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プロローグ
貴女が好きよ
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幼なじみが好きだ。
ずっと遥か昔から、秘めてきた恋心。
きっと綺麗に聞こえるだろう。でも、私は、私の恋は、絶対にいけない事なんだ。
「小夏、おはよー」
軽く背中を叩かれた。今日は先に声をかけられた、嬉しい。ちょっとしたことでも頬が緩みそうになる。
「おはよ!果南……寝癖ついてら!治したろ!」
眠そうな栗色のくりくりした目、寝癖だらけで服装もだらしないのに、いい匂いがして不思議と不快感を感じさせない。私より8センチも低い身長は小動物のようで、加護欲をそそられた。
「んあー、ぐしゃぐしゃになるんじゃ」
「いつもぐしゃぐしゃでしょ。もー、可愛いのに身だしなみちゃんとしないんだから!」
まんまるとしたほっぺた。桜色のくちびる。
果南____彼女は、正真正銘可愛い女の子だ。
吉田果南は、独特な雰囲気を持っている。
誰にでも均等に優しく、穏やかで、いつも眠そうで、そして誰にも興味がない。
昔っから1人の空間を大切にしていて、私がこうやって隣に立てるのは、たまたま家が隣だったから。果南のおばさんから、どうにもだらしないうちの子の世話を見て欲しいと頼まれたという名義があるからだ。
私にとって果南はだらしないというか、いつもゆっくりとして落ち着いていて、どこか抜けていて、それがとても可愛くて……。いつ好きになったのかはわからない。
激しい劣情こそ罪悪感で押し殺されてしまい抱くことはできないが、そのあたたかい体を思い切り抱きしめて頬擦りがしたいと何度思ったか。
そんないかがわしいことを考えているとはつゆ知らず、果南は眠そうに雑談を始める。
「まじでねむいよー…昨日徹夜したからなあ」
「最近ずっとそうじゃない?何か悩み事でもあるの?」
「ちがうちがう、ハマってるゲームがあってさー…」
星屑のプリズム。最近流行っている乙女ゲームらしい。スチルが美麗だとか、システムが斬新だとか、乙女ゲームに関しては果南からいろいろ聞いていたが、ここまでハマっているのは初めて見たかも。
「そんな面白いの?私もやってみようかな」
「小夏はだめだよ。一ルートやったら飽きちゃうじゃん、あーでもやってほしいー仲間が欲しいーやっぱ買お?」
「どっちなの」
相変わらずのやり取りに笑ってしまう。
果南は寡黙でめんどくさがりなので、恋愛に疎いように見えて実はとんでも無く乙女だ。
以前も果南と同じ話をしたくて……というか気を引きたくて、何度か乙女ゲームに手をつけたが、自己投影できない上に色々な男に目移りするヒロインに冷めてしまって、結局1人だけ選んでハッピーエンドを迎えたら飽きてしまった。
「でも、今回は本当おもしろいからさー」
「どんなの?」
果南がスマホをぽちぽちして画像を探してくれる、可愛い。差し出されたのは、よくありがちなヒロインを囲うさまざまなイケメンたち。でも、意外にも食いついている自分がいた。
「可愛いね」
「でしょー?攻略対象がみんないいっていうか…」
「や、ヒロインが。果南に似てる」
「まさかの、そっち。似てないよ…はずいからやめてよ…」
くりくりしたヘーゼル色の瞳。どこか柔らかい小動物を思わせるヒロインに、果南の面影を感じた。
「やろっかな、このゲーム」
「えっ 嬉しいけど、なぜ……」
「果南動いてるみたいで、面白いし」
できれば果南を攻略する側がよかったけど、攻略対象になりきって疑似恋愛するのも悪くはないだろう。
そんな安易な気持ちで、星屑のプリズムに手を出した。
それが、歯車を狂わせるなんて知らずに。
ずっと遥か昔から、秘めてきた恋心。
きっと綺麗に聞こえるだろう。でも、私は、私の恋は、絶対にいけない事なんだ。
「小夏、おはよー」
軽く背中を叩かれた。今日は先に声をかけられた、嬉しい。ちょっとしたことでも頬が緩みそうになる。
「おはよ!果南……寝癖ついてら!治したろ!」
眠そうな栗色のくりくりした目、寝癖だらけで服装もだらしないのに、いい匂いがして不思議と不快感を感じさせない。私より8センチも低い身長は小動物のようで、加護欲をそそられた。
「んあー、ぐしゃぐしゃになるんじゃ」
「いつもぐしゃぐしゃでしょ。もー、可愛いのに身だしなみちゃんとしないんだから!」
まんまるとしたほっぺた。桜色のくちびる。
果南____彼女は、正真正銘可愛い女の子だ。
吉田果南は、独特な雰囲気を持っている。
誰にでも均等に優しく、穏やかで、いつも眠そうで、そして誰にも興味がない。
昔っから1人の空間を大切にしていて、私がこうやって隣に立てるのは、たまたま家が隣だったから。果南のおばさんから、どうにもだらしないうちの子の世話を見て欲しいと頼まれたという名義があるからだ。
私にとって果南はだらしないというか、いつもゆっくりとして落ち着いていて、どこか抜けていて、それがとても可愛くて……。いつ好きになったのかはわからない。
激しい劣情こそ罪悪感で押し殺されてしまい抱くことはできないが、そのあたたかい体を思い切り抱きしめて頬擦りがしたいと何度思ったか。
そんないかがわしいことを考えているとはつゆ知らず、果南は眠そうに雑談を始める。
「まじでねむいよー…昨日徹夜したからなあ」
「最近ずっとそうじゃない?何か悩み事でもあるの?」
「ちがうちがう、ハマってるゲームがあってさー…」
星屑のプリズム。最近流行っている乙女ゲームらしい。スチルが美麗だとか、システムが斬新だとか、乙女ゲームに関しては果南からいろいろ聞いていたが、ここまでハマっているのは初めて見たかも。
「そんな面白いの?私もやってみようかな」
「小夏はだめだよ。一ルートやったら飽きちゃうじゃん、あーでもやってほしいー仲間が欲しいーやっぱ買お?」
「どっちなの」
相変わらずのやり取りに笑ってしまう。
果南は寡黙でめんどくさがりなので、恋愛に疎いように見えて実はとんでも無く乙女だ。
以前も果南と同じ話をしたくて……というか気を引きたくて、何度か乙女ゲームに手をつけたが、自己投影できない上に色々な男に目移りするヒロインに冷めてしまって、結局1人だけ選んでハッピーエンドを迎えたら飽きてしまった。
「でも、今回は本当おもしろいからさー」
「どんなの?」
果南がスマホをぽちぽちして画像を探してくれる、可愛い。差し出されたのは、よくありがちなヒロインを囲うさまざまなイケメンたち。でも、意外にも食いついている自分がいた。
「可愛いね」
「でしょー?攻略対象がみんないいっていうか…」
「や、ヒロインが。果南に似てる」
「まさかの、そっち。似てないよ…はずいからやめてよ…」
くりくりしたヘーゼル色の瞳。どこか柔らかい小動物を思わせるヒロインに、果南の面影を感じた。
「やろっかな、このゲーム」
「えっ 嬉しいけど、なぜ……」
「果南動いてるみたいで、面白いし」
できれば果南を攻略する側がよかったけど、攻略対象になりきって疑似恋愛するのも悪くはないだろう。
そんな安易な気持ちで、星屑のプリズムに手を出した。
それが、歯車を狂わせるなんて知らずに。
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