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3章 再交する道

8 . 模試

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 麗叶さんとのお出かけから1週間。
 今日は学校で模試を受験するから久しぶりに学校に来ている。久しぶりと言っても、三者面談で一度来たから2週間振りくらいだけど……

 あの日は、服を買った後はご飯を食べて、また二人で出掛けようという約束をして雲上眩界に帰った。

 ……予想通りというか、顔立ちが整っていて身長の高い麗叶さんはとても目立っていて、道行く人達全員が振り向くというような感じだった。
 とはいっても麗叶さんが人並外れたオーラを放っているからか、近寄ってくる人はいなくて注目を浴びにとどまったし、早い段階で視線を向けられていることに気が付いた麗叶さんが認識を阻害する神術を使ってくれたから、変にプレッシャーを感じることなく楽しむことができた。

 次の日からは根を詰めすぎない程度に今日の模試とその先にある受験に向けた勉強をした。
 自分で問題集を解く限りでは、苦手な教科もかなり解けるようになってきたから、今日の模試で今までの勉強の成果が出るといいな。

 いつものように皆よりも早い時間に登校したから、模試の開始時間まで教科書や単語帳を見て時間を潰す。


「──おはよう咲空ちゃん。久しぶりだね」

 しばらくして私に声をかけてくれたのは結華ちゃん。結華ちゃんに会うのは3週間振りだけど、すごく久しぶりな感じがする。

「結華ちゃん……! 久しぶり」

「夏休みはどうだった?」

「充実してたよ。勉強もいっぱいできて、数学の数列とか苦手な部分を克服できた気がする。結華ちゃんはどうだった?」

「私も勉強と歌の練習頑張ったよ」

「そっか、実技試験があるんだもんね」

「うん、課題曲が3曲と自由曲が1曲。課題曲はドイツ語の曲なんだけど、発音が難しくて……」

 結華ちゃんは小さい頃から声楽をやっていて音大の声楽科への進学を目指しているから、この学校のほとんどの受験生とは違った対策が必要で大変みたい。


「おっはよ~!咲空ちゃん、ユイユイおひさーー! 2人は夏休みどうだった!? うちはね──」

「はい加奈~ストップストップ。暴走しかけてるよ~」

「あっ、ごめん2人とも! ……でもさ、久しぶりに会ったらテンション上がらない?」

「テンション上がるのは分からないでもないけど、ビックリするでしょ」

 しばらく結華ちゃんと2人で話していると、加奈ちゃんと晴海ちゃんも登校してきた。
 加奈ちゃんは相変わらず明るく元気で、晴海ちゃんの加奈ちゃんブレーキも健在だった。……3週間くらいで変わるわけがないかもしれないけど、みんなの変わっていない様子に安心する。

「ユイユイ、咲空ちゃん久しぶり。う~ん、3週間振り?」

「うん、1学期の終業式振りだからそのくらいかな?久しぶりに会えて嬉しいな」

「私も嬉しいよ」

「うちもー!」

「私も。ふふっ、皆揃ったね」

 家が近所の加奈ちゃんと晴海ちゃんは夏休み中も結構頻繁に会ってたみたい。
 加奈ちゃんが一人じゃ勉強に集中できないから、晴海ちゃんが一緒に勉強してたみたいな感じらしいけど……
 そんなところも2人らしい。
 
「にしても、高校生活最後の夏休みもあと1週間と少しか…… あっという間だったね~」

「そうだね」

「なのに模試を受けに学校に来てる私達っ……!」

「まぁ……でも受験生だもん。仕方ないよ」

 夏休みが残りわずかな中、学校に来ていることに疑問を呈する加奈ちゃんとそれを宥める結華ちゃん。

「学校に来ただけで偉くない!? てか、朝起きただけで偉いよね!?」

「偉い偉い。でも、みんなに会えたのは嬉しいんでしょ?」

「それはもちろん! ……そっか、今日は模試を受けに来たんじゃなくて、みんなに会いに来たって思えばいいんだ!」

「模試やる気出た?」

「それはあんまりだけど、さっきよりは! ……そういえば、みんなは何科目受験するの?」

「私は共テで使う予定なのは国語と英語の2科目だけなんだけど、今回の模試は世界史と数Ⅰと生物基礎、化学基礎も受けるから……6科目かな?」

「ユイユイ偉いわ……」

 今回の模試はマーク模試で、本番と同じように2日に分けて行われる。
 滑り止めで受験する大学で必要教科が違っている場合には、志望校判定をするために受験する科目が増えてしまうけど、基本的には本番で使う科目だけの受験でOKだから、何教科かしか受けないという人もいる。
 
「アタシは国語、数学Ⅰ、英語、日本史、倫理、地学基礎、化学基礎だから7科目」

「うちも7科目。地学基礎じゃなくて生物基礎だけど」

「私は数学がⅠAの受験でⅡBも受けなきゃだから8科目。理科は加奈ちゃんと同じ」

「さすが咲空ちゃん……文系で数ⅡBとか死ぬわ……」

 そして、試験開始十分前になるとクラスのほとんど全員が登校し、試験監督の先生がやって来た。
 

「──おはようございます。皆さん充実した夏休みを過ごせているでしょうか?」

 今日の模試の試験監督は賀茂先生みたい。

「まだ模試の開始時刻ではありませんが、回答用紙と受験シートの冊子を配るので、受験シートの記入が必要な欄と裏面の志望校記入欄に記入を始めてください。回収は昼休みなのでそれまでに記入をお願いします」

 荷物を廊下に出して指定された席に移動し、配布された受験シートに名前や生年月日を記入、マークしていく。志望校は7校まで判定を出せるみたいだから第一志望、第二志望……と記入し、挑戦校としてレベルの上の大学、安全圏の大学と記入していく。

 ──よし、こんな感じかな。
 時間は……少し休憩するとちょうど試験開始の時間になりそう。最初は地歴公民の第一回答科目。

 今回の模試でどこまで出来るか……頑張らなきゃ。








「──では、始めてください」






 











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