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6章 全ての始まりと終わり

53 会場入り

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「父様、母様、お待たせしてしまいすいません」

「大丈夫よ……ラストルもイリスちゃんもよく似合っているわ~! ね、ライル」

「そうだな」

「「ありがとうございます」」

「母様と父様もとてもお似合いです」

「あら、ありがとう」

 イルと一緒にエントランスに行くと、父様と母様がすでに待っていたんだけど、、さすが“シャインの守護太陽”と“聖銀の星”…………。イルは固まっちゃってたよ、、
 ちなみに、“黄金の輝剣カイル兄様”はレイラ様をエスコートするためにサン侯爵家に行っちゃった。

「さて、それじゃあ行きましょうか」


 ───母様の言葉で外に出るとグレンが馬車を用意して待っていた。
 グレンはやっぱり……。いや、今は目の前のことだ。

「皆様、馬車の準備はできておりますのでいつでもお乗りください」

「あぁ、ご苦労だったな」

 グレンは僕達4人が馬車に乗ったのを確認してから御者台に向かった。



「───ラストル、今日は大丈夫そうか?」

 しばらくして馬車が動き出すと、父様が腕を組みながら僕の顔をうかがってきた。

「はい、一番大変なのは解術を行うアル……バート殿下ですし、僕がするのはそのサポート程度ですので」

 まぁ、レイラ様との衝突は避けられないけどね。

「それでも気を付けるのよ?」

「母様、分かってます。イルも心配しないで」

 母様もイルもまだ不安そうだったけど、そこからは馬車に揺られながら明るい話をした。




――――――――――――――――




「レイ伯爵ご夫妻、ライル様、ローズ様。ならびにレイ伯爵令息ラストル様、サン侯爵令嬢イリス様、ご入場!」

 入場者を知らせる衛兵の声を聞きながら王城のパーティーホールに入る。

 …………めっちゃ見られてない?
 イルも顔には出さないけど自分たちに向かってくる視線の数に驚いてた。僕とイルは父様と母様の後ろなのにすごい視線を感じる。

「ふふっ、二人とも落ち着きなさい」

 母様の穏やかな声に僕とイルは前を行く母様を見る。
 ………父様と母様は僕達よりも多くの視線を受けているのに、とても落ち着いていて、自然な笑顔を浮かべてる、、人からの視線に慣れてるのかな?

「ラストル、慣れだ」

 あ、やっぱりそうなんだ。
 父様は悟りを開いたように空中の一点を見つめながら僕の心の中での問いに答えてくれた。
 ………ホント、父様に対するイメージはこの数年で大分変わったなぁ。前は冷たくて厳しい人だと思ってたのに。

「ラストル様~! お待ちしてました!………その方が学校で言っていた方ですかぁ?」

 急にサリー嬢が駆け寄ってきたけど、、パーティーでも学園での態度でいるなんて…….イルを不躾にジロジロと見てるし、、

「……こんばんは、サリー嬢。えぇ、僕のパートナーのイリス様だよ」

「はじめまして、イリス・サンと申します」

「そうですか………。でも、まだ学園に入学していない人を連れてきていいんですかぁ?」

「えぇ、国王陛下より許可をいただいているので」

 原則として、社交界デビューするのは学園入学後になってるけど、特別な理由がある場合は国王の許可をもらうことで可能なんだよね。
 まぁ、“学園入学後”っていうのは学園で礼儀を学び、他者との交友関係を築いてから、だてだけなんだけどね、、
 イルが礼儀正しく挨拶したにも関わらず、自己紹介もしないサリー嬢は参加資格があるのかな?


「───私の息子達に何かご用かしら?」

「あっ、はじめまして! 私、ミスト男爵家のサリー・ミストです! ラストル様とは学園で───」

「ごめんなさい、ミスト男爵令嬢? 私は何か用があるのか聞いたのだけど?」

 うわぁ……母様、怒ってる?
 星が輝くような笑顔なのに、背後では炎が揺らめいてる……。
 母様が〈火〉属性の魔力だからか……?
 
「っ!! な、何でもありません……失礼しますっ」

 サリー嬢は母様の圧?に負けて走り去っていった。

「………学園の教育は随分と質が悪くなったようね」

「仕方がありません。ほとんどの教員がレイラ様の魔術に侵されていていて、まともな授業がありませんでしたから」

「───ラストル、パーティーの参加者には、多くの〝高位属性〟の魔力保持者がいるようだが……」

「はい、僕も驚きました。学園では〝高位属性〟はトーマスだけで、アルとトーマス以外は〝基本属性〟だったのですが、、」

 パーティー会場に入って目に入った貴族達の中には〈氷〉属性や〈雷〉属性、〈植物〉属性といった〝上位属性〟の色の魔力をまとった人が複数人いた。
 でも、〝高位属性〟のうち、〈光〉属性と〈闇〉属性の人はいないみたいだけど。
 
「ラス、魔力の属性もそうだけど、量が多くない?」

「うん……父様、このパーティーの後でこの国での魔術について少し調べたいです」

「そうだな、、私も協力しよう」

「ありがとうございます」

 やっぱり、世界が違うと法則とかも違うのか?
 
「───ラストル、私とローズは挨拶に行ってくるから、学園の友人達と話してくるか?」

「そうですね……。イルと一緒に行ってきます」

 イルに興味を持っていた学園の人達に会わせるのは不安だけど、イルが一人になっちゃうし、そろそろサン侯爵家の人達とカイル兄様が会場に入ってくるだろうしね。





~~~~~~~~~~~~


 一応、魔術の設定についてまとめておきます!!

 〝基本属性〟
            青→〈水〉属性
            赤→〈火〉属性
            緑→〈風〉属性    
        黄色→〈土〉属性  
        透明→〈無〉属性        
魔術を使える人のほとんどはこの5つのいずれかで 〈無〉は魔力の見えない人。
 
 〝高位属性〟
         水色→〈氷〉属性
 オレンジ→〈雷〉属性
         茶色→〈植物〉属性
             白→〈光〉属性
             黒→〈闇〉属性           
 氷は水、雷は風、植物は土の〝上位属性〟と呼ばれている。
 持っている人の数が少なく、使える者はほとんどいない。
 上位属性は基本属性でも才能があれば習得出来る。
 上位属性の者は基本属性を使えないが、上位属性を使えるようになった基本属性の者は二色が混在した色になる。
 
 〝特殊属性〟 
             紫→〈空間〉属性
         金色→〈聖〉属性             
 魔力を持っている人がまずいないため、使える人は歴史上でも数えるほど。

※魔法”ではなく“魔術”と表現しているのは魔術の定義が「根拠や理論に基づいて、それを行使することで起こる現象」、魔法の定義が「現実ではあり得ない不思議なことを起こす力」となっており、作中の世界では理論が確立しているから。







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