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私の発言に信憑性を感じ取ったのか、宰相が間に入ってきた。
「どちらの申すことも誰も証明することなど不可能。愛し子の存在を知り後から名乗り出たシュシュ嬢の言うことなど信用できませぬな」
「確かに誰も証明はできないが、俺はシュシュ嬢に、今回の災厄の原因とやらを聞いてみたい。リルアイゼ嬢は女神様から教えられていないようだが、その辺りはどうなのだ?」
ハワード辺境伯閣下は、真実を見極めようとするかのように、私をじっと見ている。そこに私に対する親しさや私情はない。
「お答えします。それは、世界に漂う自然界の魔力の乱れに因るものです。魔獣の凶暴化も上位種への進化も全てそれが原因です。ですから、リルアイゼの言うようにいくら上位種を討伐しても魔力の乱れが正常化しない限り、新たな上位種が生まれます。闇落ちした竜が原因の前回の災厄とは異なるのです」
集まった大臣や第2王子殿下は「なるほど」と納得している。
「では、その魔力の乱れは如何様にして正常化されるのだ?」
「それが今回の愛し子の役目。・・・・フフ、歌うのでございますよ、閣下。愛し子の歌は魔力を含み、その魔力と旋律は常に正常な周波数を発します。その周波数に乱れた魔力を触れさせることで調律し、少しずつ正常化するのです」
「確かにシュシュ嬢はいつも歌っているな。歌ではならぬ理由は?」
「わたくしが女神様にお願いしたから、ですわね」
理由はそれしかない。目立たないこと、という条件をつけたら、そうなった。
「「「「はあああああ?!」」」」
これは、王太子殿下やお兄様、ガイウスにも言っていない。
「リルアイゼと違って魔獣の討伐とか無理ですし、目立ちたくなかったんですもの」
「いや、待て。愛し子の役割とは、そんなに融通が効くものなのか?」
「愛し子とは女神様との契約ですから♪」
「そんな、そんなわけないですわよ!そんなの違いますわ!愛し子とは女神様からお役目を戴いたとても崇敬な存在ですのよ!適当なこと言わないでくださいませ!」
「そうだ。兄上もそのような、平民に片足を突っ込んだような者の言うことを真に受けるなど、王太子としての資質を疑われても反論できませんよ?」
リルアイゼとその夫である第3王子殿下が反論してきた。それに勢いをつけられたのか他の仲間たちも口々に騒ぎ始めた。
「我々の使命を愚弄するなど、女神様を愚弄するも同然だ!」
「同感だ」
「だいたい、リルアイゼ嬢に」
「静かにしろ!騒ぎたきゃ別室へ行け!俺はシュシュ嬢の話が聞きたいんだ!」
ハワード辺境伯の一喝でその場はシーンと静まり返った。迫力のある一声でした。
「契約というのはどういうことだ?」
「あの、その前に今話している愛し子の情報は、今代の愛し子である私がこの世を去ると女神様によって回収されて、消えますよ?」
さすがにこの情報にはみんな呆気にとられている。
「そ、そうなのか。まあ、それでもいい。教えてくれ」
他の人も頷いているからいいんだろう。
「愛し子に選ばれた魂はその段階で女神様と邂逅し、希望を聞かれます。ここで愛し子を辞退することはできません」
「辞退したのか・・・・」と誰かの呆れた声が響いた。そうだよ。辞退したんだけど出来なかったんだよ。
「災厄に合わせた魂が選ばれるため、その望み自体、役割から大きく外れることはありませんけどね。大抵叶えてもらえますが、産まれ落ちるところだけは選べません」
「選べていたら、我が家は選ばないだろうね」
お兄様の言ったことは間違っていない。
「この時に能力や魔力量、属性、容姿なども決めることが出来ます」
「愛し子は産まれる前に自分で決めてくるのか?」
「そうなります。わたくしの場合は、魔力量、能力、属性、容姿の全てを目立たない普通程度にお願いしてきました」
「何故だ?」
「・・・・。リルアイゼを見てわかりませんか?わたくしはそれを望まなかったのですよ。ですから、リルアイゼが愛し子と名乗り出ようと別にどうでもよかった。率先して魔獣を討伐してくれるなら、願ったり叶ったりですし」
「では、何故今になって名乗り出た?」
「簡単なことですわ。リルアイゼがわたくしの平穏を乱したから。愛し子の命として、お兄様を陥れようと画策し、わたくしとガイウスを離縁させようとするから」
ハワード辺境伯だけでなく、大臣たちもビックリしている。驚いていないのは、国王夫妻、宰相、私の両親、リルアイゼとその仲間たち。
「おいたが過ぎたのですよ」
「それは、まあ。本当のことならキレるな」
「嘘です。出鱈目ばかり並べて。何処にも証拠などないではありませんか」
「そうだ。リルアイゼの言うとおりだ。アルベルトよ、その女の言うことが正しいと言う証拠を示せ」
ここに来て、国王陛下が慌て出した。これまで、証拠というものは見せていないから、そこを突いてうやむやにしたいのだろう。
「証拠、見たいですか?相当腹に据えかねているようですから、自衛してくださいね?」
「ちょっと待て。そんなになのか?」
王太子殿下はコマちゃんとキュウちゃんの怒りを知っているから慌てている。
「はい。リルアイゼとお仲間の皆様、宰相様、国王夫妻、わたくしの両親は一瞬で首が落ちそうですよ?」
「静めてからにしてくれ」
『だって。我慢できる?』
『フン!』
『嫌だよ!』
『でも、私、血溜まりは見たくないよ』
『なら、一瞬で消し炭にしてやろう』
『それがいいね』
『ダメダメ。私は結構満足してるから、ね?物騒なことは止めて。あの人たちにはね、まだ生きててもらわないといけないんだよ』
『仕方ないな』
『ブー』
「なんとか、大丈夫・・・・かな?」
「・・・・信じよう」
私は愛し子の証であるキュウちゃんとコマちゃんに姿を見せるようお願いした。
「どちらの申すことも誰も証明することなど不可能。愛し子の存在を知り後から名乗り出たシュシュ嬢の言うことなど信用できませぬな」
「確かに誰も証明はできないが、俺はシュシュ嬢に、今回の災厄の原因とやらを聞いてみたい。リルアイゼ嬢は女神様から教えられていないようだが、その辺りはどうなのだ?」
ハワード辺境伯閣下は、真実を見極めようとするかのように、私をじっと見ている。そこに私に対する親しさや私情はない。
「お答えします。それは、世界に漂う自然界の魔力の乱れに因るものです。魔獣の凶暴化も上位種への進化も全てそれが原因です。ですから、リルアイゼの言うようにいくら上位種を討伐しても魔力の乱れが正常化しない限り、新たな上位種が生まれます。闇落ちした竜が原因の前回の災厄とは異なるのです」
集まった大臣や第2王子殿下は「なるほど」と納得している。
「では、その魔力の乱れは如何様にして正常化されるのだ?」
「それが今回の愛し子の役目。・・・・フフ、歌うのでございますよ、閣下。愛し子の歌は魔力を含み、その魔力と旋律は常に正常な周波数を発します。その周波数に乱れた魔力を触れさせることで調律し、少しずつ正常化するのです」
「確かにシュシュ嬢はいつも歌っているな。歌ではならぬ理由は?」
「わたくしが女神様にお願いしたから、ですわね」
理由はそれしかない。目立たないこと、という条件をつけたら、そうなった。
「「「「はあああああ?!」」」」
これは、王太子殿下やお兄様、ガイウスにも言っていない。
「リルアイゼと違って魔獣の討伐とか無理ですし、目立ちたくなかったんですもの」
「いや、待て。愛し子の役割とは、そんなに融通が効くものなのか?」
「愛し子とは女神様との契約ですから♪」
「そんな、そんなわけないですわよ!そんなの違いますわ!愛し子とは女神様からお役目を戴いたとても崇敬な存在ですのよ!適当なこと言わないでくださいませ!」
「そうだ。兄上もそのような、平民に片足を突っ込んだような者の言うことを真に受けるなど、王太子としての資質を疑われても反論できませんよ?」
リルアイゼとその夫である第3王子殿下が反論してきた。それに勢いをつけられたのか他の仲間たちも口々に騒ぎ始めた。
「我々の使命を愚弄するなど、女神様を愚弄するも同然だ!」
「同感だ」
「だいたい、リルアイゼ嬢に」
「静かにしろ!騒ぎたきゃ別室へ行け!俺はシュシュ嬢の話が聞きたいんだ!」
ハワード辺境伯の一喝でその場はシーンと静まり返った。迫力のある一声でした。
「契約というのはどういうことだ?」
「あの、その前に今話している愛し子の情報は、今代の愛し子である私がこの世を去ると女神様によって回収されて、消えますよ?」
さすがにこの情報にはみんな呆気にとられている。
「そ、そうなのか。まあ、それでもいい。教えてくれ」
他の人も頷いているからいいんだろう。
「愛し子に選ばれた魂はその段階で女神様と邂逅し、希望を聞かれます。ここで愛し子を辞退することはできません」
「辞退したのか・・・・」と誰かの呆れた声が響いた。そうだよ。辞退したんだけど出来なかったんだよ。
「災厄に合わせた魂が選ばれるため、その望み自体、役割から大きく外れることはありませんけどね。大抵叶えてもらえますが、産まれ落ちるところだけは選べません」
「選べていたら、我が家は選ばないだろうね」
お兄様の言ったことは間違っていない。
「この時に能力や魔力量、属性、容姿なども決めることが出来ます」
「愛し子は産まれる前に自分で決めてくるのか?」
「そうなります。わたくしの場合は、魔力量、能力、属性、容姿の全てを目立たない普通程度にお願いしてきました」
「何故だ?」
「・・・・。リルアイゼを見てわかりませんか?わたくしはそれを望まなかったのですよ。ですから、リルアイゼが愛し子と名乗り出ようと別にどうでもよかった。率先して魔獣を討伐してくれるなら、願ったり叶ったりですし」
「では、何故今になって名乗り出た?」
「簡単なことですわ。リルアイゼがわたくしの平穏を乱したから。愛し子の命として、お兄様を陥れようと画策し、わたくしとガイウスを離縁させようとするから」
ハワード辺境伯だけでなく、大臣たちもビックリしている。驚いていないのは、国王夫妻、宰相、私の両親、リルアイゼとその仲間たち。
「おいたが過ぎたのですよ」
「それは、まあ。本当のことならキレるな」
「嘘です。出鱈目ばかり並べて。何処にも証拠などないではありませんか」
「そうだ。リルアイゼの言うとおりだ。アルベルトよ、その女の言うことが正しいと言う証拠を示せ」
ここに来て、国王陛下が慌て出した。これまで、証拠というものは見せていないから、そこを突いてうやむやにしたいのだろう。
「証拠、見たいですか?相当腹に据えかねているようですから、自衛してくださいね?」
「ちょっと待て。そんなになのか?」
王太子殿下はコマちゃんとキュウちゃんの怒りを知っているから慌てている。
「はい。リルアイゼとお仲間の皆様、宰相様、国王夫妻、わたくしの両親は一瞬で首が落ちそうですよ?」
「静めてからにしてくれ」
『だって。我慢できる?』
『フン!』
『嫌だよ!』
『でも、私、血溜まりは見たくないよ』
『なら、一瞬で消し炭にしてやろう』
『それがいいね』
『ダメダメ。私は結構満足してるから、ね?物騒なことは止めて。あの人たちにはね、まだ生きててもらわないといけないんだよ』
『仕方ないな』
『ブー』
「なんとか、大丈夫・・・・かな?」
「・・・・信じよう」
私は愛し子の証であるキュウちゃんとコマちゃんに姿を見せるようお願いした。
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