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1章 街へ
7 彼女を求めて(ウィリアム視点)
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(ウィリアム視点)
私はアスラート帝国の第二皇子、ウィリアムだ。
今年で18歳となって、もうじき社交界の一員となるため、周りから早く婚約者を決めるよう言われている。
しかし、私は政略結婚ではなく、恋愛結婚をしたいと思っているのだ……。もちろん、立場上それが許されぬことだとは分かっているのだが……。
─── 私の想い人はカトル公爵家の長女、リーナ嬢だったが、残念なことに彼女にはすでに婚約者がいた。
諦めようと思っていたのだが……最近になって、彼女が婚約破棄をしたという噂を聞くようになった。
私にもまだチャンスがあるのだろうか……?
───彼女との出会いは学園だった。
彼女はいつも一人で本を読んでいて、私の目には寂しそうに見えた。
だから、最初は一人で寂しそうに、諦めたような顔をしていた彼女の友になろうと思っただけだった───。
しかし、彼女は一人でも何事にも負けない強い心を持っていた。
誰よりも博識で、誰に何を言われようと挫けなかった。
彼女と話す時間は楽しく、長い前髪の隙間から時々覗く綺麗な青銀の瞳に惹かれていった。
私は彼女と婚約したいと思っていたので、彼女の婚約破棄の噂が真実なら、直ぐにでも婚約したい。
まずは噂が真実か確かめにカトル公爵家に向かおう。
* * *
カトル公爵領は城から3日程の距離にある。
───急な訪問になってしまったが、すぐに応接室に通された。
久しぶりに彼女に会えるだろうか?
学園を卒業して以来会えていないから、会いたいが……。
しばらく待っていたら彼女の父、カトル公爵が来た。
「カトル公爵、急に来てしまい申し訳ありません……。リーナ嬢とレクト公爵令息が婚約破棄をされた耳にしたのですが、まことですか?」
「あれが婚約破棄したのは事実でございます。……失礼ですが、ウィリアム様はなぜ、あの無能をご存知なのでしょう?」
リーナ嬢の婚約破棄の噂が真実であったのは嬉しいが……公爵は自分の娘を『あれ』と言うのか?
それに、リーナ嬢が無能とは………?
「……私は学園でリーナ嬢の同級生で、そこで知り合いましかが、、リーナ嬢が無能? リーナ嬢は大変優秀で有能な方ですよね?」
「いえいえ、あの無能は学園での成績が家族に言えない程の悪さだったはずです」
??どういうことだ……。
彼女は学園での輝かしい成績を家族に言っていない?
いったい何故?
「リーナ嬢の成績が悪い?とんでもありません! 彼女は学園で3年間、ずっとトップの成績でした。 それも全ての科目で1位を取り続けていましたよ?」
驚いた顔をしているが、、本当に知らないのか?
───コンコンコン、、ガチャ
「お父様? ミラです。お呼びとのことですが……」
公爵はリーナ嬢の妹を呼んでいたのか……。
話の妨げにしかならないと思うのだが、、しかもノックの後で返事を待たずに入ってくるなんてちゃんと教育を受けているのか?
「おぉ、ミラ! ウィリアム様、ご紹介します。この娘が我が家自慢の娘、ミラでございます」
あぁ、そういうことか……皇子である私と自分の娘を婚約させたいのだな、、どうせならリーナ嬢を紹介してくれればいいのに……。まぁ、公爵が言う通り可憐な少女ではあるが、、
「……初めましてカトル公爵令嬢、、第二皇子のウィリアムと申します」
「まぁ、第二皇子殿下!? 初めまして、カトル公爵家の次女、ミラです」
……妹とは言っても性格は全く違うようだな。
この令嬢は私の外見しか見ていない。
それよりも────
「それで……リーナ嬢はどちらに?」
「あの醜女ですか? あれなら、1週間くらい前に出ていきましたよ? それよりもウィリアム様、私とお話ししましょう?」
「出ていった!?」
それに妹まで彼女を『あれ』だの、無能だの、、
もしかして……彼女は家族にまで冷たく扱われていたのか?
だから、学園で寂しそうにで、どこか諦めていたように見えたのか……?
「左様でございます。それよりも、ウィリアム様は婚約者がいらっしゃいませんでしたね? ミラなんてどうです? 可愛らしい娘でしょう?」
「いえ、リーナ嬢が出ていったとは、、どういうことです!?」
貴方たちは自分の娘が出ていこうとするのを止めなかったのか!!
「ウィリアム様?」
っっ、彼女の元へ行かなければ……。
「……申し訳ありません、カトル公爵。急用を思い出したので、失礼します」
まずは皇帝である父上に城を出る許可をもらえるように頼もう。
彼女と結ばれることが出来るならば、皇子の身分など必要ない!
* * *
───バタンッ
「父上! 私の皇子としての身分を剥奪してください!」
……急いでいたとはいえ、突拍子が無さすぎるし、ノックはするべきだったか、、
「……急にどうしたのだ」
「実は────
僕はカトル公爵家のリーナ嬢に好意を寄せていたこと、彼女が公爵家を出ていってしまったらしいということを父に話した。
「……お前の気持ちは分かった。しかし、身分を剥奪する理由がない」
そうか……皇子が身分を剥奪されるなんてよっぽどのことがあった時だ、、
「……なら、私が死んだことにしてください! それなら、問題ありませんよね?」
「帝国の民全員を騙すというのか?」
私が豊かな暮らしを出来ていたのは全て民のお陰だ。皇族はその代わりに民の生活を支えていく義務がある。私がしようとしていることは、責任放棄に他ならないだろう。
「………はい」
皇子としてやってはいけないことだと理解しているが……。
「はぁ、、分かった……お前は病気で急死したことにしよう」
「よろしいのですか!? ありがとうございますっ」
「しかし、急に死んだといったら怪しむ者がいるだろう……よって、お前はこれから1ヶ月間、外へ出るな。1ヶ月後にお前の死亡発表をしよう」
──1ヶ月後、、父上に会えるのはこれが最後になるだろう……。
最後まで迷惑をかけてしまい、申し訳ない、、
一人の民として国を見て、父上の立場では気付けないことなどを知らせることで恩返しになるだろうか?……いや、ならないな。
出来ることなら兄上にも挨拶をしたかったが、兄上は皇太子として隣国に行ってしまっている。兄上だけに国を背負わせてしまい、申し訳ない……。
母上は一昨年に鬼籍に入っているが、城を出る前に墓に赴いて挨拶をするとしよう。
「……父上、今までお世話になりました。 これからもアスラート帝国の発展を祈っております」
「あぁ、元気でな……私もお前の幸せを祈っている」
父上の笑顔に胸がいっぱいになるが、一回頭を下げて部屋を出る。
───彼女の元へ向かえるのは最低でも1ヶ月後、、彼女はこんな自分勝手な私を受け入れてくれるだろうか?
~~~~~~~~
読んでくださりありがとうございます!
皆様お分かりかと思いますが、ウィリアム君は猪突猛進と言いますか……結構、突き進んでいく感がある子で、今後「これはないわ」と思われる場面が多々あるかもしれませんが、こんな人もいるかもね程度に思っていただければと思います_(..)_
その要素もだんだん薄まっていくと思うのですが、、
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