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XX 僕と彼女の過去 XX
13 甦る記憶①
しおりを挟む残酷描写がありますので、
苦手な方はご注意下さい。
~~~~~~~~~~~~
僕の意識は暗転した。
その、暗い闇の中で昔の記憶を見た。
これは、、僕の前世だ、『彼女を守れ!』と叫んだのは、過去の僕たちだ。
彼女を、過去のイルを、守れなかった僕たちの声だ。
前に夢に出てきた青年と光景に見覚えがあったのも、そのはずだ。
彼は僕自身で、あれは僕が経験したことなのだから!
『僕が、どうなろうとも、彼女を守るんだ!』
これは、何度も彼女を死なせてしまった僕の、覚悟の言葉だったんだ!
次の人生では、必ず彼女を守ろうと覚悟したんだ!
------------
過去の僕の一人は普通の村人だった。
ただし、その世界には魔術があったんだ。
その時の彼女は、大変珍しいとされる〈空間〉の属性の魔術が使えた。
〈空間〉属性は物を〝別空間〟に収納したり、一定距離内での瞬間移動ができた。
ちなみに僕は〈火〉の魔術が使えた。
優しい彼女は他の人の役に立ちたいと、4歳の頃から魔術研究所の研究に協力していた。
しかし、彼女が姉のように慕う6歳年上の少女が曲者だった。
少女は彼女を誉め、応援する一方で、他の者に彼女の陰口をあることないこと囁いた。
──────それが12年も続いた頃、事態が動いた…………!
僕と彼女はその2年前、僕が16歳、彼女が14歳の頃に付き合い始めていた。
恋人として、彼女を守りたかったのに……………守れなかったっ!
僕以外の人が虚ろな目をして女、22歳になったあの少女を見つめるようになった時、もっとしっかり忠告していたら、僕の心がもっと強かったら彼女は死なずにすんだだろうに!
彼女の心は綺麗すぎた、、、、姉のようだと慕う女が裏切って自分を殺すのなんて想像できないだろう。
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──────終に彼女は孤立した
僕も、あの女の言うことが正しいように思うようになってしまった。
「そんな事はない、あの女の策略だ」と思いつつも彼女に厳しい目を向けてしまった。
……………あの時の彼女の寂しそうな顔は忘れられない
そして、彼女の周りにあの女しかいなくなったある日、あの女が眠っている彼女を魔術研究所の研究員に与えられている屋敷に連れて行くのを見たという話を聞いた。
一緒にいた男と、「親切なあの人に迷惑をかけるなんて………」と話していたが、少しずつ正常な思考と自分の存在についての記憶が戻ってきた。
僕は過去にも彼女と一緒にいたんだ! 別の世界で────
そして、守れなかった!!
僕はたまらずに駆け出した。彼女が連れていかれたという屋敷に! 彼女を救うために!
屋敷全体を探しても見つからないと思っていた所に、あの女が現れた。隠し扉から。
急だったために反応が遅れ、背中に矢を受けてしまったが、すぐに〈火〉の魔術をぶつけた。
彼女が感じた痛みは、皆から厳しい視線を向けられた彼女の心の痛みはこんなものじゃないはずだ!
女は、死ぬ前に「貴方だけは、いつも私を見てくれない」と言った。
僕や彼女と同じように、生を繰り返す者だったのか─────
……………彼女は無事だろうか?
僕は地下へと続く階段を駆け降りた。
背中から、血が落ちる。
──────やっと彼女を見つけたのもつかの間、僕は絶望した。
彼女の心臓は鼓動を止め、涙のあとが残る目は固く閉ざされていた。
身体がまだ温かいことから、少し前まで彼女が生きていたことがわかる。
もう少し早ければ───────
涙がこぼれ落ちる。
手錠がつけられた彼女の腕には、機械から伸びる管につながった鋭い針が突き刺さっていた。
あの女に何をされたのか分からないが、辛かっただろう─────
僕には彼女の冷たくなっていく身体を抱きしめるしか、できなかった。
「ごめんね………
また、『前』のことを忘れてしまっていて…………… 君を、守れなくて…………」
僕はは目に涙をこぼしながら、優しく、少女に語りかけた。
赦されることじゃないことは分かっている……………!
僕は何度も彼女を裏切り、また彼女を死なせてしまったのだから。
───────それでも僕は、彼女を守りたいっ!
彼女に、幸せになってほしいっ!
「『次』の世界では絶対に君を守るから、僕がどうなろうと、君の、笑顔を守るから………!」
僕の背中から流れる真っ赤な血は止まることなく、地下牢の床を赤く染めていった。
僕は薄れ行く意識の中で願う。
「『次』の君の生が幸せなものでありますように………」
彼女にこんな辛い試練を与える神なんて、信じられないから、僕が守るしかないのだ
次の世界では今までの記憶を忘れずにいたい。
………………彼女が死ぬ直前に思い出すのではなく、手遅れになる前に、その先で起こることを予想して防げるように。
─────そして、その世界での僕は死に、〝ラストル〟になった。
彼女、イルを守るために記憶たちを取り戻して────────
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