上 下
10 / 62
2章 謎の記憶

9 屋敷の異変と息子に思うこと

しおりを挟む



  ライル(ラストルの父)視点です。


~~~~~~~~~~~~~


 私はレイ伯爵家当主、ライル・レイ。
 今は私付きの執事であるグレンと仕事をしている。

 私の仕事は領地に関することで、領地を持つ貴族家当主なら、誰でもすることであるが、我が伯爵家は普通の領地よりも広大で、領民も多いのだ。

 それ故に仕事が多く、日中は仕事詰めになってしまう………ここ数年、妻や子供達との時間がほとんど取れていない。


 ─────ん? 外が騒がしいな。


「グレン、今日は何かあるのか?」

「今日は奥様のお友達のサン侯爵夫人とご令嬢、イリス様がいらっしゃると聞いておりますが………御二人は先程いらっしゃったようなので別のことでしょう。少し確認して参ります」

 ────パタン

 グレンは部屋を出て行ったが………………何で、侯爵夫人とご令嬢がいらっしゃったと分かったんだ?
 私と一緒にずっとこの部屋にいたはずなのに………………

 ─────ガチャッ

 もう戻ってきたのか、、早いな…………

「どうやら、予定になかったサン侯爵家のもう一人のご令嬢、レイラ様がいらっしゃったようでございます」

「急にやってきたのか?」

「そのようです」

 いくら我が家よりも爵位が高いとはいえ、非常識ではないか?
 ……………レイラ嬢は13歳で今は学園にも通っているはずだから、マナーや常識は心得ているはずなのに、、


--------------


 ───────あの日から半年、
 レイラ嬢は時々思い付いたように突然来訪しているが、イリス嬢はあれっきり来ていないようだ。

 ………………あの噂は本当だったのだろうか?
 実は、サン侯爵家には姉ばかりを可愛いがり、妹を、罵っているという噂があったのだ。

 妻ローズの友人のいる家だし、ただの噂だと思っていたが、姉レイラ嬢のあの自由奔放な様子と誰もそれを窘めず繰り返している様子を見るに、本当のことのようだ。

 だが───数日前、ローズが「レイラ嬢はとても美しく、優しいご令嬢なのですよ」と言っていた。

 その時のローズの目はどこか虚ろで、様子がおかしかった。

 ───
「グレン、最近、屋敷の雰囲気がおかしくないか?」

「はい、奥様やカイル様、オパール様を含めたラストル様以外、全員がレイラ様をどこか惚けたような表情で見て褒め称え、イリス様を貶しております」

 …………ずっと私に付いているのに何でそんなに詳しく知っているんだ?

 まぁ、それはいいとして、

「ラストルはおかしくなっていないのか?」

「ラストル様はまともでございます」

 フム……ラストルから話を聞いてみるか、、



-------------



 少し前に私の執務室で、ラストルから話を聞いたのだが、ラストルの私と同じ紫の瞳はしっかりと輝いていた。

 …………私がグレンに対して思ったことと同じことを思っていいた。

 グレンが、ラストルの言ったことに対して、私達が分かっていることをラストルに伝えると共に確認してくれたのだが、ラストルの顔に「結構把握できているじゃないか」と書いてあった。

 やっぱり驚くよな~

 それにしても、ラストルが魔術という言葉を知っているとは………………意味は理解していないようだったが、魔術に関することは全て秘されているのに。

 私は父から当主の仕事を引き継ぐ時に魔術について教えてもらったが、別世界の存在にも、不思議な力の存在も当時は信じられなかった。

 まぁ、ちゃんとした記録が残っているから信じるしかないのだが、、、、


 ───────この度の屋敷の異変は魔術によるものだろう。身近でなかったために考えつかなかったが、魔術のせいだと考えると説明のつくことも多い。

「────グレン、ラストルと話していて魔術のせいだと考えるのが自然だと感じたのだが、お前はどう思う?」

「私も同じ考えでございますが、レイラ様がどうして魔術を使えるのか、どのような発動条件があるのか、という疑問が残ります」

「他の国には、別世界の記憶を持って生まれる者が稀にいるらしいが………」

「おそらく、明日にでもラストル様が報告を持ってきてくださるでしょう」

「明日は早くないか?」 

「年寄りの勘でございます」

 二人で笑ったが、今回の件は思った以上に大事かもしれない……………
 場合によっては国王陛下にご報告しなければ、、、、

 
 ───ラストルの人生は大変なものになる気がする………

 父として息子には辛い思いをしてほしくないし、よく分からない力のせいでおかしくなってしまった妻や子供達を見るのは心が痛む

 早く解決して元の屋敷に戻したいものだ………

 ………もう一度、魔術に関する記録書を読んでおくとしよう。



-----------



 ─────その日の夜、記録を読んで〝魔術耐性〟について知り、翌日のラストルの話を聞いて屋敷で起こっている異変の全貌が見え始めた。

 ………………ラストルがグレンの予想かん通り、次の日には異変の原因の鍵を掴んでくるとはな、、、、
 年の功か?

 〝魔術耐性〟………ラストルには、自分でも気が付いていない秘密があるのだろう。

 私は父として、息子を護りきれるだろうか?
 
 ………いや、あの子にはもう、私の守護が必要ないだろう、、、、その代わりに必要なものは『支え』だろう。

 困難になるであろうあの子の人生を父として支えていこうじゃないか!

 

~~~~~~~~~~~


 読んでいただきありがとうございます("⌒∇⌒")

 次は少し時が流れて、ラストルが学園に入学します!

 やっと序章が終わった(o・・o)/~

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

猫に転生したらご主人様に溺愛されるようになりました

あべ鈴峰
恋愛
気がつけば 異世界転生。 どんな風に生まれ変わったのかと期待したのに なぜか猫に転生。 人間でなかったのは残念だが、それでも構わないと気持ちを切り替えて猫ライフを満喫しようとした。しかし、転生先は森の中、食べ物も満足に食べてず、寂しさと飢えでなげやりに なって居るところに 物音が。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています

平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。 生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。 絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。 しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?

処理中です...