上 下
3 / 62
1章 出会い

2 イリスと本と乱入者

しおりを挟む


「それじゃあ、あとは子供同士で遊んでいらっしゃい」

 母様はそういって、フィアナ様と一緒に別の部屋へ行きました。

「兄様、イリス様、お庭で遊ぶのはどうですか?」

 解放感のある庭で一緒に遊べば、イリス様の緊張も解けると思います。

「ラストルお兄さま、オパールも一緒に遊びたいです」

「あっ、もちろんだよ。オパール」

 イリス様と早くお話がしたいと気が急いて、オパールのことを忘れてしまっていました。

 そこに兄様の声がかかります。

「じゃあ、行こうか」

「ハイ!」

「はい!カイルお兄さま!」

「は、はい……」

 やはり、イリス様は何かに怯えています。
 緊張ではないように思えるのです……

 話ながら歩いていたら、すぐに庭に着きました。
 イリス様も少し慣れたのか、先程までよりは自然に会話に参加できています。

 庭に出るとイリス様の綺麗な黒髪が光を受けて輝いていました。

「イリス様は普段どのようなことをしているのですか?」

 兄様が言っていたことを参考に話します。

「わ、私は普段、読書をすることが多いです。」

「そうなのですか! 僕も結構、本を読みます。 どんな本を読まれますか?」

「哲学書などです……」

「ずいぶん、難しい本を詠まれるのですね」

 7歳ということですが、随分大人びています。

「本か~ 私は学園の教科書か図鑑しか読みませんね~」

「オパールはおひめさまの絵本が好きです」

 カイル兄様とオパールも楽しそうに話します。
 カイル兄様はシャイン王国の王立学園の2年生で、普段は学園で勉強しています。

 シャイン王国の貴族は13歳になったら王立学園に入学し、貴族のありかたや礼儀作法、周辺国語、算術などを学ばなければなりません。

 カイル兄様は本をあまり読みませんが、教科書を本当によく読み込むので、成績は優秀です。
 あとは植物が好きで、植物に関する知識は学者並みです……

「イリスさま、てつがくしょってなんですか?」

「そ、そうですね、 人生・世界、事物の根源のあり方などを理性によって求めようとする学問、《哲学》の本でしょうか?」

「イリスさま、すごいです!」

「……っ、ありがとうございます!」

 なぜでしょう、イリス様は泣きそうになりながらお礼を言っています。

______________
 

 しばらく話していると、エントランスの方が騒がしくなってきました。何でしょうか?
 声がこちらに近づいてきます。

───レイラ様、お待ちください
───まず、お母様の所に

「ふんっ、こっちにイリスとレイ伯爵家の方々がいるのでしょう?」

 レイラ様とは、誰でしょうか?
 イリス様の方をみると、真っ青な顔で震えていました。

「イ、イリス様? どうなさったのですか?」

 僕はイリス様に駆け寄ります。

「レイラ様とは、イリス様の姉君でしたよね?」

 兄様の声が聞こえました。

「イリス様の姉君?」

 じゃあ何で、イリス様はこんなに震えているのでしょう?

 考えているうちに騒ぎが庭まできてしまいました。
 我が家のメイドの後ろにいるプラチナブロンドに桃色の瞳の少女がレイラ様でしょうか?

 メイドの顔には困惑がみられます。

「あぁイリス、そこにいたのね!」

 僕の隣でイリス様が震えました。
 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

御機嫌ようそしてさようなら  ~王太子妃の選んだ最悪の結末

Hinaki
恋愛
令嬢の名はエリザベス。 生まれた瞬間より両親達が創る公爵邸と言う名の箱庭の中で生きていた。 全てがその箱庭の中でなされ、そして彼女は箱庭より外へは出される事はなかった。 ただ一つ月に一度彼女を訪ねる5歳年上の少年を除いては……。 時は流れエリザベスが15歳の乙女へと成長し未来の王太子妃として半年後の結婚を控えたある日に彼女を包み込んでいた世界は崩壊していく。 ゆるふわ設定の短編です。 完結済みなので予約投稿しています。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

処理中です...