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学院編

本題に入りました

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俺が、軽食とつまみを厨房からもらって、秘密基地に戻ると、調査書を読み終えた3人が何とも言えない顔で待っていた。その原因は、件の大人達である。

「なあ、キース。父上たちは普段こんな感じなのか?」

ああ。レン兄様もミルドもナージュも、国王をしている父様。宰相閣下をしている宰相閣下。騎士団長をしている騎士団長。魔法師団長をしている魔法師団長。父上をしている父上しか見たことないもんな。幼いうちから“私”の顔を見せてもらえた俺は恵まれているのかもしれない。しかし、俺が出ていく前よりダラダラが加速してるな。

「そうなんじゃない?俺もここまで寛いでるのは初めて見たよ」

「そうなのか?」

「あのなぁ。オンとオフはきっちり切り替えないとこの先のやっていけないぞ?」

これには一理ある。が、今はオンなのか?オフなのか?

「今は半オン半オフだ」

器用だな、宰相閣下。

「私は完オフ」

見れば分かるよ、魔法師団長殿。

「さて、読み終えたようだな」

「俺たちは、これを参考に対策を練ってきた」

「これは一体何なのですか?いろいろと矛盾が見受けられるのですが?」

「分かってる。それも織り込み済みだ」

「キースはいつからこれを知っていたのですか?」

レン兄様の顔には少しの嫉妬と焦りが見て取れた。

「最初から。というか、それ、キースが受け取った神託を纏めたものだから。全容はその4倍はあるぞ」

「「「はあ?!」」」

3人の目が俺に向いた。

「し、神託って、うけ、受け取れるものなのですか?」

ミルドが1番驚いている。目が零れ落ちそうだ。

「4歳で池に落ちたときにちょっとね」

「4歳でこんなに詳しく語れるものなのか?」

「なんか、その時、精神も成人くらいまで成長させられたんだよね、俺。レン兄様たちと遊ぶのはそれはそれで楽しかったよ」

父様たちとの会議は仕事みたいなものだから。息抜き大事。

「キース殿下は、4歳からずっとこんな感じだな」

「こいつ、非常識の塊だぞ?じゃなきゃ、こんな部屋造れるわけないわな」

「そこはさぁ、想像力豊かと言って欲しいね」

「いや、お前はおかしい。自覚しろ。だいたい、魔法を見せてみろって言われて、ゴーレムを造る奴はまずいない」

「普通なら、盗聴器に蝿は採用しませんな」

魔法師団長に追い打ちをかけられた。

「蝿?盗聴器?」

それは何だ?とレン兄様の目が聞いてくる。

「えっと・・・・」

これ、言っていいの?俺は、宰相閣下に目配せした。

「キースの婚約者がオーシャック侯爵家の令嬢だというのは知っているな?」

それを知らないやつは、学院はおろか国内の貴族を探してもいないだろうな。

「オーシャック侯爵家はな、代々諜報を纏める家柄だ。今はほぼ、キースが取り仕切っている」

「そんなに驚くことでもないだろう?キースの言動ひとつひとつをつなぎ合わせれば、答えは自ずと出てくる」

「まだまだだな」

まあ、情報を精査した上で、レン兄様たちにも重要なことと知っておくべきことは流してるからな。

「もしかして、王妃派がネルロワイエ殿下を王太子と思い込んでいるのも?」

さすがにミルドは気が付いたようだ。

「うん。その方が都合がいいからね」

「それだけじゃないだろう?他国のネルロワイエの評価も、この国の王太子をネルロワイエだと他国に思わせているのも、キースの仕業だ。この王宮に入り込んでる各国の諜報員を全て把握して、情報操作するなんて、出来ないだろ、普通」

「この国の存亡とマリーの未来がかかってるから、頑張った。褒めていいよ?」

「マリーの、未来?どういうことだ?」

若干脳筋の気があるナージュは、既に脳がヒートしていたようだが、マリーと聞いて正気にかえった。俺が被害に遭った事件の全てはマリーの身代わりだと宰相閣下が事件のひとつひとつを丁寧に解説していく。その上で、いまだにそれは、続いているのだと締めくくった。

「もう、俺ひとりじゃマリーを守り切れないんだ。近いうち、後手に回る日が来る。そうなる前に、事実を知った上で、マリーを守ってもらいたかった」

この事実を知らずにマリーを守ることは出来ない。

「どうしてもっと早く教えてくれなかったんだ?!」

「それは」

「分かってる。この国の存亡に関わることだから。でも、出来るならもっと早く知りたかった」

ナージュの慟哭は理解できる。もし、ルナのことだったとしたら、俺はナージュのよう理解を示せただろうか。無理だな。きっと、悔しくて、ひとりで守ろうと、たとえルナが壊れても監禁して外に出さなくなるだろう。ナージュのような強さは俺にはないのだ。
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