋敷の人達に気付かれてしまったでしょう。
「……このようなことは本当はいけない事なのでしょうが、少しだけ楽しいと感じてしまいました」
「何がいけないものか、私達がしているのはれっきとした調査だ」
ふふっ、まだお父様とお母様を失った悲しみは癒えていませんが、ウィリアム様がそれとなく気を遣ってくださっているのでありがたいです。
* * *
あれからも数回、レクト公爵家の不正の証拠の捜索を重ねましたが、レクト公爵を検挙するに足る違法行為や重罪の証拠を集めることが出来ました。
そして今日、ウィリアム様が騎士団を率いてレクト公爵家に乗り込んでいるのですが……私はさすがに危ないということで待っているように言われました。
レクト公爵を連行したら今度はカトル公爵領に向かうのですが、その時リック様やリディアさんと話をする場には同席させていただけるらしいです。
レクト公爵、驚いているでしょうね……上手く隠していたはずの物が何故か皇子の手元にあるのですから。
そして、公爵家の不正の証拠を探すと共にレクト公爵領の現状を調べましたが、酷いものでした。
民は重税によって困窮し、手の回らなくなった畑は荒廃していました。
私達の報告をもとにミラとオリバー様が詳しい調査をした結果、無下に取り下げられた陳情が多数あるということも分かり、それはオリバー様から皇帝陛下へと報告されたようです。
民の生活や領の状況を探るのに際してウィリアム様と借家で生活していたのですが、ウィリアム様の新たな一面を窺い知ることが出来ました。
もちろん二人きりではなく、変装した護衛やメイドも一緒でしたが。
ウィリアム様は早朝にこの家を出られて、今は夕方……もうウィリアム様が帰ってこられるかと思うのですが、、大丈夫でしょうか?怪我などしていなければ良いのですが……
「───リーナ、無事に終わらせてきたぞ」
「っウ、ウィリアム様っ!」
外へ出て確認しようとドアノブに手を掛けた瞬間、外側へと引っ張られました。
そうなると自然とウィリアム様の腕の中に飛び込むような形になってしまい……
「これは……嬉しい出迎えをありがとう」
「~~!おかえりなさいませっ」
「あぁ、ただいま」
ウィリアム様の蕩けるような笑顔が眩しいです。
すぐに離れようとしたもののウィリアム様が抱き止めていて離れられませんっ!
「お、お疲れでは?」
「いや? リーナのお陰で全てふき飛んだ」
そ、そうですか、、それにしても、何時までこの体勢で……?
「ウィリアム様?あの……」
「………」
「? あの、そろそろ中に入りませんか?」
「………そうだな」
* * *
「レクト公爵の様子はいかがでしたか?」
「あぁ、公爵はリックがリーナを追放したという報告を昨日受けたばかりだったようで、屋敷の中はかなり慌ただしかった。レクト公爵はリーナの父君と母君の件だけしか知らず、君はリックによって行動を制限されていると思っていたらしい」
「昨日? いくらカトル領と距離があるとはいえまだ伝わっていなかったのですね、、道理で……あまりにも証拠の隠蔽がずさんだと思いました。レクト公爵であれば私がキース侯爵を頼って動くことを予想したはずですもの」
「あぁ、リックが馬鹿で助かった」
あ、あら? なんでしょうか、、ウィリアム様から黒いオーラが出ているような……
「……ともかく、明日はカトル領に向けて出発する。準備や体調を整えておいてくれ」
「はい!」
0
お気に入りに追加
3,743
あなたにおすすめの小説
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします
宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。
しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。
そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。
彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか?
中世ヨーロッパ風のお話です。
HOTにランクインしました。ありがとうございます!
ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです!
ありがとうございます!
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる