美しく優秀な次女がいるのなら、私は必要ありませんよね? 〜家を捨てた私は本当の姿に戻り、追いかけてきた皇子と街で暮らす〜

夜野ヒカリ

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2章 街で幸せに

23 エピローグ

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 今、私は街の外れにある教会の一室で純白のドレスを纏い、人を待っています。

 ──あの日から半年程の時が流れ、今日は私とウィルの結婚式です。

 私が待っているのは言わずもがな、ウィリアム様もとい、ウィルです。
 アスラート帝国の結婚式は新郎新婦が揃って入場するので、そろそろウィルが来ると思うのですが、、


 ……半年の間に色々あって、ウィルに敬語で話すのは禁止になりました。どうしても距離を感じてしまうらしく、寂しかったようです。
 ……もし敬語で話してしまったら、人前であろうと、どこであろうとウィルからの、、キ、キスが降ってくるので必死になって慣れました。
 すっかり敬語を使わなくなった私に、ウィルは嬉しそうですがどこか残念そうにしています、、まったく……。
 ウィルも大分、街の好青年といった柔らかい雰囲気になって、口調も少し変わりました。

 それと、マチルダさんを“お母さん”と呼ぶようになりました! ウィルも“義母さん”と呼んでいます。

 私は、目立つプラチナブロンドを隠すために栗色の鬘を被るようになったのですが、皆さんからは似合うと言っていただけました。お母さんと同じ髪色です!
 私の偽りのない姿を多くの方が知ってくれていますし、不要の騒ぎを避けるために自分で望んで被っているので、以前のように嫌だとは感じません。
 今日は折角の結婚式ということで鬘は被っておりませんが。

 そして、一番変わったのは私がカトル公爵になったことです!
 皇帝陛下から継承に関する書簡が届いた際、家を出た私には相応しくないとお返事したのですが、受け入れていただけませんでした。
 理由は分かっています。

 ……直系が次ぐ場合はあまり気にされないのですが、遠縁が継ぐとなると本当にその家の血を引いていることを示す証が必要となるのです。
 つまり、カトル公爵家の証であるプラチナブロンド、又は青銀の瞳を持っている必要があるのですが、その条件を満たす人が帝国内に3人しかおらず、私以外の2人はかなりの遠縁で隔世的に遺伝したようです。

 その2人の家の爵位は共に伯爵であり、家格もほぼ同じであるため、私が辞退した場合には揉めることになってしまいます。
 無用な争いを避けるためにも直系の私の籍を戻すのが一番だと言うことになりました。
 もちろん、ウィルには“ウィル・カトル”、、私の配偶者として公爵家に入ってもらいます。

 ……どうやら、皇帝陛下は最初からこのようにするつもりだったらしく、私に届いた書簡を見たウィル様も『読めない方だ』とおっしゃっていました。
 全帝国民に向けて死亡を発表してしまったので表舞台に出ることは出来ませんが、公爵となった者の配偶者が籠りっきりになるわけにはいかないという事で、社交は影武者の方に協力してもらうことになりました。
 ウィルは大変不満そうでしたが……。

 そのウィルの身分は、公爵となる私の隣に立つ者が平民では示しがつかないという事で皇帝陛下が“亡国の王族の末裔”という噂を流してもらいました。
 そんな事実はありませんが、亡国であれ、現在は平民であれ、血筋は王族となれば直接的に非難されることはないでしょう。 
 それでも噂の真偽は探られてしまいますが、そこは陛下が協力してくださるらしいです。嘘を大きな声で言うわけにはいかないので、あくまでそのように接するというだけですが。


 ……私達は今でも身分をかくしてお母さんの食堂で働いています。というか生活の拠点はお母さんの食堂で、二日に一回程、公爵家に赴いて仕事をするという形です。
 屋敷の者も寂しそうですし、公爵がこれでは問題もあるかと思いましたが、あまり良い思い出のある場所ではなかったので。


 ………あの後、お母様も私を虐待した罪で逮捕されてしまいました。鞭や棒まで使ったという事で悪質という判断が成され、25年間の強制労働を命じられたみたいです。
 お父様は私が出ていってからずっと無理のある運営をしていたみたいで、違法なことにまで手を伸ばしていたため、牢へ入れられました。刑期は78年、、この国の平均寿命は65歳なので41歳のお父様には終身刑であることを意味します。
 そして、ミラは修道院に送られました。
 学園ではカトル公爵家の権力で教員を脅して好評価を得ていたようです。

 バラバラになって罰を受ける家族を思うとやはり、胸が痛みます。

 “私が家を出なければ”と考えるのは間違っていると分かっているのですが、、いくら私を忌み嫌っていたとは言っても血の繋がった家族ですから。


 家族が私を疎んでいた理由ですが、美への執着が強いお母様は娘である私への劣等感、ミラは自分が幼い頃からの常態化によって常識が欠如してしまっていた故に、明確な理由がないみたいです。
 
 それと、お父様ですが、私の祖父である先代公爵とその姉への恐怖心があったそうです。どちらも私が生まれる前に亡くなってしまっていましたが、早くに母を亡くしたお父様はその二人に厳しく躾られたようです。そのためにその二人を連想させる髪と瞳を持つ私を遠ざけたかったようです。一度、面会する機会があったのですが、その際に吐き捨てるように言われました。

 仕事を押し付けようとしたことについても、『お前ごときにやらせてやっているのだ』という態度を崩しませんでした。

 ……長年苦しめられてきたのです。たとえ、謝られたとしても赦すことは出来ませんが、最後くらい娘への情を見せてもらいたかったです……。
 でも、お父様も苦しんでいたということは分かりました。鏡に映った自分でさえ怖かったと言っていたので、お祖父様と大伯母様が余程厳しい方達だったのでしょう。

 そして、私の元婚約者だったリック様は帝国東方にある子爵家に婿入りすることになったようです。私達の年代で婚約者が決まっていない方は少ないので、年の合う方がその方しかいなかったようで……。
 リック様にはその方を幸せにしてあげてほしいものです。


 ───と、かなり考え込んでしまいましたね。
 今日は大切な日なのですから、しっかりしなくてはいけませんね。

「リーナ、入ってもいいか?」

「ウィル? えぇ、準備は終わったから大丈夫よ」

 部屋に入ってきたウィルは銀糸の刺繍の入った落ち着いた青色のタキシードを纏っていました。
 もちろん、私の瞳を表現しています、、少し恥ずかしいですね。

「ウィル……本当にお似合いになっています! すごく素敵ですっ!」

「ありがとう……リーナも女神みたいに綺麗だ、、結婚できるなんて本当に嬉しい、夢みたいだ」

 ウィルの頬が薄く染まりまっています。
 きっと、私の顔も同じようになっているでしょう。

「でも、敬語は禁止だよ? ははっ、久しぶりに使ったね」

「! 今はダメっ、せっかくのお化粧が崩れちゃう……」

「『』ね、、分かってるさ」

「~~ッウィル!」



「─── そろそろ時間だ。式場に移動しよう」

 ウィルが私に向けて差し出した手に私の手を重ねます。
 
 愛する人と並んで歩くことができる幸せを感じながら足を進めると、礼拝堂へと続く扉に行き着きました。
 この向こうではお母さんをはじめ、お世話になった方々が待っています。
 待機していた方が扉を開けようとしていますが、そなの前に、伝えなければなりませんよね?


「──ウィル、私、、とっても幸せです」







《完》



~~~~~~~~

 これにて本編完結です!
 ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます
(。゜°´∀`°  ゜。)

 皆様の思い描いた最後になっているでしょうか?
 もし、「こんな最後が良かった」等の意見がございましたら“アナザーストーリー”の番外編として書かせていただきます!
 出来る限り頑張りますのでそういった意見も是非どうぞ!

 この後はいくつか番外編を投稿していきます!
 明日、投稿するのは結婚式の裏側と結婚式直後のお話です(^^)

 この話で紹介程度になってしまった、皆様お待ち(?)のリーナの元家族のその後は明後日となります!

 
 引き続きよろしくお願いしますm(__)m     





 


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