上 下
15 / 93

第14話 住み込み

しおりを挟む
 机の上に並ぶポーションは大凡おおよそ30個だ、2束ほどヨモギ束を消費した。結局のところ、キラキラを消すことはできなかった。料理のようにヨモギを潰して濾してみたり、煮詰める時にアク取りをしたりしたが無駄だった。すこし放置して、ヨモギ成分が沈殿してから試したが、魔力を流す際に撹拌されてしまった。それならばと上澄みを取り分けてみたが、これはポーションにならなかった。煮汁の緑色成分が必要らしい、まあそうなんだろうけど。

 ただ、濾したりアクとったりした煮汁からは、より鮮やかな青色をしたポーションが出来上がった。他にも、魔力の撹拌を色が変わっても続けるとポーションが僅かに光りだしてしまうなど、役に立つのか分からない発見があった。

 夜になると2階からお姉さんが降りてきた。椿を見てまだ居たの? って顔をする。その後、ポーションの山をみてギョッとしていた。あの糞女神もそうだったが、この世界の人々は顔のリアクションが大きいな。

 ポーションを手に取り「お納めください」な献上の形で捧げると、したり顔を頂きました。思いの外、ノリが良い。ニコニコの笑顔で、机の上に並んだポーションを数え始めた。
 不純物入だがポーションはポーションだ、きっと売るに違いない。

 上機嫌になったお姉さんは、なんと夕飯をご馳走してくれた。丸3日ぶりの温かい飯である! 硬いパンにスープだが、これは美味しかった。胃に染みる…… よくある異世界モノのように飯マズを覚悟していたが、普通に美味しい。人間、努力しないはずがないからな、どんな世界でも食は発展するだろうさ。そこが連合王国でなければ。

 野菜とベーコンらしき肉のシンプルなスープには揚げたパンが浮かんでいて、これがまたカリカリして美味しかった。翌朝、作り方を見せてくれたが、野菜や肉のくずで出汁を取っているようだ。添え物のパンは黒っぽいが、普通のパンだ。真っ白いパンの方が高級そうに見えるが、あれは必要以上に精製して栄養まで削り落とした代物だ。そう、現代日本のパンは異常なほど精製されている。食べれば逆にミネラルなどの栄養を奪われてしまうとかも聞く。まあ、ふかふかで美味しいけども。そう、美味しい、日本ではこれがすべてなのだ。ここではそうでないだけ。

 食事をしながら何度か質問をされた。多分、質問だ。「分からない」と答えるが、お姉さんは気にせず質問を続ける。ひょっとして、この世界に何カ国かある、それらの国々の言葉で話しかけているのかもしれない。異国の人間と当たりを付けたのだろう。気怠そうな見かけによらずインテリかもしれない。多分、錬金術師だろうし。

 食べ終えた頃、おもむろに胸ぐらをつかまれて何事かと思ったら、襟元をクンクンと嗅がれた。やはり匂うのか……

 手招きに付いて行くと、階段下の部屋に連れて行かれた。ベッドを指差し何か言うお姉さん、ここを使っても良いと言うことかな? 台所の水瓶からタライに水を移して部屋に持ち込む。その後、服を剥かれた、下着まで。洗濯してくれるのかな、何もかもありがたい。取り敢えず、タライの水で身体を拭く。とてもスッキリする心持ち、分かるよね?

 身体を十分に清め終えても、お姉さんは戻ってこない。悲しいかな、裸になるのに慣れてしまっているようだ。そのままベッドに潜り込むと、あっさり眠りが訪れた。



 朝になって部屋にお姉さんがやってくる。洗濯した服を持ってきてくれた。明るくなった部屋で椿の身体を見たお姉さんは、バツの悪そうな顔をしている。そう言えば、糞王子のせいで身体は継ぎ接ぎになっているのだった。お腹より上はマシだが。少しは隠すべきだった。それにしても、ここまでボロボロになったのなら、上手く動かなくなったり後遺症的なものを心配するものだ。幸いなことに違和感はなく、当たり前に動くことができる。ゴブさんをしばき倒せるくらいには。

 朝食の後はポーション作りを手伝う。昨日の青の他にも赤やら、黄やら、やたらカラフルなポーションの作り方を教わった。材料によって刻んで煮出す、そのまま煮出す、蒸して絞る、など結局のところ、あらゆる方法で汁を作っているだけだ。汁に魔法的な力が加わって薬になるのだろう。一体、何に使うのだろうか? そもそも、あの青色のポーションからして何の効果があるのか分からない。椿のゲーム脳からするとポーションとは傷が治ったり、毒が消えたりするものだ。ご多分に漏れず、そんな効果があるのだとは思うが。まあ、ヨモギだし傷薬か滋養薬だろう。

 魔法が絡んでいるんだし、いずれ万能薬とか不老長寿の薬とか出てくるかもしれないね。ちなみに、何色を作っても、椿が魔力で撹拌したものにはキラキラが混じってしまった。

 お姉さんは半日掛けて15本ほどポーションを作ると鍋に蓋をして片付けてしまう、それが限界らしい。それから見た目がクーラーボックスな入れ物を持ち出してきた。中は試験管立てのような木枠でみっちり埋まっている。ポーション入れだとすぐ分かった。お姉さんは、ご機嫌でポーションを詰めていく。椿が作ったものも、すべて入れてから出かけていった。

 納品に行ったのかな?



 夕方になった頃、お姉さんは帰ってきた。
 果てしなく上機嫌だ。こちらはお昼ご飯がなくてひもじかったよ!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生墓守は伝説騎士団の後継者

深田くれと
ファンタジー
 歴代最高の墓守のロアが圧倒的な力で無双する物語。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

婚約破棄された王女は最強

紅 蓮也
ファンタジー
世界で一、二を争う大国であるローズナイト王国の第一王女であるマリン・ローズナイトは留学先である隣国の学院を卒業式したので帰国し、王城でのパーティーで婚約者となった際の顔見せで一度のだけ会ったことのあるマルベール公爵令息に突然、身に覚えのないことを理由に婚約破棄だと言われた。 マリンとしても会ったのも一度だけだし、国王陛下である父に言われて婚約しただけで、恋愛感情皆無だったので、身に覚えのない噂が広がるのはよくないので婚約破棄の理由を看破した上で婚約破棄に応じた。 マリンは父である国王陛下に謝られたので、王族籍から抜けて冒険者になる許しをもらうことにした。 王位は王太子である兄がいるし、ローズナイト王国は女王も認めているけどマリンは興味がなかったし、兄にもしものことがあっても第二王子である弟がいるから大丈夫だろうと思っている。 国王の父、王妃の母、王太子の兄、第二王子の弟、王弟で宰相の叔父から反対されたがなんとか王族籍を残したまま冒険者をするならと認めてもらった。 翌日、冒険者ギルドに出向き冒険者登録を済まし、マリンの冒険者としての第一歩がスタートした。 不定期連載

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

悪役令嬢を拾ったら、可愛すぎたので妹として溺愛します!

平山和人
恋愛
転生者のクロエは諸国を巡りながら冒険者として自由気ままな一人旅を楽しんでいた。 そんなある日、クエストの途中で、トラブルに巻き込まれた一行を発見。助けに入ったクロエが目にしたのは――驚くほど美しい少女だった。 「わたくし、婚約破棄された上に、身に覚えのない罪で王都を追放されたのです」 その言葉に驚くクロエ。しかし、さらに驚いたのは、その少女が前世の記憶に見覚えのある存在だったこと。しかも、話してみるととても良い子で……? 「そういえば、私……前世でこんな妹が欲しかったって思ってたっけ」 美少女との出会いが、クロエの旅と人生を大きく変えることに!?

処理中です...