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4章 学園〜対策〜

38 イルの怪我

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 今、僕は父様とグレンと3人でイルと約束した部屋にいる。
 もうすぐ来ると思うんだけど……………

「あっ、、いい忘れていましたが、〈空間〉属性魔術の瞬間移動は離れた場所を魔力で繋いで移動するという魔術なので、イルが来る直前に紫色の魔力が集まると思います」

「分かった」

「離れた場所を魔力で繋げる………不思議な力ですなぁ」

「そうだね」

 本当に凄い魔術だよね、、
 イルが何事もなく、無事に来られるといいけど…………


「あっ!」
「ん………!?」
「ほぅ…………」

 しばらくすると、何も無かった所に紫の魔力が集まってきた。

「うぅ…………………」

「イル!」

 すぐに魔力が集まってた中心にイルが現れたけど、イルは痣だらけだった。
 一体何があったんだ……!?

 すぐに駆け寄って倒れそうになるイルを支え、側にあったソファーに座らせる。

「大丈夫!? …………何があったの!!?」

 おそらく、レイラ様に殴られたんだろうけど…………今までこんなことなかったのに………!

「イリス嬢、大丈夫か?」

「ラス……レイ伯爵……少し痛いですが、大丈夫です」

 ───これは、、大丈夫じゃないね。
 我慢強いイルが『少し痛い』って言うってことは相当酷いはずだ。

「イル、ここにアルバート殿下を呼んでもいい?」

 アルの〈聖〉属性魔術は、傷付いた者を癒せるから怪我を治せるはずだ!

「うん……………お願い出来る?」

「父様…………」

「グレン、すぐにアルバート殿下をここにお連れしなさい」

 父様に許可を取ろうと思ったけど、無言で頷くとすぐに指示を出してくれた。

「─────サン侯爵家を出る準備をしていたら、急にレイラ様が来て『ラストルはもう、貴方のことを何とも思っていませんわ! つまり、私が何をしてもいいってことですわ………ねぇ?』って言って………」

「…………ごめんね、、僕がもう少し気を付けて話していればよかったのに……」

 レイラ様は僕に執着しているみたいだから、僕に距離を置かれないよう、イルに手を出してなかったのか……………。
 僕がもう少し自我を残した風な演技をしていればっっ………!


 ──────バタンッ


「ラストル! 一体何が!?」

 グレンが部屋を出てそれほど経たないうちにアルが来てくれた。

「アル! 彼女の怪我を治してくれないか!?」

「っっ! 任せてくれ!」

 アルはイルを見て息を飲んだ。
 イルは顔にまで痣があって、痛々しい…………
 すぐにイルを黄金の光が包む。

「イル、大丈夫?」

「えぇ…………。これが〈聖〉属性の魔術、、凄いわね……!」

「アル、ありがとう!」

「ありがとうございます。アルバート様」

  アルはレイラ様の魔術の解術はそれなりにしてきたけど、癒しの魔術は使ったことがないはずだったのに、イルの痣は跡形もなく消えた。
 よかった…………!

「いや、魔術が成功したようでよかった………………。貴女はサン侯爵令嬢のイリス嬢だろうか?」

「はい、初めましてアルバート殿下………サン侯爵家の次女、イリスと申します」

「アルバート・シャインだ。よろしく頼む」

 そういえば、アルはイルが魔術を使えることを知らないよね?
 イルの属性は分かっちゃっただろうし…………どう話そうかな、、、

「…………急でごめんね、今日からイルをこの屋敷で匿うことになったんだ……あっ、、 なりました」

 ヤバい………父様とグレンの前なのに、普通に話しちゃってた………!

「今さらだろう、、父上とレイ伯爵も仲が良ろしいのだから、気にするな!」

 黙って、父様の方を見たら苦笑された………。
 何故!?

「…………分かった」

「───アルバート殿下、今後のことで話がありますので、少々お時間をいただいても?」

「はい、大丈夫です」

「ラストルはイリス嬢を部屋に案内しなさい………出来るだけ、人に会わないようにな」

「分かりました」 



――――――――――――――――



 アルと、父様と、グレンが執務室に移動して、部屋には僕とイルだけが残った。

「────イル、本当に大丈夫?」

「ふふっ、ラスは心配性ね」

「そりゃあ、心配するよ」

 君はに、数えきれない程に傷付いてきたんだから……………。心も体もね。

「それにしても、〈聖〉魔術は凄かったわね」

「本当だよ…………。アル、癒しの魔術はさっき初めて使ったんだよ?」

「……………嘘でしょ?」

「………本当」

「「………………」」

 マジで驚きだよね?
 初めて使ったのに、成功なんて、、
 まぁ、成功すると思ったからこそ、アルを呼んだんだけど。

「………………そういえば、今からオパールちゃんとレイ伯爵夫人に会いに行ってもいいの?」

「う~ん………。大丈夫だけど、イルは疲れてない?」

「私は大丈夫よ」

「なら、いいけど…………体調が悪くなったらすぐに言ってね?」

「ふふっ、分かったわ、、さっそく行きましょう!」

 ────よかった。
 さっきまであんなに酷い怪我をしていたのに元気だ、、
 痣だらけのイルを見た時は本当に心臓が止まるかと思ったからね……………。

 でも、イルがこの屋敷にいてくれれば確実に守れる……………!

 ─────もう、に辛い思いはさせないから……………!












 
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