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4章 学園〜対策〜
19 父の想い
しおりを挟むライル(ラストルの父)視点です。
~~~~~~~~~~~~
今日はラストルが学園の入学式に行っている。
もうすぐ帰って来ると思うのだが……………
────屋敷がおかしくなってもう4年、ラストルとは話す機会が増えた。
────────コンコンコン
「入れ」
誰だと思っていたらメイドだった。
やはり、目は虚ろ…………………胸が痛む
それにしても、珍しい。
普段、私が仕事をしている時間帯はグレンとラストル以外に執務室に来る者はいないのだが────
「先程、ラストル様がお帰りになったのですが、倒れられました」
「なに? 何があったんだ!?」
「その場にいらっしゃったカイル様とオパール様、レイラ様の話では『突然倒れた』と」
レイラ嬢? なぜレイラ嬢がいるのだ。聞いていないぞ。
グレンの方を見るが、グレンも知らなかったようだ。
「ラストルは今、どうしている?」
「お部屋にお運びしました」
「そうか……………………」
私は黙って立ち上がり、ラストルの部屋に向かう。
------------
──────ラストルは深く眠っていた。
全く目を覚ます様子がない。
仕事のせいでずっと側に居てあげることはできないが、時間があったらラストルの部屋に足を運んだ。
数日経ったがラストルは目を覚まさない。
ラストルに何が起こっているのだろうか?
-------------
3日目の夜、グレンと共にラストルの部屋に行くと、うめき声が聞こえた。
思わず駆け寄る。
「ラストル! 起きたか!? 痛い所はないか!?」
ラストルが起きたことに安堵したが、その後は驚きの連続だった───────
ラストルには前世があるのだという。
それも、たくさんの。
ラストルの話では、前世のイリス嬢は前世のレイラ嬢に何度も殺されたらしい。
自然と険しい表情になった。
それが近い将来、この世界のこの国で起こるかもしれないと思うと身震いがする。
そしてラストルは、総ての人生で大切な人を守れずに死なせてしまったらしい……………
俄には信じられない内容だったが、『記憶』に関する記録は残っているし、何よりラストルの表情が苦しみや無力感のようなもので満ちている。
〝ラストルの人生は大変なものになる気がする〟とは思っていたが、ここまで暗いものだとは……………
今も、無理にいつも通り話している。
急に恋人を喪った記憶がいくつも甦ったのだから、辛いだろうに……………
しかし、レイラ嬢が使っている魔術を解く方法がわかったのは朗報だ。難しそうだが、ラストルも決意が漲っている。
私も出来ることをしよう!
その後、ラストルになぜ倒れたのか聞いたのだが…………
レイラ嬢にそこまで常識がないとは。
つい、考えが口に出てしまった。
「旦那様、とりあえずはラストル様を休ませて差し上げましょう。ラストル様も急に大量の記憶が頭に入ってきたのですから、色々と整理する時間が必要でしょう?」
ラストルはグレンの言葉で堪えきれなくなったのか泣き出してしまった。
『何度も、大切な人を死なせてしまい辛かったな……………大丈夫だ。今世では、私も助けよう。過去のお前の分までイリス嬢を守って幸せにすればいい』
やはり、かなり溜め込んでいたようだ。
私は優しく抱き締めて頭を撫でる。
思えば、こうして息子を抱き締めるのは何年ぶりだろうか……………
いつの間にか、こんなに大きくなっていたのだな────
ラストルはそのまま寝てしまったが、翌日、この世界の記憶がない者でも魔術が使えるのか調べたいと訪ねてきた。
私も直ぐに行きたい、仕事が残っているのでグレンと先に行かせる。……人目につかない広い場所という事で地下室に。
残っていたのは少しだったこともあり、直ぐに終わった。
─────私が地下室に入ると、ラストルが〈火〉の魔術を使っていた。
炎がラストルの周りのあちらこちらに出現する。
凄かった。魔術を見るのは初めてだったが、本当に不思議で美しい力だった。
『旦那様、いらっしゃいましたか。…………今はラストル様が前世の感覚を取り戻さなければと練習をなさっています』
グレンから魔力の説明と、それを話した時のラストルの様子を聞く。
………………あの子は、後で話を聞かないと、また思い詰めてしまうだろう。
ラストルが練習を終えたら、グレンと共に魔力を動かす練習をしたが、
ラストルが丁寧に教えてくれたお陰で、意外と早く出来た。
ラストルは『早い』と言っていたが、おそらくラストルの教え方がよかったのだ。
さらに練習を重ねたが、正直に言うと楽しくて視界の変化に気が付かなかった。
グレンも同じだったみたいだ。
────────珍しい
魔術は思っていた以上にたくさんの種類があるようだ。
それにしても〈雷〉か……………使えるようになってみたいものだ。
〈空間〉属性と〈聖〉属性は大変に稀な属性のようだな。
前世のイリス嬢はそれだけ大きな力を持っていながら、優しさのあまり殺されてしまったのだ。
今世の彼女を生が幸福なものとなるよう、ラストルと共に支えていこう。
そうして、魔術の練習は終わった。
───────そういえば、ラストルはイリス嬢のことを〝イル〟と呼んでいたな……………!
二人はたくさんの人生で出会い、想い合っていたのに一度も結ばれなかったのだ。
今世では、二人で結ばれ、一緒に幸せになってもらいたい!!
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