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6章 全ての始まりと終わり
57 全ての始まり③
しおりを挟む「 ────以上がファースラントスとルミティフィーネとレイラ、、、ラストル様とイリス様そしてレイラ様に関する全てでございます」
グレン殿の話を聞いた私は言葉を失った。
父上やレイ伯爵夫妻も同じようだ。
ラストルやイリス嬢、グレン殿にトーマスまでもが神だなんて………。
それに、、この話を聞いてしまうと、レイラ嬢を完全な悪とするのは違うように思えてしまうな………。
私はソファで横になっている友人を見る。
レイ伯爵以外はラストルとイリス嬢、レイラ嬢に前世があるということも知らなかったようで、私と同様かなり困惑しているようだ。
………父上は国家元首として最低限の情報は聞いていたみたいだが、、
グレン殿の話ではラストルは今、精神世界でこの世界の最高神ライナステフィアーネ様にお会いしているらしい。
「グレン、いや、グレイトス様、ラストルはどうすれば目を覚ますのでしょうか」
「旦那様、どうか今まで通りにお話しください。………ラストル様はライナステフィアーネ様とファースラントスにお任せする他ございません。私たちでは傷が癒せませんので、このまま時を止めておくしか」
今、ラストルはトーマスが神としての力と共に〈闇〉の魔術を使って時を止めているらしい。人間ではいくら優れた〈闇〉魔術の使い手でも時を止めるのは不可能とのことだ。
「そんなっ、私もライナステフィアーネ様にお会いできませんか?」
「ルミティフィーネ、、いえ、イリス様、どうかご辛抱ください」
ラストルを見つめるイリス嬢の目から涙が落ちる。
その瞬間、ラストルの体が光に包まれた。
私が〈聖〉の魔術を使った時の光よりもはるかに眩しくて神々しい、、暖かな光が ───
――――――――――――――
「さてファースラントス、、時間を止めてあるとは言っても、ずっと時を止めておくことはできないわ」
「分かっております」
今はトルマトス、、〈闇〉の魔術を使えるトーマスが時を止めているんだろうけど、神の力でもそんなこを無限に出来るわけではない。
「あぁ、その前に大事なことを忘れていたわ。……今回は彼女の呪いに終止符を打つことができるかもしれないの」
え?
でも、絶対的な罰を受けているから、呪いが果たされることはなくて、終わることもないはずじゃあ、、
「えぇ、そうよ。……でもね、罰がなければ本来は引き合っていた魂というものがが存在するの。彼女の呪いは “愛されるまで滅びない” 。初めから呪いというには怨嗟がなく、切望に近いものだったわ。 だけど、人一倍の孤独を味わった彼女の怨念はそれを呪いとしてしまったの」
ライナステフィアーネ様の瞳は悲しげに揺ている。
……僕は始まりの記憶を思い出して彼女を憐れだとは思っても、許す気にはなれない………。
「……本来は引き合っていた魂というのは?」
「貴方も分かっているのではないでわないかしら?」
「……カイル兄様」
「えぇ、彼は彼女が受けた罰によってその恋情を失うはずだったの……なのにそうはならなかった」
「カイル兄様だけ魔術が解けなかったのはその影響ですね?」
「そう、もともと魂に刻まれた罰の強制力にまで打ち勝った程の運命。魔術などで増幅されては無理もないかもしれないわ」
カイル兄様はアルがどんなに〈聖〉の解術をかけてもレイラ様に懸想し続けていて、、狂っているように思えるほどだった。
「では、呪いに関してはあの二人の想いの強さを信じましょう」
「そうね。それで、貴方についてだけど ────」
「僕はルミティフィーネ、、イルが無事ならそれで構いません」
いくら時を止めていても、いつかは限界がくる。
さっきのライナステフィアーネ様の様子から察するにもう長くは時間を止めておけないんだろうね。
「まずは話を聞きなさい。貴方の傷を癒す方法ですが、“ ” になる気はありますか?」
「…………」
ライナステフィアーネ様の口から出た言葉の意味を理解するのに少し時間を要した。
ライナステフィアーネ様がおっしゃった事がもしも可能ならば、魔力が分散してしまうとしても致命傷レベルの傷を治すことは出来るだろうけど………。
「どうかしら?」
「そんな事が可能なのですか?」
「ふふっ、出来ないなら最初から言わないわ」
「でも、そうしたら今のイルと一緒に過ごすことは出来なくなってしまいますし、貴女もっっ」
「あらあら、私のことは気にしなくていいのよ? もう十分に満足してるから。それに、ルミティフィーネと過ごしたいのなら “ ” になった方がいいわよ? よく考えてみなさい?」
…………そういうことか、、
今まで人間への転化について深く考えなかったけど、冷静に考えたら………。
「………貴女が本当にいいのなら、お願いします」
「えぇ、あとは任せたわよ? しっかりやりなさい」
「はい!」
真っ白な空間を神々しい光がうめつくした。
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