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野外実習は穏やかに?

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野外実習当日になりました。私たちは、もちろんセアベルテナータ殿下の言うことを聞く義理などありませんから、当たり前のように野外実習に参加しています。

「Aクラスは、揃ってるな?今年の野外実習は、不可思議の森の中層域まで入ることを許可する。但し、深層域手前はロックリザードの縄張りになる。実力が伴わないと思うパーティーは、中層域の中程までにしておけ。いいな?・・よし、今年の課題だが、個人の課題は、眠り草ねむりそう15本、ケバケバキノコ5個。Bランク以上の品質とする。パーティーの課題として、トバナイチョウの肉5Kgと羽毛500グラム、魔石1個。以上だ。質問は?ないな。じゃ、リーダーはマジックバッグを取りに来い」

今年もマジックバッグの貸し出しありです。太っ腹!ナンザルト先生は宣言通り、今年の課題を一気に上げてきました。眠り草は比較的浅いところにも生えていますが、ケバケバキノコは中層域でも真ん中辺りまで行かないとありません。それにトバナイ鳥の肉も5Kgとなると3体は必要ですし、その羽毛も同じくらい必要な上に綺麗に狩らないと足りなくなるかもしれません。ちょっと頑張らないと難しい課題になっています。

「トバナイチョウかあ。どの辺にいたかなぁ?」

確か・・・・。

「ロックリザードの近くと中層域の真ん中辺りに幾つか、あとは、表層域との境に群れが棲んでたはずだ」

そうそう。どの場所にも5体~の群れがいたはずです。

私とミリーナ様は、喋ることが出来ません。ナンザルト先生の許可をもらい、隠密で隠れているからです。セアベルテナータ殿下たちに怯えているようで不本意ですが、トラブルは起こしたくありませんし、面倒なのでこうすることになりました。今は、私はレオナルド様と、ミリーナ様はランスロット様と手を繋いだ状態で、森に入るまではこのままです。殿下たちは私たちの姿が見えないことから、野外実習に参加しないと思っているでしょう。

レオナルド様たちは、Aクラスのリーダーを集めて情報を共有し、予め何処に向かうか決めておくことにしたようです。私たちは、ロックリザードの近くまで行くことにしました。そこまで入ってこれる2年生のパーティーは今のところありません。私たちにとっては安全地帯になるわけです。

「そろそろ出発するぞ」

ランスロット様の声かけで私たちは歩き出しました。セアベルテナータ殿下たちのパーティーは既に門を出た後です。広場にいる間中、レオナルド様とランスロット様を注視していましたが、出発時間を過ぎても私たちが現れなかったことから、ふたりに嫌な嗤いを向けて去っていきました。私たちはそれぞれのパートナーに手を引かれ、1年生の時と同じ入り口から森の中層域を目座します。

「ここまで来れば、大丈夫だろ」

「そうだね。ふたりとも姿を現していいよ」

視界の端にお兄様の姿が映りました。ほっとした顔をしていることから、姿が見えない私を心配していたのでしょう。

「喋れないってこんなに辛いのですわね」

これが、隠蔽を解いたミリーナ様の第一声です。

「ミリーったら。そんなにお喋りしたかったのですか?」

「違いますわ。喋れないということが辛かったのよ。喋りたかったわけではありませんわよ?」

隠蔽を解いてもレオナルド様は手を繋いだまま離してはくれません。近くに魔獣の反応はありませんから構わないのですが、ちょっとだけ恥ずかしいです。ミリーナ様もランスロット様から手を離してもらえず顔が少し赤くなっている気がします。表層域の奥へ奥へと進むにつれて、森に漂う魔力が濃くなってきました。しばらくすると中層域に入るはずです。

「そろそろ昼休憩にしようぜ」

「喉が乾きましたわ」

「あ、あの辺りなんてどうですか?」

「見通しも悪くないしいいね」

お昼は去年と同様、食堂のサンドイッチです。去年と違うのは、果物が無いこと。夏の盛りなだけあって、果物が少ないことと姿を消していたので採取できなかったことが原因です。さあ、これからたくさん採取しましょう♪

お昼休憩の後から少し歩みを緩めて、採取に力を入れます。晩ごはんと朝ごはんのためにも野菜やキノコ、ハーブ類を中心にせっせと摘みました。途中、コッコやシュガーアント、モーを狩り、食材はバッチリです♪もちろん、課題の眠り草ねむりそう15本、ケバケバキノコ5個もちゃんと採取済みです。

「そろそろ、野営の準備しようぜ」

「そうですわね」

「場所は・・・・あの辺りはどう?」

「お、ちょうどいいな」

トバナイチョウは明日仕留めることにした私たちは、トバナイチョウがいる場所まで6時間位のところ、中層域の真ん中辺りで一晩越すことにしました。

「お兄様たちも一緒に夕食に致しましょう?」

どうせ皆さんに配るのですからその方が効率的です。本日のメニューは、ハンバーグをメインに鶏肉の団子入りミルクスープ、葉野菜のサラダささみ乗せ、焼きトウモロコシ、パンレッド。食後のデザートは、なんと!アイスクリームです♪お兄様に頑張ってもらいました。

「野営の食事とは思えないわね」

「もっと適当でいいのに」

「何言ってるのさ。ロッテにとってはこれが野営なの。ああ、久し振りのロッテの手料理だ。お兄様、嬉しいなぁ」

周りが引くほど感激しているお兄様は見なかったことにして、いただきましょう♪もちろん影で護衛してくれる人たちにも差し入れしましたよ。



「明日は、さっさとトバナイチョウを狩って、出来るだけ表層域に近いところで野営したい」

「セアベルテナータ殿下たちの動向次第かな?鉢合わせたくはない」

「まあな」

「あの方たち、どの辺りにいるのかしら?」

「どうやら中層域の入り口辺りをウロウロしてるらしいよ。ここから北西に7時間ってところかな」

「お兄様は何故、そんなことを知っているのですか?」

「ん?さっき伝令が来た。一応警戒対象だからね」

なるほど。

「アレク、あいつらは課題終わってるのか?」

「いや。シュガーアントを見つけられないようだよ。Bクラスはシュガーアントの砂糖3Kgと薬草だから」

え・・・・。私たちと差がありすぎでは? 

「俺たちと差があるのは仕方ないと思うぞ?主にお前らのお蔭だ」

「私が2年の時は、マイマイの殻とポイズンビーの毒針だったかな?」

どちらも中層域の入り口付近にいる魔獣です。

「ま、2年ならそれが普通ね」

そうですか。ちょっとやり過ぎたかもしれません・・・・。今更すぎですね。

「明後日はこの辺りで野営して早めに帰りましょう?」

「そうするか」

「そうですわね」

今後のことも決まり、今夜は見張りを立てず日の出と共に起床となりました。

「ロッテ」

レオナルド様に呼ばれ、いつものように隣で丸くなります。レオナルド様の張った結界を強化するように魔力を乗せ、私はすっと夢の中へ旅立ちました。



「ねぇ。あれはどうなの?」

「いつものことだ、姉貴」

「変わってないんだね・・・・。子供の頃からの習慣だったからさ、私たちもやめさせる機会を逸したままここまで来ちゃったんだよ」

「まあ。肉親がいいって言うなら何も言わないわ。でも、お姉さん、あの子が4年生になったときが心配よ」

「「「「「ああ・・・・」」」」」

「煩いよ!さっさと寝なよ」

そんな会話がされているとは露知らず、私は朝まで呑気に眠っていました。私の危機意識の低さはもうどうにもなりませんね。
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