美しく優秀な次女がいるのなら、私は必要ありませんよね? 〜家を捨てた私は本当の姿に戻り、追いかけてきた皇子と街で暮らす〜

夜野ヒカリ

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《if》~仲の良い家族①~

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 “クズがリーナの元婚約者だけだったら”という話です!

 本編とズレてしまっている部分が多々あるかと思いますが、本編とは別次元のお話、もしくは別のお話だと思っていただければ……。
 話のクオリティーは低めかもです_(..)_



~~~~~~~


「お姉様! やっぱり、ここにいたんですね!」

「み、ミラ……」

「もう、心配したんですよ!? 私だけじゃありません、お父様とお母様も心配していますよ?」

 私はとある事情で3時間程前に家出をしたのですが、、もう見つかってしまうとは……。

「ごめんね……ミラ。心配を掛けてしまって」

「リーナ、迎えが来たんだろう? 早く帰っておあげよ」

 そうですね……これ以上、家族に心配を掛けてしまうわけにはいきませんね、、

「マチルダさん……すみません、ご迷惑をお掛けしました」

「いいんだよ、何時でもおいで……ミラちゃんもね!」

「はい、ありがとうございます!」


 申し遅れました。私はリーナ・カトルと申します。事情があって家出していた私を迎えに来てくれたのは妹のミラです。
 そして、私の家出先はカトル公爵の屋敷から程近い、マチルダという方が営む街の食堂です。
 以前、視察に出掛けるお父様についていって迷子になってしまったのをマチルダさんに助けていただいて以来、時々お邪魔させていただいているんです。

 ミラにすぐ見つかってしまったのは、私の知り合いが少なくて分かりやすかったからでしょうか……?
 わ、私にだって友達はいますよっ? 数年前まで通っていた学園ではたくさんの方と仲良くしていたんですから!

「ほら、お姉様! 早く帰りますよ」

「え、えぇ」




* * *




「リーナ~~~! 無事でよかったっ!」

「本当にっ、もう一人で家を出るなんてやめてちょうだいね?」

 ミラが乗ってきた馬車に乗ってカトル公爵家の屋敷に帰ると、玄関の前で待っていたらしいお父様とお母様が涙を浮かべながら出迎えてくれました。

「「お帰りなさい」」

「た、ただいま帰りました、、ご心配をお掛けしてしまい申し訳ありませんでした」

 ……ここまで私を心配してくれる家族の存在を嬉しく思いますが、家を出てから3時間しか経っていないと考えると、、過保護ですよね?

「無事で戻ってきてくれればそれでいいんだよ。……いつも大人しいお前が家出までしたんだ。やっぱり、私達が知っている以外にもに問題があるのかい?」

「私もリーナにはもっといい方がいると思うわ。そんなに我慢しないでちょうだい?」

「お父様、お母様、お姉様! ひとまずは中に入ってからお話ししませんか?」

 ミラの言う通りですね。
 お父様とお母様もそれぞれ同意を示したので、4人で話をしながら談話室に移動します。




* * *



 
「──リーナが家出した理由はリック君だろう?」

「……はい、、」

 リックとはリック・レクト公爵家の次男で、私の婚約者です。
 ただ、、素行が悪いと言いますか……。
 公爵という最高位の貴族家に籍を置き、下の者達の手本とならなければならない立場にあるのに放蕩三昧で、一応は婚約者である私に対して最低限の礼儀すら払ってくださいません。
 さらに、プライドが高くて短気な性格のリック様は、何気ない会話の中でも何か気に入らないことがあるとすぐに暴力に走るのです。
 昨日お会いした時も話ながら歩いていたら急に怒って私を突き飛ばしたのです。運の悪いことに階段の上を通っていたので私は階段を転がり落ちてしまいました。
 幸いなことに着ていたドレスがクッションとなりましたし、上手な転び方をしたようで怪我はありませんでした。
 リック様は、さすがにまずいと思ったようで逃げるように帰ってしまわれましたが、、

「昨日の事件を受けて、レクト公爵家にもう一度……6度目の婚約解消の要請をしたんだ。今までは何だかんだと理由を付けて断られていたが、今回は断れないだろう」 

「えぇ、今まで苦労を掛けてしまってごめんなさいね……」

「で、ですが私とリック様の婚約は皇帝陛下によって決められたもので──」

「皇帝陛下にも以前から相談していたんだ。あの方は立場上、厳しいことを仰ることが多いが本来は情に厚い方だ。とはいえ、皇帝であろうと一度決めたことを覆すのは簡単ではなくてな……レクト公爵家が猛反対していたのもありこうも時間がかかってしまった。長い間、我慢を強いて悪かったな」

「い、いえ、私は───」



 ───バタンッ


「リーナッ!」
「リーナちゃん!」


「……父上、伯母上、、急にドアを開けるのはやめてください」

「あら、ごめんなさい……それで、リーナちゃんは大丈夫?」

「リーナ、昨日のことは私からも抗議しておいたから安心してくれ……今まで大したこともしてやれずにすまなかったね、、あの男がしたことは立派な殺人未遂だ。リーナに怪我がなかったとしても大きな問題だ」

 大きなドアの音と共に部屋に入ってきたのはヘンリーお祖父様と大伯母のミリア様でした。
 ……お祖父様からの抗議、、レクト公爵家は大変なことになっているでしょうね。お祖父様の社交界への影響力は当主を退いた今でも絶大ですから、、
 だからこそ、余程の事でない限り行動を起こすことが出来なかったのです。……相手も公爵家ですし、他の貴族から“そんな軽い事で”と思われてしまっては、狭量や軽率とこちらが非難されてしまいます。
 リック様が浮気をしていようと、愛妾を持つ貴族は少なくないので騒ぎ立てることは出来ませんし、彼が短気で暴力に走りやすいとは言っても、軽く突き飛ばす程度で、悪ふざけだと言われてしまえばそれまででしたし……そんなこんなで今までは訴えることが出来ませんでした。
 
「お祖父様、大伯母様……私こそすみません。……少し、、少し逃げ出したくなってしまっただけです。もう大丈夫ですので、ご心配はなさらないでください」

「リーナ……」

「もう、そもそもファーレンはどうしてあんな男をリーナちゃんの婚約者にしたのよ!」

「本当に、義伯母様の言う通りです」

 大伯母様とお母様だけでなく、ミラまでもがお父様を睨み付けています。……カトル公爵家の女性は強いですから、お父様とお祖父様も大変ですね。

「大伯母様、お母様……仕方ありません。皇命だったのですよ?」

「……あぁ、それでも時を戻せるのなら皇帝陛下を説得してでもこの婚約に反対した。先日登城して相談した時、皇帝陛下自身もリーナに苦痛を与えてしまったと悔いておられたよ」

「お姉様もリック様との婚約は解消したいですよね?」

「……私が婚約を解消してしまって問題はないのでしょうか?」

「まったく問題ない。ですよね?父上」

「あぁ、実はアーサー君から彼の2番目の息子とリーナの婚約の話が持ち上がっているしね」

 皇帝陛下をアーサー君……不敬だとは思いますが、お祖父様と大伯母様は先代の皇帝陛下と仲がよろしかったのでその息子である皇帝陛下を親戚の子供のように思っているのでしょう。
 それにしても、私と皇帝陛下の息子の婚約の話が……私と皇子殿下が婚約っ!?

「お、お祖父様! どういうことですか!?」

「いやぁ、第二皇子のウィリアム君、婚約者すらいないだろう?その理由がずっとリーナに片思いしていたかららしくてね」

「か、片思いですか?」

「あぁ、リーナはウィリアム殿下と学園の同級生だっただろう?」

 ……お父様の仰る通り、私はウィリアム様と同級生で、仲良くしていましたが、、
 
「それで、彼は第二皇子だから結婚しなくても大きな問題はないが、欲を言えば他国の王女を娶ったり、王子のいない国に婿入りしたりしてほしかったんだ。……だが、ウィリアム君は頑なに『結婚はせず兄上の国政を支えます』と言っていてね」
 
 ……どう反応するのが正しいのでしょうか、、
 ウィリアム様はとても素敵で、紳士的な優しい方だったので嬉しいことは間違いないのですが、急過ぎて……。

「先日、登城して皇帝陛下に相談をしたといっただろう?その時たまたまウィリアム殿下が陛下に諸事の確認にいらして、私達の話を聞いてしまったんだ」

「そうしたらウィリアム君が、『それならば私が!』と言ってね」

「そうですか……」

「それと、レクト公爵家の汚職や反逆の計画……諸々の証拠が色々と出てきたんだよ。前々からきな臭くはあったのに証拠を掴めずにいたのを、かつてあの家に仕えていて切り捨てられて捕えられていた男が証言をしてくれてね。捜査をし直したら出てくる出てくる! あっ、ウィリアム君が主体となって捜査をしてくれたんだよ」

「う、ウィリアム様が……いえ、その者は何故捕えられてすぐに証言をしなかったのですか?」

「家族を人質にされていたらしい。最近になって夫の事情を知った妻が、レクト公爵家の監視を通り抜けて手紙を送ったみたいだ。『私と娘は大丈夫だから自分の正義に従え。真の悪を野放しにするような真似をするんじゃない』とね」

「わぁ~その奥さん、カッコいいですね! 男前です!!」

「えぇ、苦しむ娘を見ていることしか出来なかった誰かさん達とは違うわね……私も対したことは何も出来なかったもの」

「あら、私も義伯母様と同じ事を考えていたみたいですね。私達は大人なのに、親なのに何も出来ませんでした」

 ……我が家の女性陣は自分達にも他人にも厳しいですね、、ミラは大分楽観的というか、抜けていますが。
 お祖父様とお父様も居心地が悪そうにしています。

「そういえば、さっきアーサー君からの書信が届いたんだ。皇城は離れているから昨日のことについてではないと思うけど、何か報せがあるんだろうね」

「あぁ、そうだったわね」

「!!ち、父上……そういうことは早く言ってください、、」

 本当に、お父様の言う通りです。
 この部屋に来る途中で受け取ったのでしょうが、大事なお手紙をそっちのけで話し込むのは……。

 お父様がお祖父様から皇室印の押された手紙を受け取り、早速といったように確認していますが……お父様の顔には驚きの表情が出ています。

「ファーレン、アーサー君からの手紙には何と?」

「──伯母上、、来月の皇帝陛下の生誕パーティーでレクト公爵家を断罪することが決定したらしいです」







~~~~~~~~~


 読んでくださりありがとうございます!!

 長くなってしまったので、ここで一端切らせていただきますm(__)m
 レクト公爵家の行方やウィルの活躍は次話で♪

 ……リーナの家族ほ本編でアレだったので、すごい違和感ですね( ̄▽ ̄;)
 個人的にはこういう話が好きですが(^^)



 


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