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ポルノグラフィア 21
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「ポルノグラフィア」21
予想通り、日菜子は昨日のことは覚えていなかった。
昨日は一人でボトル1本空けて、それでも足らずに何やかんやと飲んでいたので、まだ早い時間にも関わらずそのまま寝落ちすると、朝、あわててシャワーを浴びて出勤した。
日菜子は住宅展示場で、販売員として契約している。
日斗志の朝の準備もあるので、朝は井上が一番に起きて朝食を用意する。
「姉ちゃん、また飲み過ぎだね」
日斗志は、ご飯にじゃこをかけて食べている。
井上は、結婚する前から朝食はパンなのだが、日斗志は食パンが嫌いだ。
耳がバサバサして不味いという。
仕方ないので、いつもはおかずを誂えるのだが、面倒くさい時はじゃこで終わり。
一体、誰に似たのやら。
日斗志は「姉ちゃん」と、休日に遊びにいきたいのだが、日曜祭日はあまり休めない日菜子には難しい要望だ。
日斗志が、昨日描きだした怪物の絵の続きを描こうとし出したので、井上は学校に行くように尻を叩いた。
毎日繰り返しているが、一向に止める気配はない。
このマイペースな感じも、自分にも頼子にも似ていない。
隔世遺伝というやつか?
誰の隔世かわからないけど。
朝食が終わると、洗濯物を外に干して、始業する。
昔は自分の部屋で仕事していたのだが、どうにも集中力が散漫になるので、ダイニングでパソコンと図面を広げて作業するようになった。
基本、外注を使う時以外は原価のかからない商売ではあるが、A1が焼けるプリンターの維持費は、何だかもったいないと貧乏性のように思ってしまう。
昼過ぎに、山田が井上の所有品を持ってきてくれた。
仕事柄、ワゴンに乗っているので、荷物を降ろせば多少の絵は運べますと言ってくれたからだ。
一緒に部屋に運んだあと、井上は、せっかくなのでとお茶に呼んだ。
図面を片付けて、コーヒーを淹れる。
山田は、相変わらず、自分から話はしないが、ニコニコしている。
その笑顔が、いい。
「助かったよ。今度またお礼に奢るよ」
「いや、別にいいですよ。それより、昨日は日菜子さんなかなかでしたね」
本気で飲みだした時の日菜子を、山田は昨日初めて見たから、そう感じるのも当然だろう。
「で、いつも翌日は覚えていないんだ」
井上は苦笑して言ったが、昨日の、しどけない日菜子の姿を思い出して、ちょっと気持ちが揺れた。
酔ったから出た本心なのか、酔ったことで意とは逆の行動となったのか、
どちらにしても、曖昧で、甘く、苦い、言葉にし難いそれは、二人にとって心のどこかに埋めてしまった方がいいに決まっている。
「日菜子さんは、もちろんこれは当たり前なんですけど、井上さんにとって、大切な存在なんですよね」
山田の、あまりにストレートな物言いに、井上はちょっと狼狽した。
「ああ、大切だね」
それだけ言うと、井上は黙って珈琲を口に運んだ。
予想通り、日菜子は昨日のことは覚えていなかった。
昨日は一人でボトル1本空けて、それでも足らずに何やかんやと飲んでいたので、まだ早い時間にも関わらずそのまま寝落ちすると、朝、あわててシャワーを浴びて出勤した。
日菜子は住宅展示場で、販売員として契約している。
日斗志の朝の準備もあるので、朝は井上が一番に起きて朝食を用意する。
「姉ちゃん、また飲み過ぎだね」
日斗志は、ご飯にじゃこをかけて食べている。
井上は、結婚する前から朝食はパンなのだが、日斗志は食パンが嫌いだ。
耳がバサバサして不味いという。
仕方ないので、いつもはおかずを誂えるのだが、面倒くさい時はじゃこで終わり。
一体、誰に似たのやら。
日斗志は「姉ちゃん」と、休日に遊びにいきたいのだが、日曜祭日はあまり休めない日菜子には難しい要望だ。
日斗志が、昨日描きだした怪物の絵の続きを描こうとし出したので、井上は学校に行くように尻を叩いた。
毎日繰り返しているが、一向に止める気配はない。
このマイペースな感じも、自分にも頼子にも似ていない。
隔世遺伝というやつか?
誰の隔世かわからないけど。
朝食が終わると、洗濯物を外に干して、始業する。
昔は自分の部屋で仕事していたのだが、どうにも集中力が散漫になるので、ダイニングでパソコンと図面を広げて作業するようになった。
基本、外注を使う時以外は原価のかからない商売ではあるが、A1が焼けるプリンターの維持費は、何だかもったいないと貧乏性のように思ってしまう。
昼過ぎに、山田が井上の所有品を持ってきてくれた。
仕事柄、ワゴンに乗っているので、荷物を降ろせば多少の絵は運べますと言ってくれたからだ。
一緒に部屋に運んだあと、井上は、せっかくなのでとお茶に呼んだ。
図面を片付けて、コーヒーを淹れる。
山田は、相変わらず、自分から話はしないが、ニコニコしている。
その笑顔が、いい。
「助かったよ。今度またお礼に奢るよ」
「いや、別にいいですよ。それより、昨日は日菜子さんなかなかでしたね」
本気で飲みだした時の日菜子を、山田は昨日初めて見たから、そう感じるのも当然だろう。
「で、いつも翌日は覚えていないんだ」
井上は苦笑して言ったが、昨日の、しどけない日菜子の姿を思い出して、ちょっと気持ちが揺れた。
酔ったから出た本心なのか、酔ったことで意とは逆の行動となったのか、
どちらにしても、曖昧で、甘く、苦い、言葉にし難いそれは、二人にとって心のどこかに埋めてしまった方がいいに決まっている。
「日菜子さんは、もちろんこれは当たり前なんですけど、井上さんにとって、大切な存在なんですよね」
山田の、あまりにストレートな物言いに、井上はちょっと狼狽した。
「ああ、大切だね」
それだけ言うと、井上は黙って珈琲を口に運んだ。
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