14 / 57
2章 街で幸せに
14 変化(ウィリアム視点)
しおりを挟む3人に向かっていく私を不安そうに見つめるリーナ嬢の視線を感じる。
「大丈夫だから、安心していい」
「チッ! よそ見なんかして、随分と余裕だなぁ!?───オラッ!!」
振り向いた私に腹が立ったようだな。
「う~ん………。動きが大きすぎるな」
一番大柄の男が殴り掛ってきたが、腕を振りかぶりすぎてて隙だらけだった。
私は弱そうに見えるかもしれないが、帝国の皇子。幼い頃から護身術をはじめとする武術を学んでいたから、並みの騎士よりは強い自信がある。
「おいお前ら、一斉に殴りかかれ!」
「───リーナ、ちょっと目を閉じていてくれ」
「は、はい!」
私は体格に恵まれなかったため力が強い訳ではないので、相手の力を利用するスタイルだ。まぁ、そうすると、相手が受ける衝撃も大きくなるわけで、リーナ嬢が見るには刺激が強いだろう。
───「グァッッ」
─────「グホッッ」
───────「ガハッッ」
宣言通り一斉に殴り掛ってきたので、それぞれの力を上乗せした上で相討ちさせる。
「よしっ、 リーナ、もう目を開けて大丈夫だ」
「ウィル、、大丈夫ですか!?」
「あぁ。この程度なら余裕だ」
「その、ウィルは強いのですね………」
リーナ嬢は少し呆然としているようだ。リーナ嬢から見た私は護られる皇子だったのだろうな、、
「ははっ、 鍛えたからな。………リーナは怖い思いしてないか?」
「ウィルが守ってくれたので大丈夫です!」
リーナ嬢の青銀の瞳が輝く。
「ぐっ………テメェ」
「もう許さないぜ!?」
「後悔してもしらないよぉ?」
はぁ、、大きな騒ぎになってはと、私からは少し手を加えるくらいでいたのだが……。
自分達の弱さを知れば反省するかもしれないと思ったのだがな、、
「……せっかく手加減をしてやったというのに、まだ続けようというのか?」
「な、何だと!?」
「反省するようなら許してやろう思ったのだが、、無駄な気遣いだっか?」
男達を威圧する。
皇族として生まれ育った者は自然と周囲と違う空気を纏うようになる。それが人の上に立ち、他を平定する上で必要なことだからだ。もちろん、始終威圧感を放っている訳ではないが。
「て、テメェ、何者なんだ!?」
「お前たちが知る必要はな──」
「オラァァア!」
「ウィルっっ!!」
「……ここまで愚かな者がいたとはな、、」
まだ、殴り掛るとは……。
タチが悪い。今までも自分より弱い者達に対して悪行を重ねてきたのだろう。
「「「!!!!」」」
幸いにも殴り掛ってきたのは一人で、他の二人は戦意を喪失しているようだ。
攻撃をいなしてバランスを崩した男の首元に手刀を打ち込むと、そのまま倒れ込んだ。
「……分かったら、すぐに立ち去れっ!」
「「ヒィッ!」」
男たちは2人で気を失った1人を支えて逃げていった。これで少しは更生するといいのだが、、更生が見込めないようだったら治安部隊に任せるとしよう。
振り返るとリーナ嬢と目が合う。
「……すまないな、人に暴力を振るったりして、、」
最後は見られてしまったか、、怖がっている様子はないが、、
「私は大丈夫です。ウィルは本当に怪我をしていませんか?」
「私は強かっただろう?」
「ふふっ、そのようですね」
私の怪我を心配するリーナ嬢におどけて見せると、安心したように微笑んだ。それでも、、
「はぁ、 、リーナにあんな私は見せたくなかったのだが……」
「?? 私を守ってくださいましたし、昔のような威厳も溢れていて素敵でしたよ? あっ、もちろん今のウィルも素敵です!」
まさか、そんな嬉しい言葉が聞けるとは……。
「えっとリーナ、それは無自覚か?」
首を傾げるリーナ嬢を見るに自覚がないようだな。
「無自覚なんだな……。でも、私を『素敵』だと思ってくれていたんだな?」
嬉しさのあまり頬が緩む。
リーナ嬢の白い頬は赤く染まっていた。赤い夕日も相まって真っ赤だ。本当に可愛いな………。
「ん? 少しは意識してくれたか?」
「………お忘れください」
「それは無理な相談だな」
「な、何故ですか!?」
「あんなに可愛いリーナを忘れるなんて出来ないさ」
恥ずかしくなって俯くリーナ嬢が愛らしい。
学園にいた頃はずっと彼女と一緒にいることは出来ず、眺めることが多かった。皇子である私と仲が良いとリーナ嬢への嫌がらせを加速させてしまうからな。
……今はこうして一緒にいることが出来る。
「さぁリーナ、こっち向いてくれないか?」
下を向いているリーナ嬢の手を握る。
「リーナ」
「い、今はダメですっ」
「リーナの顔見せて?」
右手でリーナ嬢の左手を握ったまま、空いている方の手でリーナ嬢の頭に付けたクローバーの髪飾りを撫でる。
どうやら砕けた口調に弱いようだな。
「~~~~!」
「あはは! これ以上やったら嫌われてしまうな。 リーナ、早く返事を聞かせてくれよ?」
何の返事かは分かるだろう?
「っき、気長に待つと仰っていたではありませんか!」
「あぁ、それでも」
「わっ、分かりました」
あぁ、再会してから日々愛しいと思う気持ちが増している。
「ありがとう。 さて、そろそろ帰ろうか」
「そ、そうですね」
まだ顔を上げないリーナ嬢の手を引いて、夕日に染まった街を歩く。
物影からの複数の視線を感じながら歩くのは少し恥ずかしいな……。
一ヶ月前までは考えられなかった状況に顔が熱くなる。
……この幸福な日々がいつまでも続くことを願いたい。
~~~~~~~~
読んでくださりありがとうございます!
~裏側その2~
「兄貴、どうします!?」
「どうもこうもねぇ! 強ぇ奴がボスだ」
「あんな若造に付くとぉ?」
「ったりめぇだ! あの強さに惚れた。テメェらはどうなんだ?」
「いや、そりゃあ……」
「カッコよくはありましたね~」
「んじゃ、決まりだな!」
ウィルを『ボス』と慕う強面達が見られるようになり、ウィルは頭を悩ませましたとさ。
う~ん……いくつかウィリアム視点の話を書いてきましたが、ウィリアム君にストーカー要素を感じてしまうのは私の気のせいですよね?考えすぎですよね? ヒーローですもんね?
普通に優しい良い皇子様ですよね??
6
お気に入りに追加
3,749
あなたにおすすめの小説
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
私のことを愛していなかった貴方へ
矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。
でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。
でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。
だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。
夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。
*設定はゆるいです。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
私、女王にならなくてもいいの?
gacchi
恋愛
他国との戦争が続く中、女王になるために頑張っていたシルヴィア。16歳になる直前に父親である国王に告げられます。「お前の結婚相手が決まったよ。」「王配を決めたのですか?」「お前は女王にならないよ。」え?じゃあ、停戦のための政略結婚?え?どうしてあなたが結婚相手なの?5/9完結しました。ありがとうございました。
初めまして婚約者様
まる
恋愛
「まあ!貴方が私の婚約者でしたのね!」
緊迫する場での明るいのんびりとした声。
その言葉を聞いてある一点に非難の視線が集中する。
○○○○○○○○○○
※物語の背景はふんわりしています。スルッと読んでいただければ幸いです。
目を止めて読んで下さった方、お気に入り、しおりの登録ありがとう御座いました!少しでも楽しんで読んでいただけたなら幸いです(^人^)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる