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2章 街で幸せに

20 私は必要ないのでしょう?

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 私への追手がかかっていると知ってから数日、何日かかけて皆様と話し合った結果、あえて見つけさせるのが一番だという結論に到りました。もちろん、自分から名乗り出ることはせず、あくまでも“見つけさせる”ですが、、
 私やほとんどの方々はこれに反対なのですが、提案したウィリアム様には何か考えがあるらしく、半ば押し切られる形で決まりました……。ですが最終的には皆、ウィリアム様を信じようということになりました。

 ……やはり、ウィリアム様は皇族たるに相応しいカリスマ性のある方です。他者を引きつけて信頼を得、引っ張っていく力を持っていらっしゃいます。
 ………今更、『私では釣り合わないから離れよう』などと考えるのはウィリアム様に対して失礼ですし、私自身、自分への自信を持てるようになりましたのでありませんが、負担になってしまっているようで申し訳ないです。

「リーナ、また変なことを考えてはいないか?」

「ウ、ウィル! いえ、そんな事は……」

「……大方、私に迷惑をかけてしまっているとでも考えていたのだろう?」

 何故分かったのでしょう……? 

「自分で言うのもなんだが、私は他者の考えを読み取るのが得意だ。それも、自分の愛しい人ともなればな?」

「っっ し、仕事中ですっ!」

 顔に熱が集まります。……急に愛しいなどと言われて平気な人間がいるでしょうか?

「では、仕事が終わってからなら?」

「~~~!」

 ウィリアム様が顔を寄せてくるのでさらに熱くなってしまいます。

「おいウィル、そんなにイジメちゃ可哀想だぞ」

「人聞きが悪い、いじめてなどいないだろ?」

「リーナちゃんは人一倍恥ずかしがり屋なんだからさぁ」

「そうそう、リーナちゃんに受け入れてもらえて嬉しいのは分かるが、いつもこれじゃあ振られちまうぞ?」

「そ、そんな事は……すまないリーナ、嫌だったか?」

「い、嫌では…ありません。ただ……恥ずかしくて」

 ……皆様の反応から分かる通り、あの日からウィリアム様は食堂の営業中でも度々あ、甘い空気で私に話し掛けてくるようになってしまいました。
 毎日のことにマチルダさんも呆れた様子でしたが、ウィリアム様の作業効率は上がっているために苦笑して見ています。
 お客様はというと、一様に祝福してくださいます。ウィリアム様がここにいらっしゃった当初から、ウィリアム様が私を想っているのことを知っていらっしゃった方も多かったらしくて、、


「邪魔をする、ここの店に─── おぉっ! 見つけたぞ!」

 ……お父様からの追手でしょうか?
 見つかるまでに思っていたより時間がかかりっていましたが、これでウィリアム様の狙い通りになったのでしょうか? 
 まだ確定したわけではありませんので、取り敢えずは普通の対応をしましょう。

「いらっしゃいませ、お席にご案内します」

「そんな事はいい、カトル公爵様より茶髪に青銀の瞳の女を探すようにとのご命令だ。髪色は対象と異なっているが、お前だな?」

 ……確定しましたが、態度がいただけませんね。公爵領の守備隊の私兵のようですが、縁を切っているとはいえ自分が仕える公爵家の人間だった私に対して『お前』とは……。仕えているいえの身体的特徴髪と瞳の色くらいは覚えているはずですし、私の身元は分かっているでしょうに。

「……おそらく私だと思いますが、貴方は? 初対面の女性に対して些か横柄なのでは?」

「ふんっ、公爵様から連れてさえ来れば、どんな扱いをしようと構わないと仰せつかっている! 分かったらさっさと来い。チッ、一番人員を少なくしていたこの街にいたとは……手間をかけさせやがって」

「貴方に付いていく、、それは義務でしょうか?」

「抵抗するのなら無理にでも引っ張っていくだけだ」

 ……聞く耳は無さそうですね。

 ウィリアム様に視線を送ると、小さな頷きが返ってきました。

「わかりました。どこへ行くのでしょう?」

「カトル公爵家の屋敷だ。早く来い」

 不安そうにこちらを窺う皆様の視線を受けながら食堂を後にします。
 さて、ウィリアム様の考え通りになりましたが、どのような策があるのでしょうか?




* * *




 移動距離が短いためか歩いての移動でしたが、40分程で到着しました。こんなに近かったのですね……家を出てまだ半年も経っていない上に、ずっと同じ街にいたのに不思議な気持ちになります。
 ……縛られてはいませんが3人の騎士に囲まれて歩いていたので道中はかなりの注目を浴びてしまいました。
 
 カトル公爵家に仕えている方々を見るのも久しぶりですね。ふふっ、私の髪色や今の姿を見て驚いているみたいですね。



「── 公爵様、お探しの者を連れて参りました」

 お父様とも家を出て以来の対面です。
 私兵達は簡単に報告をした後、部屋を出ていきました。

「……随分と時間がかかった、、無能が手間を取らせおって!」

「……お久しぶりにございます、カトル公爵様。何か御用でしょうか?」

「お前がでしゃばって家の仕事に手を出していたせいで使用人どもの仕事が滞っている! どうするつもりだ!?」

 久しぶりの娘に対して挨拶も無しに怒鳴り散らすなんて……呼ばれた理由は予想通りでしたね。 

「しかも、市井でカトル公爵家を示すその髪を晒していたとは…! そのせいで私達に迷惑が掛かるとは考えなかったのか!? 」

 ……私の姿に対してお父様の反応が薄いと思っていたのですが、お父様は私の本来の髪色を忘れていなかったみたいですね。
 そういえば、お父様が私を罵る言葉は『無能』『無駄飯ぐらい』『汚らしい』『根暗』などで容姿については触れていませんでしたね?

「申し訳ありません、、ですが、私はすでに家を出て縁を切った身です。幼少時に母や妹から受けた指示を守り続ける必要はあったのでしょうか?」

「お前が私達への迷惑を考えていないのが問題なのだ! その忌々しい髪と目を私に晒すな!」

 ?? 『忌々しい髪と目』と言われましても、ご自分で仰ったようにカトル公爵家の色ですし、お父様自身も私と同じ髪と瞳の色ですのに……。

「……では、公爵様のお目汚しとならぬよう帰宅の許可をいただけますか?」

 “帰宅”……自分で言っていながら、少し面白くなってしまいました。ここは私の家でしたが何の思い出もありません、、私にとっての家はマチルダさんの食堂です。 

「ならん! 自分の尻拭いくらい出来ないのか!?」

「……公爵様には成績優秀な娘がいるのでしょう? それに、私は家を出る時に私に関わらないようお願い申し上げたはずですが?」

「そ、それは……!」



「─── 私は必要ないのでしょう?」







~~~~~~~~


 読んでくださりありがとうございます(^^)

~その頃街では~

「おい、ウィル! リーナちゃんマジで連れてかれちまったぞ!?」
「なぁ!本当に 大丈夫なのか!?」
「ウィルさん、本当に本当に考えがあるんですよね?」
「もちろんですよ、、私がリーナを危険にさらすとでも……?」
「「「い、イイエ……」」」
「じゃあ、私は行ってくるので皆さんもお気を付けて」


「こっわぁ、ウィルの奴パネェな」
「……ウィル、、ウィリアム、、いや、いいじゃねぇか」
「ロマンスですねぇ」

「ほら、アンタらも何時までもここにいないで今日はもう帰りな、、また明日来ておくれよ。明日には二人とも帰ってきてると思うから」

 この辺りから、ざまぁ編になりますが、、多分……いえ、絶対に生ぬるい、甘いと思われる内容だと思います(TT)
“皆で幸せ”がモットーの作者の精一杯のざまぁですのでご理解くださいm(__)m
 一応、番外編でにはキッツーい罰を下しますので(>_<)




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