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学院編
大人会議
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学院が始まって暫く経った頃、久し振りに父様に呼び出された。俺を呼びに来た騎士に先導されて父様の執務室に入る。そこには、いつものメンバーが揃っていた。
「よく来たな。学院は順調か?」
「順調だよ」
父様達に報告することは特にないはずだ。
「レンがアンジェリーナ嬢を送迎しているらしいな」
「ああ。そのこと?ネルロワイエ異母兄がミナレア王女を送迎するなら、レン兄様がアンジェリーナ嬢を迎えに行っても問題ないでしょ?」
何度か馬車から降りてくるふたりを見かけたが、レン兄様の蕩ける笑顔に恥じらうアンジェリーナ嬢が尊かったな。馬車の中でイチャコラしてたのが丸わかりだった。
「だが、ネルに見つかるとうるさいぞ?」
「それは、大丈夫。鉢合わせしないように調整してるから」
「相変わらず、その辺は抜かりないな」
「聞きたいのはそれだけ?」
「いや。王妃派の動向と証拠はどうなってる?」
俺は、ほぼオーシャック侯爵家の裏家業を引き継ぎ、諜報員と魔道具を駆使して亡きオーシャック侯爵の敵を討つべく、証拠を集めている。もちろん、父様達も動いているから、着々と証拠は集まっている。でも、まだ足りない。
「ローズ離宮に隠し通路を見つけた。そこから、ビッグタルト侯爵をはじめとする王妃派の貴族が出入りしているのを確認した。護衛が王妃派の騎士で固められているから、顔パスだよ」
「隠し通路?そんなもん、ローズ離宮にあったか?」
「秘密裏に作ったんだよ、騎士団長殿」
「いつの間に・・・・?」
それは、地下室からローズ離宮の裏手にある森に繋がっている。森と離宮は塀で隔てられているが、王宮に入れる者なら森に入るのは容易い。
「いつ分かったんだ?キース」
宰相閣下は、何故報告がない!とお怒りが顔に出ている。
「昨日。余程用心していたんだろうな。地下室に入るまでに何重にも扉がつけられて、その全部に鍵が必要だ。ネズミも容易には侵入できなかった。たまたまビッグタルト侯爵のポケットに入り込んだ蜂型偵察機がいて見つけたんだ」
蝿型盗聴器はつけてたんだけど、音を出さなきゃ意味がなかった。
「キース殿下、入口の場所は何処だ?」
「池があるだろう?そこから南西に500mいくとちいさな祠がある。そこが入口」
「すぐに確認する。ローズ離宮の護衛も見直しがいるな」
「いや、護衛はそのままでいいぞ。急に梃子入れすると気付かれる」
宰相閣下の言う通りだ。今はまだ時期尚早だろう。
「分かった」
「他には?」
「ローズ離宮の地下室のひとつから、魔法陣が見つかった。蜂型偵察機の映像を魔道具に保存したから、解析してくれる?」
「引き受けよう。効果無効に出来る人材がいないのだが、バウンキース殿下にお願いできるか?」
魔法陣と聞いて、魔法師団長はにこやかに請け負ってくれた。この人、俺と同じくらい魔法馬鹿なんだよね。特に魔法陣。
「うん、分かった。あと、その部屋に魔法の本がたくさんあったから、手に入れたいんだけど」
「難しいのか?」
俺が頷くと、魔法師団長はあからさまにがっかりした。
「他には?」
「う~ん。今のところないかな。ああっ!ミナレア王女がネルロワイエ異母兄の部屋や執務室に出入りしてるから、書類とか気を付けて」
「あやつは・・・・。何故、王女を空いている離宮に住まわせないのか、分かっていないのか?」
そんなこと気にするわけがない。それが、ネルロワイエ異母兄のネルロワイエ異母兄たる所以だ。
「王妃様も黙認してるようだし、一線越えるのも時間の問題かもね。異母兄をトロピール王国にあげたら、王妃様は不貞を理由に幽閉すれば?」
「「「「はあ?!」」」」
「不貞だと?!」
あれ?泳がせてるんじゃなかったの?只単に気付いてなかった?
「自国から連れてきた騎士ふたりと大分前からそういう関係だけど?」
「ローズ離宮に潜り込ませている侍女からはそんな報告は受けてないぞ?」
事後の痕跡がないと難しいのか?
「魔法だよ。洗浄して痕跡を消してるし、騎士が相手だと発覚はし難いだろうね。もう少し証拠を集めてから渡すよ」
父様から表情が抜け落ちてるけど、大丈夫かな?今でも時々夕食を共にしてるみたいだし、あんなんでもショックだったか。
「いいことを聞いた。これで、心置きなくカトレアーナのもとに通えるな」
いや、俺たちとは滅多に顔を合わせないだけで、母様のところにはほぼ毎日来てるよね?悪い大人の顔を見せた父様に苦笑いしか出てこなかった。
「よく来たな。学院は順調か?」
「順調だよ」
父様達に報告することは特にないはずだ。
「レンがアンジェリーナ嬢を送迎しているらしいな」
「ああ。そのこと?ネルロワイエ異母兄がミナレア王女を送迎するなら、レン兄様がアンジェリーナ嬢を迎えに行っても問題ないでしょ?」
何度か馬車から降りてくるふたりを見かけたが、レン兄様の蕩ける笑顔に恥じらうアンジェリーナ嬢が尊かったな。馬車の中でイチャコラしてたのが丸わかりだった。
「だが、ネルに見つかるとうるさいぞ?」
「それは、大丈夫。鉢合わせしないように調整してるから」
「相変わらず、その辺は抜かりないな」
「聞きたいのはそれだけ?」
「いや。王妃派の動向と証拠はどうなってる?」
俺は、ほぼオーシャック侯爵家の裏家業を引き継ぎ、諜報員と魔道具を駆使して亡きオーシャック侯爵の敵を討つべく、証拠を集めている。もちろん、父様達も動いているから、着々と証拠は集まっている。でも、まだ足りない。
「ローズ離宮に隠し通路を見つけた。そこから、ビッグタルト侯爵をはじめとする王妃派の貴族が出入りしているのを確認した。護衛が王妃派の騎士で固められているから、顔パスだよ」
「隠し通路?そんなもん、ローズ離宮にあったか?」
「秘密裏に作ったんだよ、騎士団長殿」
「いつの間に・・・・?」
それは、地下室からローズ離宮の裏手にある森に繋がっている。森と離宮は塀で隔てられているが、王宮に入れる者なら森に入るのは容易い。
「いつ分かったんだ?キース」
宰相閣下は、何故報告がない!とお怒りが顔に出ている。
「昨日。余程用心していたんだろうな。地下室に入るまでに何重にも扉がつけられて、その全部に鍵が必要だ。ネズミも容易には侵入できなかった。たまたまビッグタルト侯爵のポケットに入り込んだ蜂型偵察機がいて見つけたんだ」
蝿型盗聴器はつけてたんだけど、音を出さなきゃ意味がなかった。
「キース殿下、入口の場所は何処だ?」
「池があるだろう?そこから南西に500mいくとちいさな祠がある。そこが入口」
「すぐに確認する。ローズ離宮の護衛も見直しがいるな」
「いや、護衛はそのままでいいぞ。急に梃子入れすると気付かれる」
宰相閣下の言う通りだ。今はまだ時期尚早だろう。
「分かった」
「他には?」
「ローズ離宮の地下室のひとつから、魔法陣が見つかった。蜂型偵察機の映像を魔道具に保存したから、解析してくれる?」
「引き受けよう。効果無効に出来る人材がいないのだが、バウンキース殿下にお願いできるか?」
魔法陣と聞いて、魔法師団長はにこやかに請け負ってくれた。この人、俺と同じくらい魔法馬鹿なんだよね。特に魔法陣。
「うん、分かった。あと、その部屋に魔法の本がたくさんあったから、手に入れたいんだけど」
「難しいのか?」
俺が頷くと、魔法師団長はあからさまにがっかりした。
「他には?」
「う~ん。今のところないかな。ああっ!ミナレア王女がネルロワイエ異母兄の部屋や執務室に出入りしてるから、書類とか気を付けて」
「あやつは・・・・。何故、王女を空いている離宮に住まわせないのか、分かっていないのか?」
そんなこと気にするわけがない。それが、ネルロワイエ異母兄のネルロワイエ異母兄たる所以だ。
「王妃様も黙認してるようだし、一線越えるのも時間の問題かもね。異母兄をトロピール王国にあげたら、王妃様は不貞を理由に幽閉すれば?」
「「「「はあ?!」」」」
「不貞だと?!」
あれ?泳がせてるんじゃなかったの?只単に気付いてなかった?
「自国から連れてきた騎士ふたりと大分前からそういう関係だけど?」
「ローズ離宮に潜り込ませている侍女からはそんな報告は受けてないぞ?」
事後の痕跡がないと難しいのか?
「魔法だよ。洗浄して痕跡を消してるし、騎士が相手だと発覚はし難いだろうね。もう少し証拠を集めてから渡すよ」
父様から表情が抜け落ちてるけど、大丈夫かな?今でも時々夕食を共にしてるみたいだし、あんなんでもショックだったか。
「いいことを聞いた。これで、心置きなくカトレアーナのもとに通えるな」
いや、俺たちとは滅多に顔を合わせないだけで、母様のところにはほぼ毎日来てるよね?悪い大人の顔を見せた父様に苦笑いしか出てこなかった。
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