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1章 街へ

4 初仕事(前半マチルダ視点)

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(マチルダ視点)


 リーナには話し終わった後、二階の部屋で休むように言った。

 しかし、貴族様のする事はわからないねぇ。
 アタシにあんな綺麗な娘がいたら目一杯可愛がるのにさ。

 今日、街でリーナに声を掛けたのはあの子の雰囲気がアタシら平民のものと違ってたからだ。

 食堂の女将っていう職業柄、人を見る目はあるからね。

 街でのあの子は雰囲気が洗練されてて、服も丁寧な作りの高そうなやつだったのに、髪や肌はアタシらと同じどころか、貧民街から出てきたみたいだったんだ。
 まぁ、それはカツラと化粧だったんだけどね。

 リーナが夕飯を食べに食堂に降りて来た時は驚いた!

 綺麗な髪に輝く青銀の瞳で肌も光ってんのか?ってくらい真っ白で綺麗でさ。
 まさに女神様だったよ!

 …………どうしても気になって『なんで貴族のアンタがあんな格好をして、家を出たのか教えてくれるかい?』なんて聞いちまった、、事情がありそうだから踏み込まない方がいいとは思ったんだけどね、、

 アタシに話したことで嫌な思いをしてないといいんだがねぇ、、

 それにしてもホント、リーナの母親は何なんだい!
 娘にカツラを付けて肌を汚せなんて、、それも命令なんてさ!
 
 なぁに自分が生んだ娘に嫉妬してんだい!?
 自分の子供に無理を強いるなんて情けないねぇ!

 妹も一見、無邪気なんだろうけど、かなりの腹黒だね。

 …………リーナは家族からの愛情を知らず、辛い思いをしてきたんだね、、

 学園でも、酷い言葉ばかり浴びせられて、それを相談できるやつもいない………アタシなら、耐えられないよ。

 第二皇子って人はいい人そうだが、結局はリーナを支えられなかったんだろう?

 リーナのような若い子が家族を捨てる決意をしなきゃならないなんて、、、アタシは平民でよかったのかねぇ……。

 アタシだけじゃ無理かもしれないけど、この辺には優しいやつが多い。みんなでリーナを幸せにしてやろうじゃないか!

 …………その前にリーナに丁寧な口調を止めるように言わなきゃかねぇ。
 ただでさえ綺麗な顔と洗練された雰囲気なんだ、、口調まで高貴なままじゃあ、いつか拐われちまうよ!
 いや、逆に貴族っぽい方がいいかね?
 人がよくて騙されやすそうだから心配だよ。

 まぁ、そうならないよう頑張るとしようじゃあないか。でもアタシだけじゃあ頼りない……誰でもいい、リーナを守ってやっておくれよ?

 



* * *




(リーナ視点)

 昨夜はマチルダさんから早く部屋で休むように言われたのてカトル公爵家にいた頃よりも早くに寝ましたが、久しぶりにスッキリした気分です。

 マチルダさんはもう起きて朝食の準備を始めているようですし、私も起きましょう。



 「───マチルダさん、お早うございます」

「あぁ、お早う!もうすぐご飯ができるからね」

 今日の朝食はベーコンエッグとパン、サラダです。
 どのお料理も美味しいです。

「アンタは本当に美味しそうに食べるねぇ! こっちも作りがいがあるよ!」

「マチルダさんの作る食事はとっっても美味しいです!」

「ありがとさん」

 今回もあっという間に食べきってしまいました。

「あぁ、リーナ、、アンタその話し方変えられるかい?」

「話し方ですか?」

「そう。アタシら平民はそんなに丁寧に話さないからね、アンタの出自がバレちまうよ」

 ………バレたくはありませんが、すぐには無理かもしれないですね、、物心つく頃にはこの話し方でしたから、、
 でも、せっかくアドバイスしてくださったのですから、努力しなければなりませんよね?

「出来るかい?」

「分かりま……った。努力しま…る」

 ………すごい変なことになってますよね?

「………まぁ、アンタくらい綺麗だと丁寧な話し方の方がいいかもしれないから、自分の好きにしな」

 どうしましょう……。
 貴族だとバレたくありませんが、不自然ですよね?
 ……ミラに対しては普通に話せていたので、あのような関係でも無意識に姉だという意識があったのでしょうね。しかし、この様子では口調を変えるのは厳しそうです、、

「……しばらくは今まで通りに話します」

「そうかい。………それで、アンタには接客をやってもらいたいんだけど、、そっちは出来るかい?」

「やったことはありませんが、お客さんを席に案内して、注文を聞くのですよね?」

「そうだよ。あとは出来たらでいいから、アタシが作った料理も運んでもらえるかい?」 

「はい! 頑張ります」

「この食堂は昼だけの営業だからね。それ以外の時間は街へ行くなり好きなことをしな」

 接客……私に出来るでしょうか? 人との会話も得意とは言いがたいですが………。でも、私は料理が作れませんから、出来ることを頑張って、マチルダさんのお力になれるようにしましょう!


 あっ、空いている時間は街に行きたいです!
 

* * * 


 お昼の時間帯になって営業を開始すると、食堂内はすぐにお客さんで一杯になりました。
 すごいです、、

 私もお客さんをお席にご案内して、注文を聞いて、料理を運んで、、マチルダさんはこれを一人でやっていたなんて…………!

「───嬢ちゃん! 随分な美人さんじゃないか、、ここで働き始めるのか?」

「はい。 昨日からお世話になっていて、今日初めて仕事の手伝いをさせていただいております」

 先程から、時々声を掛けてくださる方がいるので、接客が楽しいです。皆様、フレンドリーですね。

 今も男性の方が声を掛けてくださいました。
 公爵家にいた頃は特定の使用人と仕事の話をするだけだったので会話が出来るだけで幸せです。

「そうか、頑張れよ!」

「ありがとうございます!」

 応援してくれる人がいるだけで、こんなにも前向きな気持ちになれるのですね!

 





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