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リクエスト集
《if》並行世界の悪夢③
しおりを挟む「リーナ、これを!」
「こ、これは……二重帳簿ですか?」
「あぁ、一つ目の不正の証拠が見つかったな」
皆様お分かりでしょうか?
私とウィリアム様は現在、闇夜に紛れてレクト公爵の執務室を漁っております。
……泥棒のような状態ですが、本当にこれで良いのか、、
それにしても、探し始めて5分で見つかるなんて……侵入も私ですら容易いものでしたし、警備はこれで大丈夫なのか、逆に罠なのではないか、など色々考えてしまいます。
「──あっ! ウィリアム様この引き出し、底に仕掛けがあって、二重底になっています。………これは契約書でしょうか?」
「っっ! リーナ、これはまさにカトル公爵と夫人の事故に関係するものかもしれない」
「本当ですか!? 」
「あぁ、公にはなっていないが、この“ファントム”というのは暗殺集団だ。現在も騎士団で追っている組織なのだが、中々尻尾が掴めなくてな。レクト公爵はどうやって奴らと接触したのか……確認する必要があるな」
暗殺集団……そんなのがいたなんて知りませんでした。これを公にしては、民の不安を煽ることになってしまうでしょうね。
それにしても、色々出てきますね……探し始めてからまだそこまで経っていないというのに、、
これがお父様とお母様の事件の真相を解き明かす手掛かりになれば良いのですが……
「──今日はここまでにしてまた後日、別の部屋も探ってみよう」
「はい」
「リーナがいてくれて良かった。私ではあのような場所に仕掛けがあるなんて考えもしなかった。床の窪みにソファーの足を嵌め込むと隠し部屋が出てくるなんてな」
「私も勘によるものが多かったのですが、外から見た時と実際の部屋の広さで違和感を感じたのです。ソファーを引きずった痕がありましたし」
私としては隠し部屋への扉が開いた時、板が壁に当たって音が鳴らないようにしてくださったウィリアム様の咄嗟の対応がすごいと思いました。
反射的にあのような行動が出来るなんて……もし、ウィリアム様が板を止めてくださらなかったら、大きな音がしてこの屋敷の人達に気付かれてしまったでしょう。
「……このようなことは本当はいけない事なのでしょうが、少しだけ楽しいと感じてしまいました」
「何がいけないものか、私達がしているのはれっきとした調査だ」
ふふっ、まだお父様とお母様を失った悲しみは癒えていませんが、ウィリアム様がそれとなく気を遣ってくださっているのでありがたいです。
* * *
あれからも数回、レクト公爵家の不正の証拠の捜索を重ねましたが、レクト公爵を検挙するに足る違法行為や重罪の証拠を集めることが出来ました。
そして今日、ウィリアム様が騎士団を率いてレクト公爵家に乗り込んでいるのですが……私はさすがに危ないということで待っているように言われました。
レクト公爵を連行したら今度はカトル公爵領に向かうのですが、その時リック様やリディアさんと話をする場には同席させていただけるらしいです。
レクト公爵、驚いているでしょうね……上手く隠していたはずの物が何故か皇子の手元にあるのですから。
そして、公爵家の不正の証拠を探すと共にレクト公爵領の現状を調べましたが、酷いものでした。
民は重税によって困窮し、手の回らなくなった畑は荒廃していました。
私達の報告をもとにミラとオリバー様が詳しい調査をした結果、無下に取り下げられた陳情が多数あるということも分かり、それはオリバー様から皇帝陛下へと報告されたようです。
民の生活や領の状況を探るのに際してウィリアム様と借家で生活していたのですが、ウィリアム様の新たな一面を窺い知ることが出来ました。
もちろん二人きりではなく、変装した護衛やメイドも一緒でしたが。
ウィリアム様は早朝にこの家を出られて、今は夕方……もうウィリアム様が帰ってこられるかと思うのですが、、大丈夫でしょうか?怪我などしていなければ良いのですが……
「───リーナ、無事に終わらせてきたぞ」
「っウ、ウィリアム様っ!」
外へ出て確認しようとドアノブに手を掛けた瞬間、外側へと引っ張られました。
そうなると自然とウィリアム様の腕の中に飛び込むような形になってしまい……
「これは……嬉しい出迎えをありがとう」
「~~!おかえりなさいませっ」
「あぁ、ただいま」
ウィリアム様の蕩けるような笑顔が眩しいです。
すぐに離れようとしたもののウィリアム様が抱き止めていて離れられませんっ!
「お、お疲れでは?」
「いや? リーナのお陰で全てふき飛んだ」
そ、そうですか、、それにしても、何時までこの体勢で……?
「ウィリアム様?あの……」
「………」
「? あの、そろそろ中に入りませんか?」
「………そうだな」
* * *
「レクト公爵の様子はいかがでしたか?」
「あぁ、公爵はリックがリーナを追放したという報告を昨日受けたばかりだったようで、屋敷の中はかなり慌ただしかった。レクト公爵はリーナの父君と母君の件だけしか知らず、君はリックによって行動を制限されていると思っていたらしい」
「昨日? いくらカトル領と距離があるとはいえまだ伝わっていなかったのですね、、道理で……あまりにも証拠の隠蔽がずさんだと思いました。レクト公爵であれば私がキース侯爵を頼って動くことを予想したはずですもの」
「あぁ、リックが馬鹿で助かった」
あ、あら? なんでしょうか、、ウィリアム様から黒いオーラが出ているような……
「……ともかく、明日はカトル領に向けて出発する。準備や体調を整えておいてくれ」
「はい!」
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