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リクエスト集
《if》~仲の良い家族②~
しおりを挟む~前回のあらすじ(雑)~
リーナは婚約者のせいで階段から転げ落ちてしまった。怪我はなかったものの、普段から浮気、暴言の絶えない婚約者の起こした事件に、リーナの家族は激怒!
リーナの婚約解消に向けた話し合いっていたところで挙がった、新しい婚約者の候補は第二皇子のウィリアム!?
さらに、皇帝からの手紙にはリーナの婚約者の家を断罪するということが書かれていて───
前回投稿から少し空いてしまったので一応です。
微妙に違っていたらすみません_(..)_
~~~~~~~
「パーティーで断罪、、ですか?」
そこまでする必要はないのでは?
「あら、アーサー君も随分ね。でも納得だわ」
「……『だんざい』ってなんですか?」
ミラ………
「ミラ、『断罪』は罪を断ずる。つまりは有罪の判決を下すということよ。パーティーなんて多くの人が集まる会場でそんなことをしたら、大きな騒ぎになるでしょうね……」
「なるほど……お姉様はさすがですね! 色々な事を知っていて。やっぱり、リック様なんかにお姉様をあげるわけにはいきません!」
「断罪の場をパーティー会場にしたのは、レクト公爵家と共に反逆を企てた者達をあぶり出すためだろう」
恐らく、お父様の考えは正しいでしょう。
反逆者名簿なんて作っていないでしょうから、証拠となるのはレクト公爵家とやり取りした手紙……いえ、それも残してはいないでしょうから、各家を捜査しなければ関係者は分かりません。
「なるほど、そのパーティーで急に反逆の旗印を失った者達は自分達が関わった証拠を隠蔽するために動くでしょうね」
「カトレアの言う通り、慌ててて取り繕う余裕もないでしょうから、その家に間者を送り込んであればすぐに動きに気付けるでしょうね」
「アーサー君はほぼ全ての家に間者を潜り込ませてるからね……脳のない者はその間者を優秀だと重用しちゃうから、すでに証拠が抑えられている家もあるんだよね」
……ほぼ全ての家に間者が、、いえ、帝国を治めるためには必要なことなのでしょう。
「それと、半年前……私とヘンリーが皇都に行った帰りに賊に馬車を襲撃されたことがあったでしょ?」
「?はい……お祖父様は腕を切られてしまって、大伯母様も膝や手のひらを擦りむかれてしまって……」
翌日には屋敷に帰り付く予定になっていたお祖父様と大伯母様が賊に襲われたという予想だにしなかった報告を受けた二日後、数週間前に出ていった時とは全く違う様相で帰って来た馬車と護衛の隊列の様子に“もしかして”という考えもよぎりましたし、二人の帰宅を待つ間も身が引き裂かれるような思いでした。
幸いにも、かつて武神とまで言われたお祖父様の剣術の腕前が年を重ねた今なお健在であったことと、護衛達の尽力によりこちら側の死亡者はいませんでしたが、賊がこちらの2倍もいたことと数名の手練れがいたために、多数の怪我人が出てしまいました。
さらに悪いことに誰が差し向けたのか調べようにも、賊達は歯に仕込んであったらしい毒を飲んでしまい、黒幕は判らず終いでした。
「そう、その賊なんだけど、レクト公爵家が差し向けた可能性があるの」
「えっ!? そんな……!」
「おい、ミリア姉さん! リーナやミラに心配を掛けるようなことは──」
「お祖父様、本当なの?」
「ミラ……あぁ、あくまでも“可能性”ではあるが十中八九、彼らが仕組んだことだろうね。私達がリーナとリック君の婚約解消を皇帝陛下に掛け合っていると知って阻止しようとしたのだろう。捕縛後にレクトの邸宅を捜索すれば何か見つかると思うよ」
「そんな……あの事件が私のせいだったなんて……」
「い、いや! リーナのせいだなんてことは全くないよ?」
「えぇ、そうよ!」
「……難しいことはさておき、来月のパーティーでお姉様はリック様から解放されるってことですよね?」
「そうだな!」
ミラの言葉に重くなっていた部屋の空気が幾分か回復します。
「ありがとう、ミラ」
* * *
さて、今日は皇帝陛下の生誕パーティー……私達も数日前には皇都の別邸に到着し、準備を進めていました。
ちなみに、デビュタント前のミラはカトル領の屋敷で留守番です。付いていけないと残念そうにしていました。
先月、皇帝陛下から驚きの手紙が届いた数日後、私を心配する内容の手紙が届きました……皇帝陛下と直接お話したことはありませんが、とても優しい方のようです。
憂鬱なことに、今日のパーティーでの私のエスコート役はリック様です。
先月のあの事故……事件以来顔を合わせていないので大変に気まずく感じますが、仕方がありません。
婚約者がいる場合、パートナーはその婚約者が務めなければなりません。
この慣習を無視することは相手の家を軽んじることと同意であるので、余程の事情がない限りは例外はないでしょう……まぁ、親族のデビュタントなどの特別な事情がある場合はその旨を説明した上でそちらの方の入場のエスコートをする場合もありますが、その場合も入場のエスコートだけであり、ファーストダンスは婚約者と踊らなければなりません。
そろそろリック様がこの屋敷に迎えに来るはずなのですが……遅いですね、、レクト公爵家としては先月の件を表沙汰にしたくはないでしょうし、今日のパーティーは無理矢理にでも私を連れ出すと思ったのですが……。
お父様、お母様とお祖父様は皇帝陛下と最終の打ち合わせをしなければならないと先に皇城に向かってしまいましたし、遅れてしまってはいらぬ注目を浴びてしまいますし、、もう出発してしまいましょうか?
「──リーナお嬢様!」
「どうしたのですか?」
「あの、レクト公爵子息様からのお手紙が届いて、旦那様からの指示通り一度、私共で中を改めさせていただいたのですが……」
「手紙?」
皇都邸の使用人頭が言いずらそうにしながら手紙を差し出してきます。
……なるほど、リック様はそういうつもりなんですね?
えぇ、理解しました。言いずらいのも納得です。
「届けてくれてありがとうございます」
「い、いえ……お渡ししても良いか迷ったのですが……申し訳ありません」
『リーナ・カトル、僕は今日の皇帝陛下の生誕パーティーでお前をパートナーにするつもりはない。理由は分かっているだろう? あの程度のことでそんなに腹を立てていたなんて、、公爵家にあるまじき器の小さい女だ。公爵家の子息たる僕を驚かせるなんてあってはならぬことだろう。だから紳士である僕にエスコートされる資格など当になくなっていたと分かっているはずだし、問題はないよな?どうしてもパーティーに参加したいのなら一人で来るんだな』
レクト公爵家の蝋封が押されているから誰から届いたのか分かりますが、差出人の名前がなく書式もメチャクチャです。
一方的に自分側の予定や主張だけを告げてこちら側の都合は受け付けないなんて……。しかも、あの件に関する謝罪はなくさらに非難してくるなんて思ってもみませんでした。
そして、私は何に腹を立てたことにされているのでしょうか?
「はぁ、取り敢えず皇城に向かいますので、玄関に待機している馬車の御者に伝えてください」
「はい」
* * *
到着しましたね、、カトル公爵家の皇都邸から皇城までは馬車で10分程度なのでたいして疲れることもなく皇城に到着しました。
しかしどうしましょうか……まだ開始時刻にはなっていませんが、ほとんどの参加者が入場し終わっているだろうこの時間に一人での入場は……。
「──こんばんは、リーナ嬢」
「!? う、ウィリアム様」
会場であるホールに向かって考え込みながら歩いていた私に正面から声がかかりました。
このような場所で誰だろうと思って考え込んでいた思考を停止すると、そこには爽やかな笑顔を浮かべたウィリアム様が……。
な、何故、ウィリアム様が?
「お、お久しぶりです……しかし、何故こちらに? ウィリアム様はパーティーの開始時刻に陛下や皇太子様と共にご入場されるはずでは……」
「本当に久しぶりだな……会いたかった。ホール担当の侍従がリック殿がリーナ嬢ではない女性を連れて入場したと報告してきたから、予定を変えてもらったんだ」
「そ、そうなのですか」
私に会いたかったというウィリアム様の緑金の瞳には優しいのにどこか苦しさを感じさせる、、 そんな熱が灯っています。
学園にいた頃には見たことがないウィリアム様の表情に恥ずかしくなって顔を反らしてしまいました。
否応なしに、ウィリアム様が本当に私に想いをよせてくださっているのだと実感させられます。
「私に君のパートナーになる栄誉を与えてくれないか?」
「えっ!?」
「だめだろうか? 嫌だったら不敬などと気にせず断ってくれて構わない」
「い、いえそんな!よろしくお願いします!」
「よかった、、本当に嬉しく思う。……断られたら立ち直れなくて自室に引き籠るところだ」
悲しげに揺れたウィリアム様の瞳を見て断るなんて出来るはずがありません!
私の返事を受けたウィリアム様は本当に嬉しそうに微笑んだ後に冗談のように付け足しました。……冗談ですよね?
それにしても、ウィリアム様にエスコートしていただけるなんて……ウィリアム様は婚約者もいないため、夜会やパーティーで女性をエスコートしたことがありませんのに、、
「それで……リーナ嬢は私をどのように思っているのだろうか?」
「……ウィリアム様はとても素敵な方です。思いやりがあって、困っている人がいたら身分など気にせずに手を貸す……私がウィリアム様と過ごしたのはたったの3年間でしたが、それでも優しい人柄はしっかりと分かりました。いつも笑顔で皆を励ましてくださいますし、自分に厳しくて努力を惜しまないその姿勢は皆の手本となっていました。進取果敢な所も上に立つに相応しくて……あ、あの私が言いたいのは……!」
「ハハ、ありがとう。少し照れ臭いな、、しかし、残念……もうホールの大扉に到着してしまったようだ。……続きはまた後で聞かせてくれ。絶対だぞ?」
「は、はい」
ウィリアム様がエスコートしてくださっているからと下を向いてしまっていて気が付きませんでしたが、目の前には豪華な大扉がありました。
言いたいことが上手く伝えられなくて無駄なことを……ど、どうしましょう?
『後で』とはパーティーの後でしょうか? それとも後日という意味でしょうか?
……ここだけの話、ウィリアム様が私を想ってくださっていると聞いて心が踊りました。
ウィリアム様の婚約者になれるのならば、どんなに嬉しいことでしょう。私はリック様の婚約者でありながら、心のどこかでウィリアム様のことを想っていましたから。
それでも素直にお祖父様やお父様の話を受け入れられなかったのは、他の方々に認めていただけるかという不安が立ち込めているからです。
チラリとウィリアム様の顔を窺うと、ずっと私を見ていたらしいウィリアム様と目が合いました。
……ひとまずは目の前のことから片付けねばなりませんね。
「リーナ嬢、準備は大丈夫か?」
「はい」
「──第二皇子ウィリアム・アスラート殿下、並びにカトル公爵家ご息女リーナ・カトル嬢のご入場です!」
ウィリアム様からの合図を受けた大扉前に控えていた臣によって私達の入場が知らされます。
さぁ、どのような展開になるのか……ふふっ、気が抜けませんね。
~~~~~~~~~
まだ終わらない……。
あれ~? 本当は一話、長くなっても二話で終わるはずだったのに、、文字数も普段の1.5倍くらいなんだけどな(; ̄Д ̄)
……書いてたら楽しくなっちゃったみたいです。すみません_(._.)_
ということで、リーナの婚約者さん家の断罪は次話(もしかしたら、さらにその次)になります!
《if》が終わったら、本編完結から四年後のウィルとリーナのお話を書いていく予定です!
“四年後”でピンとくる方もいらっしゃるでしょうか(*^^*)
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