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2章 街で幸せに
19 暗雲への備え
しおりを挟む「そういやな、最近妙な奴らがいるよな」
妙な奴ら?
「あぁ、あいつらか? 他の街にも出てるらしいぜ人を探してるらしいけど、態度がなぁ……」
「私、一昨日話しかけられたんですよ!?」
人を探している……他の街まで捜索の手を伸ばしているとなると裕福な家の手の者なのでしょうが、、嫌な予感がします。
「あの、その方々は誰を探しているのですか?」
「ん~名前は言ってなかったんだよなぁ、、『茶髪に青銀の目をした若い女を見なかったか』って聞いて回ってるみたいなんだけどよ」
「あんまりいい感じじゃなかったので、リーナさんも気を付けた方がいいですよ」
目の前が真っ暗になっていくように感じました。
茶髪に青銀の目……どう考えても私でしょうね、、青銀の瞳はカトル公爵家の証で珍しい色なので。何故、今更私を探しているのでしょうか?まぁ、予想はつきますが、、このままここにいては皆様を巻き込んでしまうでしょうか?
厄介者にしかならない私は出ていった方がいいのでは?
「──ナ」
残念なことに今のカトル公爵家の者は貴族至上主義とも言える思考の持ち主だけですし、皆様を危険に晒してしまうでしょうね……。
「─ーナ!」
どうすればっ……。
あぁ、自分が暗い渦に飲み込まれていくように感じます。
「リーナ!」
「! ウ、ウィリアム様……な、何か?」
「いや、大丈夫か?」
「どうしたリーナちゃん、何かあったのか?」
「リーナさん?」
ハッと顔を上げると、目の前に私の肩に手を置くウィリアム様がいて、食堂にいる全員が私に視線を向けていました。
「み、皆さん、大丈夫ですのでお食事に戻ってください。すみません」
「いや……」
どうしましょう……私への視線が外れません。
「………リーナちゃん皆、リーナちゃんの隠してることにある程度は気が付いてるぜ?」
「はい、、困ってることがあるんですよね?」
「俺たちゃみんなリーナちゃんの味方だぜ! 何かあるんなら、いくらでも巻き込んでくれよ!」
……ある程度気が付いている?
皆様とても親切にしてくださいますが、無関係の皆様を巻き込んでしまうのは……。
「あ、あの隠してることなんて ───」
「だーーっ! リーナちゃん、俺らだって自分の街や領を治める人達のことは少しくらい知ってるって」
「ふふっ、リーナさんのキラキラ輝く髪と綺麗な眼を見れば、ほとんどの人は分かりますよ?」
あっ……髪の色などは貴族としては血統を示す重要なものでも、貴族でもない限りは気にされないと思っていたのですが……迂闊すぎましたね、、
「……リーナ、一人で抱え込むのは悪い癖だぞ?」
「ウィリアム様……」
「『ウィル』だろう?」
あぁ、また動揺してしまっていたようですね、、
「── 皆さん、ありがとうございます。……御察しの通り、私はカトル公爵家の者でした。でも、家とは縁を切りましたので私はただのリーナです。……ご迷惑をおかけしてしまいすみません……」
「気にすんなって、あいつらが探してるのが本当にリーナちゃんか確かめたくて、嫌な気持ちにさせちまってすまなかったな」
「本当ですよ! 他にも聞き方はあったのに、、リーナさん、すみません」
「ま、何はともあれ、みんなでリーナちゃんを守るぞ!」
「はぁ、私の出る幕がなくなってしまったな、、私もリーナを守ると誓おう」
「ウィリアム様……」
「─── そういえばウィルって、ウィリアムってのが本名なのか? さっきから気になってたんだよなぁ」
!! わ、私のせいでウィリアム様まで……気付かれてしまったでしょうか?
「……ウィリアムっていやぁ、この国の第二皇子様と同じ名前だよな?」
「あ、あぁ、そうだったな。……少し前に亡くなったって方だろ?」
「第二皇子殿下、、まだ大衆の前に出たことはなかったけど、才色兼備でとっても優しくて、強くって、、パーフェクトな方だったらしいですよね」
「「「……」」」
私に集まっていた視線が私の隣にいるウィリアム様へと移ります。
「まぁ、ウィリアムって名前の人は少なくないだろ? な、リーナ」
「ウィルの言う通りです。ウィルの本名はウィリアムで、普段は愛称で呼んでいたんです」
ウィルと二人で、慣れ親しんだ張り付けた笑みを浮かべます。余程見慣れた方でない限り、違和感すら感じないと思いますが。
「……ま、そうだよな」
「ウィルが亡くなった皇子殿下だなんて、あり得ないもんな」
「フフッ、そうですね~?」
なんとか男性方は誤魔化せたようですが、女性は鋭いと言いますか、、誤魔化しきれていない感じがしますね。取り敢えずは大丈夫でしょうか?
「それよりも、リーナさんです! どうしますか?」
「そうだなぁ、ずっとこの食堂にいてもいつかは見つかっちまうよな?」
「いやでも、この街で捜索してる奴等の数は他の場所に比べてかなり少ないんだろ?何でかは知らねぇが」
「それよりも、見つかったらどうなるんだ?」
「……おそらくは、傾き始めた公爵家の運営をさせたいのだと思います」
「は? なんでリーナちゃんに? まだそんな事をする年齢じゃあないだろ?」
「はい、、残念ながら私の家族は家の内部の仕事に興味がありませんでしたので……」
「えっ? 興味のある無しで仕事を放棄しちまうのか? まだ若い自分の娘にやらせて?」
「い、いえ、私が自分から始めたことも多くて」
仕事をしていれば人と関わることが出来ました。なにもしないと、本当に一人だけになってしまいましたから。
──────
────
──
─
「ほら、いつまでも話してるんだい?そろそろ閉めるよ。また今度にしな」
しばらく話していると、片付けをしながら話を聞いていたマチルダさんの声が響きました。
そうですね、すっかり話し込んでしまったようです。
私を探しているということには驚きましたが、皆様が優しい方で本当によかったです。
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