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3章 再交する道

29 . 裏側で

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 先週は投稿できなくて申し訳ございませんでしたm(。_。)m
 今回は咲空が消えた後の学校でのお話です!

~~~~~~~~


(葵視点)


 お二人は行かれましたね。

 姫様、どうかご無事で……
 
 ……さて、こちらも対応をするとしましょう。

『桃、少し予定と変わりましたが作戦通りにお願いします』

『えぇ』

 本来の作戦では姫様が人目に付かない廊下などに移動してそこで主様が黒邪を飛ばすというものでしたが、人目に付かない場所への移動が困難となってしまったため、姫様は教室のベランダに移動されました。
 あの状況では最善の行動でした。急にベランダに駆け出したことになってしまっても、それさえ誤魔化すことができれば人間にとって超自然な現象など起こっていないことになりますから。


「──咲空ちゃん? どうしたの」

「何かあった」

 姫様がベランダに出てから三十秒程でしょうか……姫様のご友人が心配してこちらに来られたようですね。
 桃に一つ頷くと、桃も頷き返して自身に術を掛けました。より強力な術になるように私も力を加えます。

「咲空ちゃん?大丈夫」

「──うん、大丈夫。何か落ちてきた気がしたんだけど、気のせいだったみたい。急に飛び出しちゃってごめんね」

 このような誤魔化す必要があれば桃が一時的に姫様に見えるように術をかけ、姫様として対応するということになっておりました。
 見た目は誤魔化すことができても、少しの違いを誤魔化すことはできませんので、あくまでも“一時的”にですが。桃がいくら姫様を意識した話し方や動きをしようと、必ず普段の姫様との間に乖離が生じてしまうことでしょう。

「ホントだよ急に顔色変えてベランダに飛び出すんだもん。何かあったのかと思った……って、あれ? 咲空ちゃん体調悪い?」

「え?」

「あっ、ホントだ。顔色悪いけど大丈夫?」

「……ちょっと、頭が痛いかも」

「うそっ!?」

 姫様は体調不良で帰宅するということにさせていただきます。……心優しいご友人方を騙すのは心苦しいですが、致し方ありません。
 桃や私が対応した場合、姫様にどのように対応したのか正確に伝えなくては後に齟齬が生じてしまう恐れがありますから、成り代わりはできるだけ短時間にし、会話なども少なくする必要がありますから。

 ちなみに姫様が人目に付かない場所まで移動できた場合には、私から学級担任の早川様に“急用につき帰宅した”とだけ伝える予定でした。早川様……千紗さんと私はお話しする機会が多くあったため、多少は砕けた間柄になっていますし、彼女は勘の良い方なのでこちらの事情を察して深くは追及してこなかったでしょう。
  

「……どうする? 来たばかりで大変かもしれないけど、早退する?」

「うん……そうしようかな。ごめんね」

「そんなのいいよ。お迎え来るまでは保健室にいるでしょ?」

「うん」

「保健室まで荷物とか運ぶね」

「ありがとう」

 さぁ、こちらは桃一人で大丈夫そうですね。私は集まっている妖への対応をするとしましょう。

 やはり、黒邪は妖を引き連れてきていたようです。弱いものでは姫様によって創られた聖域に屈してしまうため強力なものを。
 和泉も来ているようですね。
 桃や私は戦闘を目的として創られた式神ではないので正直助かりました。長門もいるかと思いましたが、ここにはいないようなので別のことに当たっているのでしょう。

 まずは和泉と合流しなければ、と思っているとあちらの方から近づいてきました。

「葵、主様と姫君は飛ばれたか?」

「はい、黒邪と共に。助力に感謝します。長門もいるかと思いましたが……長門はどこに?」

「長門は姫君のご家族の保護に向かった」

「なるほど」

「被害が出る前に妖を祓うぞ」

「えぇ」

  






* * *


(???視点)



 何もない真っ白な空間を漂っていた私の意識はその瞬間、突然に現れたあの人の気配を感じたその瞬間に浮上した。

 でも、私の意識がはっきりしきる前にあの人の気配は再びどこかに行ってしまった。

 『──待って、行かないでっ……! 私は、私はここにいるからっ!』
 
 そう叫びたいのに、叫んでいるのに、その願いが声となって出ることはなかった。
 やっと、やっと会えたと思ったのにっ……

 すぐに消えてしまったけど、絶対にあの人だった。
 私が知っているあの人の気配とは違っていたけど、あの人の悲痛な叫びにも似た何かを感じた。 

 ……何があの人を苦しめているの? 
 優しかったあの人が纏う空気は変わってしまっていた。憎悪という闇に覆われてしまっていた。

 気配を感じただけで、姿を見ることはできなかった。でも、あの人が発しているであろう気配はかつてのものとはかけ離れていた。
 明るい光の中にいたはずのあの人がさっき纏っていたのは闇。今は暗い闇の世界で生きているみたいだった。

 どうしてああも変わってしまったの……?

 ……思い当たることなんて一つしかない。
 私が、私があの人を変えてしまったんだ。
 
 私が、あの人を苦しめてしまっているんだ。
 私のせいで、貴方に苦痛に満ちた生き方を選ばせてしまったんだっ……


 ごめんなさい……ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい……


 もう、苦しまないで。私は、貴方に苦しんでほしくないっ……

 私は、私は……──





 ──キーンコーンカーンコーン……




 ──……あれ?

 ……チャイム……いつもと変わらない、チャイムの音。
 なんでだろう……すごく久しぶりに聞くような気がする。
 どこかに遠くに行っていた意識が、チャイムの音で現実に戻ってきたみたい。

 ……何だったんだろう? すごく胸が締め付けられていた感じがする。

 今も、まだ苦しい……──










~~~~~~~~~~~

 読んでくださりありがとうございました(*^^*)

 次は3章のエピローグになります!!

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