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6章 全ての始まりと終わり

60 全ての終わり②

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 脱走していたレイラとサリー嬢を連れて城に戻ると、大勢の兵士が待機していた。
 陛下が指示しておいてくれたみたいだね。
 レイラには大切な話があるし、サリー嬢だけ引き渡したけど………すっごくキラキラいや、、ギラギラした目で見られた。
 城壁で発見した時も変?だったし、なんか相変わらずって感じだった。

「それで、私はどこに連れていかれますの?」

「さて、それは着いてのお楽しみ。 それと、、その口調やめたら? 無理してない?」

 相変わらずなサリー嬢に対して、レイラは諦めたみたいに静かになった。まぁ、自分も兵に引き渡されると思っていただろうから何故、サリー嬢だけなのかと不振に思っているみたい。

「べ、別に無理なんかしてませんわ」

「そう?」

 ………レイラは、、僕もだけど、平民とか一般市民としての記憶とかの方が多いだろうし、あった時かなだけど、結構無理がある令嬢言葉に聞こえる。


「───こちらです」

「ありがとう」

 僕とレイラを目的の部屋に案内してくれた兵にお礼を言う。
 僕が二人を回収?しに行っている間に陛下、父様をはじめとする執務室にいた面々にはカイル兄様がいる部屋に移動してもらった。
 カイル兄様は魔術にかかってるし、犯罪行為はしていないということから城内の一室に隔離されていた。そのまま帰すのは問題ありだったからね。


 ──── コンコンコン

「ラストルです。ただいま戻りました」  

 ────タッタッ、ガチャッ

「おぉ、ラストル早く入ってくれ」

「は、はい」

 まさかの国王自らのお出迎えでした。
 部屋の中で父様は額に手を当てており、アルは笑っていた。 他の面々は困り顔。

「レイラ! 大丈夫か!? 変なことはされていないか!? この、、君の妹が何かしたのか!?」

「………さて、ラストル。これをどうする?」

「ラストル、元に戻るのか?」

 僕と一緒に部屋に入ってきたレイラを見つけた途端に声をあげ、イルに厳しい目を向けたカイル兄様に対して皆が心配そうな目を向ける。


「はい、、カイル兄様。レイラ……嬢はお好きですか?」

「もちろんだ。愛しているに決まっているだろう!」

「レイラ嬢は? カイル兄様をどう思っていますか?」

「こ、こんな人目のある所で……! し、知りませんわ!」

 うん、脈ありかな?
 何をしているかって言うと、見ての通り二人の想いの確認。別に人前じゃなくても良いんだけど、変に誤魔化されちゃうと嫌だし。
 あと、レイラが使っている魔術は多分、術者では解くことが出来ない類だ。精神系魔術は分かっていないことが多いけど。まぁ、その場合、解くために重要なのは被術者の精神力。
 カイル兄様の魔術が解けないのは、〝嫌われたくない〟って想いが強いから。
 だから、レイラに嫌われてないって分かることで魔術に隙ができてアルが解術しやすくなる………と思うんだよね。

「レイラ嬢? 正直になって大丈夫ですよ」

「でも、わたくしには………」

 ………これもカイル兄様の魔術だけが解けない要因の一つ。
 呪いの発動者であるレイラは自分が罰を与えられていることをずっと分かっていたはずだ。だから、自分が成した呪いであろうと、自分の願いが果たされないと絶望していたのだろう。
 でも、まっすぐな好意を向けてくれていたカイル兄様に少しの希望が生まれて、無意識に魔術を強くしてしまったんだと思う。

「僕が信じられませんか?」

「………わたくしはカイルが好きですわ」

 よかった。
 最後の方はかなり小さな声になってしまったけど、カイル兄様にはしっかりと聞こえたみたいだし。すごく嬉しそう。


「 ───アル、お願い!」

「了解した!」


 眩しい光が部屋を満たす。
 


「 ─── カイル兄様、大丈夫ですか?」

「ラストル?」

「イル、こっちに来てくれる?」

 「え、えぇ」
 
 イルに悪いし、本当はしたくないけど、イルと話してもらうのが解術出来たか確認するのに一番だから………。

「いりす……嬢? っっ、申し訳ありませんでした!」

「い、いえ」

「カイルっ!」

 父様や母様にもカイル兄様が元に戻ったのが分かったみたいで、カイル兄様を抱き締めていた。カイル兄様は何がなんだか分からなくて、少し照れてるけど。

「ラストル、なぜ今回は成功したのだ?」

「アル! ありがとう、、体調は大丈夫?」

「あぁ、それよりも……」

 僕はアルに今までカイル兄様の魔術が解けなかった理由と、なぜ解術前にあんな話をしたのかを話した。
 アルだけでなく、部屋にいる全員が僕の話に耳を傾けていた。まぁ、グレンとトーマスは分かっていそうだったけど。


「  ───レイラ?」

「っっ、か、カイル………」

 レイラはかなり不安みたいで、今にも泣いてしまいそうだ。

「君がしたことはいけないことだし、許されないことだと思うけど、私の想いは消えないよ?」

「ほ、本当?」

 うつむいていたレイラが顔を上げる。

「もちろんだよ」

 レイラは顔を手で覆いながら泣き出してしまった。
 それをカイル兄様が優しく包み込む、、その光景を見ていたら呪いの鎖が切れた音が聞こえたように感じた。


「 ─── イリス、ラストル、、いいえ、ルミティフィーネ、ファースラントス。今までごめんなさい……。許してほしいなんて言わないわ。私の自己満足でしかないと分かっているけど、謝らせてちょうだい」

「………もういいよ、レイラ。僕達同様に君も苦しんできたんだから」

「そうね、ラスの言う通りだわ」

 少し前に絶対に許せないと思っていた感情は、初めて見たレイラの本当の笑顔と、謝罪をした時の自分の罪を見つめる、淀みが消えた桃色の瞳を見ていたらかなり薄くなってしまった。
 なによりも一番の被害者であるイルの嬉しそうな顔を見たら、自分一人がいつまでも憤っているのも違うように思えた。


「イリス嬢、私も本当に申し訳なかった。何の罪もない貴方を……」

「謝らないでください、、お義兄様」

「そうですよ、カイル兄様。僕はまだ怒っていますけど、イルに免じて許して差し上げます」

「ありがとう、ラストル。………それで、ルミティフィーネとファースラントスというのは……?」


「プッ……ハハハハハ」

 一人だけ訳が分からないと言った様子のカイル兄様が可笑しくて笑ってしまうと、それにつられて部屋にいた全員が笑いだした。



 あぁ、本当に終わったんだね















~~~~~~~~~~


 読んでくださりありがとうございます!
 いよいよ次回、最終話となります。
 初心者の拙い作品にここまでお付き合いくださった皆様、本当にありがとうございました!!





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