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2章 街で幸せに
18 幸せ
しおりを挟む「ん………」
何故でしょうか? 目の周りが少しヒリヒリします。でも、、家を出た時以上に心が軽くなったように感じます。
普段起きている時間よりも早い時間のようですが、、えっと……昨日はウィリアム様と街に出て、ウィリアム様がとっても、、か、格好良くて、夕食の後に………っっっ!
「私ったら、ウィリアム様の前であんなに泣いてしまうなんて……。それにっ」
ウィリアム様に対して身をわきまえぬ告白をしてしまいました……。不快には思っていらっしゃらないようでしすし、ウィリアム様も私を思ってくださっていると分かってはいるのですが……。
で、でも今さら昨夜の告白を取り消すなんて出来ませんし、したくありません。
今日、どんな顔をしてウィリアム様に会えば……?
─── コンコンコン
「ひゃっ」
考え込んでいたので突然のノックに変な声が出てしまいました。悶々と考えているうちに1時間も経ってしまったようですね……。
「リーナ? そろそろ朝食の準備が出来るみたいだが……」
「は、はい! すぐに行きます」
手早く髪を整え、寝衣のワンピースの上にカーディガンを羽織って部屋のドアを開けると、いつも通りのウィリアム様が立っていました。
「おはよう、リーナ」
「お、おはようございます」
うぅ、自分でも顔が赤くなっているのがわかります。
「ハハハ、本当に可愛いな」
「~~ウィリアム様っ」
「『ウィル』だろう?」
「うぅ」
心の中でも『ウィル』と呼んで練習した方がいいのでしょうか?
それにしても、今日のウィリアム様はとっても機嫌が良いですが、少し意地悪に感じます。
「き、今日のウィルはいつもより意地悪です」
「それはそうさ、やっと想いが通じ合ったんだ。今にも舞い上がりそうな気分だ」
私の視線はウィリアム様に縫い付けられたように動かなくなってしまいました。こんなに素晴らしい方が本当に私を思ってくれているなんて……。かつての公爵家でのことがどうでもいいことのように思えます。
「──ほら、二人とも、さっさと下りといで!」
「は、はい」
階下からのマチルダさんの声でウィリアム様から視線を外し、小走りに階段を下りていると、後ろからウィリアム様のクスクス笑う声が聞こえてきました。
私ったら……恥ずかしいです。
* * *
「マチルダさん、おはようございます。すみません、遅くなってしまい……」
「気にすることぁないさ、、でもウィルは少し顔を引き締めな」
「ハハ、そうですね」
この雰囲気……もしかして、、
「う、ウィル……まさか?」
「すまないな、リーナ。マチルダさんにはバレてしまった」
な、何故ですか!?
皇子であったウィリアム様なら心の内を隠すのは慣れているはずなのに……!
「……リーナは大分、本当の自分を出せるようになったみたいだな」
「わ、私、本来は考えが顔に出やすかったようで……。お恥ずかしいです」
「何故だ? 私はその方がより好ましく思うが」
「……本当ですか?」
ウィリアム様の言葉に一喜一憂する……これが私だなんて、数ヶ月前までの私では考えられません。
「……アンタらね。ほら、さっさと食べな」
「は、はい!」
* * *
「いらっしゃいませ!」
「おうリーナちゃん、今日も可愛いね……なんか雰囲気変わった?」
「えっ? そ、そんなことはないと思いますが?」
……今日は開店してからずっとこんな調子です。
常連の皆様から必ずと言っていい程、雰囲気が変わったと言われます。
私、そんなに分かりやすいのでしょうか?
まぁ、表情とかはいつも通りで、纏う雰囲気が柔らかくなったように感じるとのことなのですが……。
「リーナ、こっちも手伝ってくれないかい?」
「はい!」
マチルダさんが作ったお料理を各テーブルに運びます。
ウィルは何人かのお客さんとお話し中みたいですね。
「おい、ウィル……やっとか?」
「さぁ、どうかな?」
「マジか! 今日のリーナちゃん嬉しそうな空気出してるもんなぁ」
「いや~思った以上に時間かかったな。おめでとう!」
「おや、私は何も言っていないが?」
~~~~!
な、何を話しているのかと思ったら!
ウィリアム様もはっきり肯定しているわけではありませんが、不敵な笑みを浮かべて答えている表情が全てを物語っています。
「う、ウィル! 仕事をしてください」
「すまない、リーナ。怒らないでくれ」
「お、怒っているわけでは……」
こんな調子の私達を食堂にいる全員が微笑ましいものを見るような目で見ています。
は、恥ずかしいです………でも、それ以上の幸せと喜びを感じます。
家を出てきた当時は不安も多かったですが、今では未来への期待しかありません!
家を出て、本当によかったです!
~~~~~~~~
<おまけ>
「やっと、くっついたな」
「照れてるリーナちゃんも可愛いなぁ」
「オイオイ、そんな事ばっか考えてるとウィルに怒られるぞ」
「そんな事言ってもな~はぁ、『二人をくっつけるんだ~』って言ってたけど、いざとなると寂しいような……」
「ハッ、オメェとリーナちゃんじゃあ釣り合わねぇだろうが!」
「ひっでぇなぁ」
「それよりも、今日来てない奴らにも教えてやろうぜ!」
「おう!」
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