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続編
お祖父様
しおりを挟む「「おじいさまー!」」
「おぉ、また大きくなったな! 会いたかったぞ~」
今我が家には皇帝陛下もとい、お義父様がいらしています。
エリオットとソフィアはたまにしか会えないお祖父様が大好きで、馬車から降りてきたお祖父様に飛び付いています。陛下もにこにこの笑顔で二人を抱き上げて、二人の成長を喜んでいるようです。
エリオットとソフィアはお義父様から来訪を告げる手紙が届いたと教えてからずっと、お義父様が来るのを楽しみにしていました。
「陛下、本日はお越しくださりありがとうございます。陛下のお越しを心より歓迎いたします」
「リーナ、“お義父様”でよいと言っておろう」
「ありがとうございます、お義父様。ですが、臣下としての礼儀も必要ですのでお許しください」
「父上、お久しぶりです。相変わらず急な来訪でしたね」
「お前は相も変わらず冷たいな」
……ここまでがいつもの流れ。
そう、お義父様は今回の来訪も馬車を飛ばして来られたようで、予定よりも早いお着きです。
「兄上もお元気ですか?」
「あぁ、アルバートもリリアもシリウスも皆元気にしておるぞ」
「それはよかったです。義姉上は第二子を懐妊されたと聞きました。おめでとうございます」
「あぁ、嬉しいことだ」
リリアはお義兄様……アルバート皇太子殿下のお妃様で、私も仲良くさせてもらっています。お忙しい方なので直接会うのは年に一度程ですが、手紙のやり取りは十日に一度程の頻度でしていて、先日もらった手紙に第二子を懐妊したとあったのです。
「リリアの体調は大丈夫ですか?」
「公示はまだだが、ある程度安定しておる。早くリーナに会いたいと言っておったよ」
「まぁ」
「「シリウスにいさまは!?」」
「おぉ、シリウスもエルとソフィーに会いたいと言っておったぞ」
お義父様の言葉に嬉しそうにはにかむエリオットとソフィア。
皇孫であるシリウスは二人の三歳年上の八歳で、二人とも兄のように慕っています。兄弟がいなかったシリウスも従兄弟である二人をとても可愛がってくれていて、会ったのは2回だけですけど、とても仲が良くしています。
「子が生まれたら今度は城に来てくれ。歓迎しよう」
「お招きありがとうございます」
「ぼくたちもおでかけするのですか?」
「えぇ、まだ先だけど一緒に行きましょうね」
「やったー! エル、おでかけだって!」
「うん、楽しみだね」
実際に出かけるのは半年は先の話ですが、二人はすでに楽しみな様子です。
……半年も先だと二人が拗ねてしまうかもしれませんね。
実は二人はまだこの屋敷から出たことがないのです。二人がお義兄様やリリア、シリウスと会うことが出来たのも、お義兄様が視察でカトル領にいらっしゃるのにリリアとシリウスが付き添っていたからですし……
私やウィルは年に何度か皇城を訪れているのですが……
二人とも体に問題はないものの未熟児として生まれたために今までは外出を控えていたのです。
少し前にウィルと相談してそろそろ近場から外出させてみないか、と話し合ったところでした。
初めての外出が馬車で三日かかる皇都というのも大変でしょうし、家族でどこかに出かけてみましょう。
最初の外出の行き先はもちろん、お義母さんのところです。ウィルと話し合った時に二人でそうしようと決めていました。
やっとお義母さんにエリオットとソフィアを紹介することが出来ます!
「そうだ! 二人にお土産を持ってきたぞ!」
「おじいさま、ほんと!?」
「本当だとも。ソフィーには可愛いドレスやぬいぐるみを持ってきたぞ! エリオットには木剣や本だ!」
「ぼっけんですか!?」
「……父上、何故二人の欲しがっていたものが分かったのですか……?」
「はっはっは! 私はこの国の皇帝にしてこの子達の祖父だぞ? 言われずとも分かるに決まっておろう」
訝し気な表情を浮かべるウィル。
……気持ちはわかります。ソフィーは比較的わかりやすい、五歳の女の子として相応な物が好きなので良いでしょう。
ですが、エリオットが欲しがる物は木剣や本……本も本で絵本などではなく、経済学などの本なのです。
木剣は男の子らしいと言えばそうなのですが、エリオットにはまだ早いと思って与えていなかったのです。
真剣ではないとはいえ、重量もありますし……
「ん? リーナはエルが心配か?」
「はい……エリオットに木剣はまだ早いのではと……」
「まぁ、母としては当然であろう。だからエル、一つお祖父様と約束だ」
「はい!」
「この木剣に触るのはウィル、お前のお父様が見ているだけにしなさい……守れるな?」
「もちろんです!……おかあさま、あんしんしてください。けがをしないよう、じゅうぶんにきをつけます」
「エル……えぇ、ありがとう。お義父様もありがとうございます」
親の我が儘で子のしたいことを邪魔してはいけませんね。
「おかあさま、みてください! このくまさんかわいいです」
ソフィアはお義父様の侍従から受け取ったクリーム色のぬいぐるみを抱き締めています。
「とってもふわふわ~」
「よかったわね」
クマのぬいぐるみみ頬擦りするソフィアも、キラキラした目で木剣を握りしめながら、ウィルと話しているエリオットも可愛らしい。
「リーナとウィルにもあるぞ?」
「わ、私達にまでですか?」
「もちろんだとも!」
お義父様の合図を受けて二人の侍従が何かを抱えてやって来た。
「これは……?」
「写真機と言ってな、絵画のように被写体を映しとるのだが…まぁやって見せよう」
その後お義父様の指示で庭園に並び、四角い箱の前に立ちました。しばらくそのままでと言われたのでそのまま立っていますが、これだけで絵画が出来るのでしょうか?
げんぞう?するのに少し時間がかかるということなので、お茶を飲みながら待つことにしましたが、リリアの近況や皇都の流行などの話が聞けて楽しかったです。
「───完成いたしました」
「おぉ、良く出来ているな!皆も見てみろ、写真といってな、色はないが見事なものだろう?」
「わぁ!すごいです!」
「すごい!」
見せられた紙には今まで見たどんな絵よりも精巧に私達が描かれていました。
「これは……父上、どのような仕組みなのですか?」
「黒い箱には小さな針穴が空いていてな、光がその一方向からのみ箱の中に入ることで、印画紙という光が当たると発色する紙に写しとることが出来るらしい。詳しくは知らないがな」
理解するのは難しいですが、この技術は素晴らしい。絵を描くのには何日もの時間を要しますが、この写真機というものはその時間を大幅に短縮することが出来ます。
「印画紙は使用時以外に光を当ててはいけないし、当てる時間の調節も難しいが、子供達の成長の記録に良いであろう?」
「はい、とても素晴らしい機械で驚きました。 ですが父上、良いのですか? 希少な品のようですが……」
「お前達を映した写真を送ってくれれば満足だ。今は開発中だが、いずれ他でも使われるようになるだろう」
「素晴らしい品をありがとうございます、お義父様」
印画紙というのは特殊な紙のようなので毎日使うわけにはいきませんが、何か特別なことがあった時や節目に使っていきたいです。
ふふっ、これからの日々がより楽しみになりました。
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