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第六話 時の記憶

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我が子…?? 王様の……?!
王に抱きしめられた時、記憶の断片が頭をかすめた。

貧しい藁の家に初老の女性と俺の二人が住んでいた。

初老の女性…確か彼女は村の産婆をしていたはずだ。
お金は貰わず貧しい家庭の赤子を取り上げていた。
母親の栄養が足りないとわかるとすぐさまうちの畑から収穫した野菜を使い料理して持っていった。

何度かお金がないのになぜと俺が反論したところ彼女は満足そうに笑って
「本当はこんなふうに働きたかったの。困っている人に直接役に立てる仕事がしたかったの。」

その時の俺には分からなかった。しかし、今になって見ると少し分かるような気もする。

「……生きて…生きてくれていたのだな…良かった…本当に良かった…」

回された腕の力が強くなる。王からは我が子を想う慈悲に満ちた温かい気持ちが伝わってくる。

あぁ…ずっと…ずっと…この時を待っていたのかもしれない

父親に愛され抱きしめられたかった。

つっと頬に涙が走った。温かな心に身を寄せて。

二人は長らく抱き合い親子の時間を噛み締めていた。 
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