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トリプティック 26
しおりを挟む行為が終わった後、巴は女に戻った。
気だるい微睡みを全身にまとい、佐藤の背中を抱いてじっとしていた。
言葉は要らなかったが、どうして最初からこんな風に愛おしい感情を互いに融かすことができなかったのか、そんなわかりきったことをぼんやりと想う。
「するんじゃなかった?」
背に巴を抱いたまま、佐藤は手を伸ばして巴の右手を握った。
躊躇いが、男の背中を通して余熱になる。
いつもそうだ。あなたは自分の感情に向き合うことが苦手で、それでもなんとかしようと足掻き、そしてそれは届かない。
もどかしいのはあなたではなく、私なのだ。
後ろから髪に手を伸ばし、そっと撫でる。
耳元にキスをする。
普通に男と女がそうするように、私たちにもできないことはなかった。
でもわかっている。
二人は恋人にはなれない。
この男には恋い焦がれている男がいる。
憧れと嫉妬と羨望に焦れながら、そして異性の私との関係にも苦悶する、優柔不断な駄目な男。
「こんな風にするつもりはなかった…」
なんか言い訳じみていたが、いや、違う。
本当はこうしたかったんだ。
だってそうでしょ?
あなたはこの先もずっとどっちつかずのままいい歳をした思春期を堂々巡りするに決まっている。
私は…
私はあたなを犯してやりたかった。
心はどっち付かずのまま私のところに帰ってはこない。
だから、あなたを許したくはない。
あなたを辱しめてやりたかった。
だってそうでしょ?
あなたはどうしたいの?
私はどうすれば良かったの?
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「何か言うことはないの?」
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