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4章 始まりの乙女
17 . 姫野颯斗の追憶⑨
しおりを挟む先週は投稿できなくてすみませんでしたorz
駆け抜けてしまったので話が薄っいですし、颯斗君の気持ちも表現しきれていませんが 、過去軸はこれでラストになりますm(__)m
~~~~~~~~~~
祖母ちゃんが死んだ。
祖母ちゃんが亡くなったのは俺が大学1年生の秋……6年前らしいけど、俺がそれを知ったのはその半年後のことだった。祖母ちゃんに会ったあの日から3年後ことだ。
結局、俺が隠れて家族の様子を見に行っていることは祖母ちゃんに会ったすぐ後、師匠にばれてしまった。
すごく怒られたけど、師匠の話を聴いて軽率で、みんなを危険に晒す行為だと反省している。
……そして、師匠と約束して家族の様子を見に行くのは1年に1回と約束した。
回数が減ったのは、美緒─件の妖が警戒を強めたからだ。
……弱っている力を取り戻し始めているのかもしれないというのが師匠の推察だったが、陰陽師が傍で監視しているということがばれてしまっては刺激を与えることになるという判断から、常時ついていた監視は取り払われ、週に1回様子を見るだけになった。
最も警戒されるであろう俺に許されたのは年に1回、それでも自分の目で家族の様子を確認できるのはありがたかった。
……常時監視がついていた頃には祖母ちゃんがい尋ねてくる様子も確認できたが、週に1回少し様子を窺う程度では、妖の現状を確認する程度しかできない。ある時から咲空の元気がなくなったということは分かったらしいが、対して調べられなっかったためにその原因はわからなかった。
『本当にどうしてかしらね……貴方のことは信じていいと感じるの』
俺にそう言ってくれた祖母ちゃんは、咲空の心の拠り所になってくれていた祖母ちゃんなもういない。
唯一の理解者を失った咲空のは、1年で様変わりしてしまった。式を介して見ただけでも、表情が抜け落ちて何も映していない瞳になってしまったということがわかった。
……1つ幸いだったのは、祖母ちゃんは自分の宝物であるエメラルドのネックレスのチェーンを俺が渡したものに付け替えて咲空に渡してくれたことだ。あれは何かあったらあの御守りが咲空を護ってくれるだろうし、咲空の心が完全に壊れないようにしてくれると思う。エメラルド自体にも特別な力が宿っているように見受けられたから、何らかの守護があるかもしれない。
……考えようによっては、 心が壊れない状態で縛り付けられるというのは酷なことなのかもしれない。苦しみから逃げることが許されないということなのだから。
その現状に焦った俺は、咲空を誘拐してでも連れ出そうとしたこともあった。
しかし、その考えは阻止されてしまった。
……妖の大群が現れたのだ。本来妖は群れたりしないはずの妖が大量に。
わかる範囲では美緒の動きに変化はなかったらしいから、ただの偶然だったのかもしれないけど、街一帯が穢れに塗れるというのはどう考えても異常だった。
そして、下手な行動は咲空を危険に晒す行為に他ならない、そう悟った。
……正解がわからない。今の現状は事態を悪化させることはなくても苦しんでいる咲空を見守ってるだけで、何も変えることができない。かと言って咲空の命を危険に陥る恐れがある行動を侵すというのも問題がある。
事態がが急変したのは、祖母の死を知ってから3か月後だ。不測の事態が起きた。
毎週のように担当陰陽師が確認に行ったら、1週間前まで一家が暮らしていたはずの家はもぬけの殻になってしまっていたのである。
1週間前には引っ越すという気配なんて全くなかったというのに、突然消えてしまったのである。
聞き込みをしても何も分からない。役所に聞いても分からない。
陰陽師の権力を使ってもだ。
何とか引き出せたのは『次女が神族の半身と判明したため、安全を考慮して引っ越した』それだけだった。
変に納得してしまった。強大な力を有する神族の一番の弱点は半身だ。その弱点を陰陽師とはいえ不特定多数の者達に漏らすということはできないのだろうと。
……『次女』ということは、神族の半身になったのは美緒だ。
その神族何者なのか、どこに引っ越したのかはわからなかったが、神族ならば美緒の中にいる者の存在に気が付いてくれるだろうと期待した。
* * *
家族の行方が分からなくなってから不安とやるせなさを感じながらも、俺を突き動かす声に従って大学で勉学に励み、いつか再会できることを願って陰に日向に妖を祓い続けた。
そうして4年が経とうとしていた頃、俺に辞令が下った。
去年は大学を卒業して、順調に教員になる予定だったものの急に妖の動きが活発化したために断念した。陰陽師があまりに不足していたため、普段は別の職に就いている人達もみんな妖祓いに当たったのだ。
そんな限界状態の中で、俺に下された辞令はとある高校の調査。 俺が教員を志望していて、教員採用試験には合格していたことから抜擢されたのである。……実は俺が受けたのは中学校教員の募集区分だったから、ちゃんと高校で教鞭をとれるだけの力があるかなどは審査された。
それを突破したわけではあるけど、自分自身でも若すぎるし経験不足だと思う。
……まぁ、適任が俺しかいなかったし、こんな時だけど念願がった教員になれるのだ、陰陽師としても教員としてもしかっりやろう。
俺がその高校に行くことになったのは、全国で妖が大量に出現し、生命力が豊富な子供たちが集まっている学校という環境は穢れの被害に合っているというのに、その学校では妖はおろか穢れさえないというからだ。
良いことなんだろうけど流石におかしいし、何かあるのかもしれない。
赴任先の学校に行ったとき、まず驚いたのはその空間の清浄さだ。
掃除が行き届いているという意味ではない。不浄なものを寄せ付けない、言うなれば聖域のような場所だった。
そして迎えた職員会議で俺はそれ以上に驚くことになる。
……思ってもいなかった。まさか、ここで咲空に再会できるなんて。
職員会議で咲空の名前を聞いたときは驚いたし、同姓同名の別人ではないかと疑った。
さらに驚いたのは、咲空が神族の……それも天代宮様の半身になっていたことだ。
俺が知っていたのは『次女が神族の半身と判明した』という話だけだったけど、まさか咲空も神族の半身だったなんて……
ただし、家族の問題は相変わらずのようだった。咲空は雲上眩界にある天代宮様の邸から通学しており、そのことを家族は知らないという。
副担任として資料を見ると、美緒や父さん、母さんの名前があったが、住所の欄は空欄になっていた。担任の早川先生に確認したら「姫野さんは妹さんも神族の半身なので情報保護のために記載していないんです」とのこと。早川先生は昨年度も咲空の担任だったらしく、教えられる範囲で色々なことを教えてくれた。
天代宮様がそばにるのなら、俺が自分のことを明かしても、兄として接しても大丈夫なのかもしれない、そう浅ましく期待して迎えた始業式の日、咲空の表情は4年前最後に見た時よりもずっと明るくなっていた。
……きっと、半身である天代宮様が咲空の凍り付いた心を解かしてくれたのだと思う。……兄なのに結局は何もできなかった自分が情けない。
兄なのに、咲空が一番辛い時に傍にいてやることができなかった。
咲空とは目が合ったものの、兄と名乗ることなどできなかった。
そして、咲空を見て悟ったことがある。
この学校の異常なまでの清らかさは咲空によるものだ。穢れのように見えるわけではないから確証はないけど、咲空が発する空気が他とは違うように感じた。
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