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第39話 やっぱり
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夜明けを少し過ぎた辺りだろうか、大きなガラス窓から明かりが差すのが見える。白いレースのカーテンがその光を和らげて、部屋を優しい明るさに保っていた。ふと正面に視線を戻すと、蔓草の這う見事な装飾の為された天井が目に入る。
どうやら、今朝は寝坊したようだ。
宿とは違う、ふかふかの豪華ベッドに立派な調度品のある部屋に居た。ただし、出入り口はの扉には鉄の格子が嵌められ、檻のようになっている。座敷牢とか、幽閉用の部屋なのは想像に難くない。なんせ手枷をされている、足枷もだ。
寝ているうちか? 目が覚めなかったのか、私は? やばい鈍感さだな…… これはおっぱいのひとつも揉まれているに違いない……
それは冗談として、あれだ、食事に一服盛られたのか。宿のあの痩せた女将、やけにキョドって居たが、椿を誰かに売ったのか。いや、間違いなく教会だろう、ここ。無駄にでかいガラス窓に、白い漆喰の壁だもの、教会の街で糞どもがひしめいていた建物と同じ造りだ。よくも殺されなかったものだ。
服も寝巻きらしきものに変わっていた。ノーパンだよ。
そんな心許ない下半身が手伝ってか、尿意を催してきたので身を起こす。だって、寝起きだもの。
「※※※※※※※※※、※※※」
「うわっ!」
不意に声をかけられて、思わず悲鳴を上げてしまった。危なく、漏れてしまうところだ。
声に振り返ると、お仕着せで髪を引っ詰めたザ・メイドが居た。フリルなどの装飾が一切ない、病院の看護師を思わせる真っ白い衣装だ。顔を伏せ畏まっている態度に、遜ったものは感じない、完全なる職業メイドさんだ。椿の常識に当てはめると、秘書などが思い浮かぶ。その仕事に掃除が含まれるであろうメイドさんが、汚れの目立つ白い服を着るわけがないので、本当に看護師かもしれない。
「お手洗いはどこですか?『便所』『ください』」
いい歳してキモいかなと思いはしつつ、少しモジモジしながら訴える。ジェスチャーを交えた方が伝わり易いのだから仕方ない。
何処から持ち出したのか、尿瓶のようなものを手にする白いメイドさん。部屋から出す気はないらしい。
あまりの事に呆然としていると、ベッドの縁に腰掛けさせられた上で尿瓶を当て交われる。割と限界が近かった上、白メイドさんのまったく照れがない自然な動作に流され、そのまま致してしまった。尿瓶が陶器のような、中身の見えないものであったのが救いだ。
メイドさんは当たり前のように、股間を拭き拭きまでしてくれる。尿瓶を始末しに行くのか、歩くメイドさんが吸い込まれるように壁の中に消えていった。
「はぁ?」
内側に鉄の格子の付いた扉は無視して、壁から出ていった。通り抜けたのか?
思わず足枷を付けたまま跳ねるように移動して、メイドさんが消えていった壁に触れてみる。間違いなく、つるつるの手触りがする漆喰の壁だ。凄いな、異世界スキルか? それとも魔法だろうか? こんなのが暗殺者とかやってたら、どうやって防げばいいんだ。
まるで椿がそうするのが分かっていたように、隣に少し離れた壁からメイドさんが戻ってきた。
戻ってきたメイドさんは、最初に居た壁際に戻ると動かなくなった。まるで、自分は調度品です、お気になさらずにって感じで。
害はなさそうなので、放っておこう。
椿は自分の荷物を探すが、部屋のどこにも見当たらなかった。貰って半日も経っていないのに、もうポーション鞄を失ったのか…… しかしながら、お手製の綴じ本はもちろん、カミラの手紙も取り戻したい。取り敢えず、大人しく様子を見るか。下手に暴れると、取り戻す機会を失うかもしれないし。
さて、こうなってはやることもない、寝るかな。
再びベッドに寝そべろうとしたときだった、窓ガラスが割れて何かが飛び込んできた。白メイドが直ぐに駆け寄ってくる、その手には既に短剣が握られていた。飛び込んできのは人影だ、すぐにメイドが斬って掛かった。
この白い人は戦闘訓練されてるようだ、つまり偉い人付きも出来る優秀な侍女さんなのかもしれない。
ふたりが剣を打ち合う間にも、次々に窓から人影が飛び込んでくる。立ち上がり室内を見回すのは、耳長達であった。椿を追ってきたのだろうか、怖いな。恨み晴らさで置くべきか、ってか。すぐにベッドを降りて、遠ざかっておく。いつでも外すことができるように、手枷と足枷は強化しておいた。強化を解けば、金具が崩れて外れるはずだ。
それにしても、数人を相手にして白メイドは一歩も引かない。短剣ひとつで渡り合っている。森で出会った剣耳長ほどではないにせよ、例の4人組の剣士よりはよっぽど使う連中を相手にしても、だ。
白メイドを攻めあぐねる耳長の一部がこちらに近付いてきた、やばいぞ。武器はない。それに石ころが落ちているわけではない、投げつけるものがない。ベッドを投げるか?
白メイドが割って入ってくれるが多勢に無勢だ、椿を守りながら戦うのは難しいだろう。壁越しに後ずさる椿を守るように、白メイドは短剣を振るう。やっとこさ、騒ぎに気付いたのか、部屋の外が騒がしくなってきた。
奥に控える耳長が腕を突き出している、魔法が来るぞ。
放たれた魔法は風なのだろう。見えなかったが、それは確かに白メイドの身体で激しい衝撃音を上げる。思わずたたらを踏む白メイドの胴に、耳長達の剣が次々と吸い込まれていった。えぐい……
しかし、顔色を悪くしているのは耳長達の方だ。
鍔元まで深々と刺さったはずの剣は、不思議なことに白メイドの薄い胴体を突き抜けていない。
そのまま白メイドは表情も変えず、あっという間に自分に剣を突き立てている耳長の首を掻き切っていく。そして、徐に自分の腹に刺さっている剣の一本を抜き取ると、床に突き立てた。それと同時に、窓際に控える耳長がくぐもった声を上げる。耳長の足の甲から、剣が逆さに生えてきたのだ。
やっと分かった、この白メイドの魔法か異世界スキルだ。さっき壁を通り抜けたけど、自分以外も通り抜けさせる事ができるのだろう。それどころか、離れた位置に現れるのだ。尿瓶や短剣を取り出したのもそれに違いない。もうこれは、完全なファンタジー能力だよ。
最後の耳長が窓から逃げた頃になって、やっと部屋の扉が開いた。
現れたのは、板金鎧で武装した兵だ。なんだ、ちゃんとした武装があるじゃないか。そして、それに続いて入ってくるのは例の4人組の女神官だった。女神官、生きとったんか、われ。結構な強さで首を踏んづけたし、枯れ枝が折れるようなポキポキとした感触もしたんだけど、ピンピンしている。まあ、自身もポーションで骨折ぽい怪我が治るのを経験しているしな、死なない限りは治せるんだろう。
室内の安全が確認されたからだろう、もの凄く偉そうで派手な衣装の老人が入ってきた。女神官が居るあたりで予想できたが、側には教会の街に居た糞司祭が続く。
「※※※※※※※?
※※※※※※※※※※※」
「※※※※※※※※※※※※※※※※、※※※※※※※」
「※※※、※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※。
※※※※※※※※※?」
偉そうな爺さんが、もの凄く不満そうな声を上げる。絶対に、失礼な事を言っていると思う。そのまま糞司祭と、何やらギャーギャー言い争いを始めてしまった。
女神官はキラッキラの笑顔で椿を見ているし、白メイドはまた置物に戻っている。兵達は、何事もないかのように、耳長を片付け始めた。今度こそ、エプロンドレスを着た普通のメイドさんが、床掃除を始める。椿だけ、周りに付いて行けず、呆然と立っているしかなかった。
すると、更に部屋に入ってくる人影が見えた。
錬金術士のおじいちゃんだ。
どうやら、今朝は寝坊したようだ。
宿とは違う、ふかふかの豪華ベッドに立派な調度品のある部屋に居た。ただし、出入り口はの扉には鉄の格子が嵌められ、檻のようになっている。座敷牢とか、幽閉用の部屋なのは想像に難くない。なんせ手枷をされている、足枷もだ。
寝ているうちか? 目が覚めなかったのか、私は? やばい鈍感さだな…… これはおっぱいのひとつも揉まれているに違いない……
それは冗談として、あれだ、食事に一服盛られたのか。宿のあの痩せた女将、やけにキョドって居たが、椿を誰かに売ったのか。いや、間違いなく教会だろう、ここ。無駄にでかいガラス窓に、白い漆喰の壁だもの、教会の街で糞どもがひしめいていた建物と同じ造りだ。よくも殺されなかったものだ。
服も寝巻きらしきものに変わっていた。ノーパンだよ。
そんな心許ない下半身が手伝ってか、尿意を催してきたので身を起こす。だって、寝起きだもの。
「※※※※※※※※※、※※※」
「うわっ!」
不意に声をかけられて、思わず悲鳴を上げてしまった。危なく、漏れてしまうところだ。
声に振り返ると、お仕着せで髪を引っ詰めたザ・メイドが居た。フリルなどの装飾が一切ない、病院の看護師を思わせる真っ白い衣装だ。顔を伏せ畏まっている態度に、遜ったものは感じない、完全なる職業メイドさんだ。椿の常識に当てはめると、秘書などが思い浮かぶ。その仕事に掃除が含まれるであろうメイドさんが、汚れの目立つ白い服を着るわけがないので、本当に看護師かもしれない。
「お手洗いはどこですか?『便所』『ください』」
いい歳してキモいかなと思いはしつつ、少しモジモジしながら訴える。ジェスチャーを交えた方が伝わり易いのだから仕方ない。
何処から持ち出したのか、尿瓶のようなものを手にする白いメイドさん。部屋から出す気はないらしい。
あまりの事に呆然としていると、ベッドの縁に腰掛けさせられた上で尿瓶を当て交われる。割と限界が近かった上、白メイドさんのまったく照れがない自然な動作に流され、そのまま致してしまった。尿瓶が陶器のような、中身の見えないものであったのが救いだ。
メイドさんは当たり前のように、股間を拭き拭きまでしてくれる。尿瓶を始末しに行くのか、歩くメイドさんが吸い込まれるように壁の中に消えていった。
「はぁ?」
内側に鉄の格子の付いた扉は無視して、壁から出ていった。通り抜けたのか?
思わず足枷を付けたまま跳ねるように移動して、メイドさんが消えていった壁に触れてみる。間違いなく、つるつるの手触りがする漆喰の壁だ。凄いな、異世界スキルか? それとも魔法だろうか? こんなのが暗殺者とかやってたら、どうやって防げばいいんだ。
まるで椿がそうするのが分かっていたように、隣に少し離れた壁からメイドさんが戻ってきた。
戻ってきたメイドさんは、最初に居た壁際に戻ると動かなくなった。まるで、自分は調度品です、お気になさらずにって感じで。
害はなさそうなので、放っておこう。
椿は自分の荷物を探すが、部屋のどこにも見当たらなかった。貰って半日も経っていないのに、もうポーション鞄を失ったのか…… しかしながら、お手製の綴じ本はもちろん、カミラの手紙も取り戻したい。取り敢えず、大人しく様子を見るか。下手に暴れると、取り戻す機会を失うかもしれないし。
さて、こうなってはやることもない、寝るかな。
再びベッドに寝そべろうとしたときだった、窓ガラスが割れて何かが飛び込んできた。白メイドが直ぐに駆け寄ってくる、その手には既に短剣が握られていた。飛び込んできのは人影だ、すぐにメイドが斬って掛かった。
この白い人は戦闘訓練されてるようだ、つまり偉い人付きも出来る優秀な侍女さんなのかもしれない。
ふたりが剣を打ち合う間にも、次々に窓から人影が飛び込んでくる。立ち上がり室内を見回すのは、耳長達であった。椿を追ってきたのだろうか、怖いな。恨み晴らさで置くべきか、ってか。すぐにベッドを降りて、遠ざかっておく。いつでも外すことができるように、手枷と足枷は強化しておいた。強化を解けば、金具が崩れて外れるはずだ。
それにしても、数人を相手にして白メイドは一歩も引かない。短剣ひとつで渡り合っている。森で出会った剣耳長ほどではないにせよ、例の4人組の剣士よりはよっぽど使う連中を相手にしても、だ。
白メイドを攻めあぐねる耳長の一部がこちらに近付いてきた、やばいぞ。武器はない。それに石ころが落ちているわけではない、投げつけるものがない。ベッドを投げるか?
白メイドが割って入ってくれるが多勢に無勢だ、椿を守りながら戦うのは難しいだろう。壁越しに後ずさる椿を守るように、白メイドは短剣を振るう。やっとこさ、騒ぎに気付いたのか、部屋の外が騒がしくなってきた。
奥に控える耳長が腕を突き出している、魔法が来るぞ。
放たれた魔法は風なのだろう。見えなかったが、それは確かに白メイドの身体で激しい衝撃音を上げる。思わずたたらを踏む白メイドの胴に、耳長達の剣が次々と吸い込まれていった。えぐい……
しかし、顔色を悪くしているのは耳長達の方だ。
鍔元まで深々と刺さったはずの剣は、不思議なことに白メイドの薄い胴体を突き抜けていない。
そのまま白メイドは表情も変えず、あっという間に自分に剣を突き立てている耳長の首を掻き切っていく。そして、徐に自分の腹に刺さっている剣の一本を抜き取ると、床に突き立てた。それと同時に、窓際に控える耳長がくぐもった声を上げる。耳長の足の甲から、剣が逆さに生えてきたのだ。
やっと分かった、この白メイドの魔法か異世界スキルだ。さっき壁を通り抜けたけど、自分以外も通り抜けさせる事ができるのだろう。それどころか、離れた位置に現れるのだ。尿瓶や短剣を取り出したのもそれに違いない。もうこれは、完全なファンタジー能力だよ。
最後の耳長が窓から逃げた頃になって、やっと部屋の扉が開いた。
現れたのは、板金鎧で武装した兵だ。なんだ、ちゃんとした武装があるじゃないか。そして、それに続いて入ってくるのは例の4人組の女神官だった。女神官、生きとったんか、われ。結構な強さで首を踏んづけたし、枯れ枝が折れるようなポキポキとした感触もしたんだけど、ピンピンしている。まあ、自身もポーションで骨折ぽい怪我が治るのを経験しているしな、死なない限りは治せるんだろう。
室内の安全が確認されたからだろう、もの凄く偉そうで派手な衣装の老人が入ってきた。女神官が居るあたりで予想できたが、側には教会の街に居た糞司祭が続く。
「※※※※※※※?
※※※※※※※※※※※」
「※※※※※※※※※※※※※※※※、※※※※※※※」
「※※※、※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※。
※※※※※※※※※?」
偉そうな爺さんが、もの凄く不満そうな声を上げる。絶対に、失礼な事を言っていると思う。そのまま糞司祭と、何やらギャーギャー言い争いを始めてしまった。
女神官はキラッキラの笑顔で椿を見ているし、白メイドはまた置物に戻っている。兵達は、何事もないかのように、耳長を片付け始めた。今度こそ、エプロンドレスを着た普通のメイドさんが、床掃除を始める。椿だけ、周りに付いて行けず、呆然と立っているしかなかった。
すると、更に部屋に入ってくる人影が見えた。
錬金術士のおじいちゃんだ。
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