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2章 街で幸せに

14 変化(ウィリアム視点)

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 3人に向かっていく私を不安そうに見つめるリーナ嬢の視線を感じる。

 「大丈夫だから、安心していい」

「チッ! よそ見なんかして、随分と余裕だなぁ!?───オラッ!!」

 振り向いた私に腹が立ったようだな。

「う~ん………。動きが大きすぎるな」

 一番大柄の男が殴り掛ってきたが、腕を振りかぶりすぎてて隙だらけだった。
 私は弱そうに見えるかもしれないが、帝国の皇子。幼い頃から護身術をはじめとする武術を学んでいたから、並みの騎士よりは強い自信がある。

「おいお前ら、一斉に殴りかかれ!」

「───リーナ、ちょっと目を閉じていてくれ」

「は、はい!」  

 私は体格に恵まれなかったため力が強い訳ではないので、相手の力を利用するスタイルだ。まぁ、そうすると、相手が受ける衝撃も大きくなるわけで、リーナ嬢が見るには刺激が強いだろう。

 ───「グァッッ」
 ─────「グホッッ」
 ───────「ガハッッ」

 宣言通り一斉に殴り掛ってきたので、それぞれの力を上乗せした上で相討ちさせる。


「よしっ、 リーナ、もう目を開けて大丈夫だ」

「ウィル、、大丈夫ですか!?」

「あぁ。この程度なら余裕だ」

「その、ウィルは強いのですね………」

 リーナ嬢は少し呆然としているようだ。リーナ嬢から見た私は護られる皇子だったのだろうな、、

「ははっ、 鍛えたからな。………リーナは怖い思いしてないか?」

「ウィルが守ってくれたので大丈夫です!」

 リーナ嬢の青銀の瞳が輝く。


「ぐっ………テメェ」
「もう許さないぜ!?」
「後悔してもしらないよぉ?」

 はぁ、、大きな騒ぎになってはと、私からは少し手を加えるくらいでいたのだが……。
 自分達の弱さを知れば反省するかもしれないと思ったのだがな、、

「……せっかく手加減をしてやったというのに、まだ続けようというのか?」

「な、何だと!?」

「反省するようなら許してやろう思ったのだが、、無駄な気遣いだっか?」

 男達を威圧する。
 皇族として生まれ育った者は自然と周囲と違う空気を纏うようになる。それが人の上に立ち、他を平定する上で必要なことだからだ。もちろん、始終威圧感を放っている訳ではないが。


「て、テメェ、何者なんだ!?」

「お前たちが知る必要はな──」

「オラァァア!」

「ウィルっっ!!」

「……ここまで愚かな者がいたとはな、、」

 まだ、殴り掛るとは……。
 タチが悪い。今までも自分より弱い者達に対して悪行を重ねてきたのだろう。

「「「!!!!」」」

 幸いにも殴り掛ってきたのは一人で、他の二人は戦意を喪失しているようだ。
 攻撃をいなしてバランスを崩した男の首元に手刀を打ち込むと、そのまま倒れ込んだ。
 

「……分かったら、すぐに立ち去れっ!」

「「ヒィッ!」」

 男たちは2人で気を失った1人を支えて逃げていった。これで少しは更生するといいのだが、、更生が見込めないようだったら治安部隊に任せるとしよう。
 
 振り返るとリーナ嬢と目が合う。

「……すまないな、人に暴力を振るったりして、、」

 最後は見られてしまったか、、怖がっている様子はないが、、

「私は大丈夫です。ウィルは本当に怪我をしていませんか?」

「私は強かっただろう?」

「ふふっ、そのようですね」

 私の怪我を心配するリーナ嬢におどけて見せると、安心したように微笑んだ。それでも、、

「はぁ、 、リーナにあんな私は見せたくなかったのだが……」

「?? 私を守ってくださいましたし、昔のような威厳も溢れていて素敵でしたよ? あっ、もちろん今のウィルも素敵です!」

 まさか、そんな嬉しい言葉が聞けるとは……。

「えっとリーナ、それは無自覚か?」

 首を傾げるリーナ嬢を見るに自覚がないようだな。

「無自覚なんだな……。でも、私を『素敵』だと思ってくれていたんだな?」

 嬉しさのあまり頬が緩む。
 リーナ嬢の白い頬は赤く染まっていた。赤い夕日も相まって真っ赤だ。本当に可愛いな………。

「ん? 少しは意識してくれたか?」

「………お忘れください」

「それは無理な相談だな」

「な、何故ですか!?」

「あんなに可愛いリーナを忘れるなんて出来ないさ」

 恥ずかしくなって俯くリーナ嬢が愛らしい。
 学園にいた頃はずっと彼女と一緒にいることは出来ず、眺めることが多かった。皇子である私と仲が良いとリーナ嬢への嫌がらせを加速させてしまうからな。
 ……今はこうして一緒にいることが出来る。

「さぁリーナ、こっち向いてくれないか?」

 下を向いているリーナ嬢の手を握る。
 
「リーナ」

「い、今はダメですっ」

「リーナの顔見せて?」

 右手でリーナ嬢の左手を握ったまま、空いている方の手でリーナ嬢の頭に付けたクローバーの髪飾りを撫でる。
 どうやら砕けた口調に弱いようだな。

「~~~~!」

「あはは! これ以上やったら嫌われてしまうな。 リーナ、早く返事を聞かせてくれよ?」

 何の返事かは分かるだろう?

「っき、気長に待つと仰っていたではありませんか!」

「あぁ、それでも」

「わっ、分かりました」

 あぁ、再会してから日々愛しいと思う気持ちが増している。

「ありがとう。 さて、そろそろ帰ろうか」

「そ、そうですね」

 まだ顔を上げないリーナ嬢の手を引いて、夕日に染まった街を歩く。
 物影からの複数の視線を感じながら歩くのは少し恥ずかしいな……。

 一ヶ月前までは考えられなかった状況に顔が熱くなる。
 ……この幸福な日々がいつまでも続くことを願いたい。




~~~~~~~~

読んでくださりありがとうございます!

~裏側その2~
「兄貴、どうします!?」
「どうもこうもねぇ! 強ぇ奴がボスだ」
「あんな若造に付くとぉ?」
「ったりめぇだ! あの強さに惚れた。テメェらはどうなんだ?」
「いや、そりゃあ……」
「カッコよくはありましたね~」
「んじゃ、決まりだな!」

 ウィルを『ボス』と慕う強面達が見られるようになり、ウィルは頭を悩ませましたとさ。 


 う~ん……いくつかウィリアム視点の話を書いてきましたが、ウィリアム君にストーカー要素を感じてしまうのは私の気のせいですよね?考えすぎですよね? ヒーローですもんね?
 普通に優しい良い皇子様ですよね??






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