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幼年期編
みんなで仲良く
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俺が、ルナベールと婚約してから、程なくして、マリーテレーズもカルロヴィッツ辺境伯家の令息ナイジェルと婚約した。レンディールと同い年の9歳で、宰相閣下の弟の子、つまり甥になる。カルロヴィッツ辺境伯領は、ビクリアール王国と国境を接する国の要のひとつであり、今後を考えるとここを抑えることは必須だろう。
「ルナ。次は何が食べたい?」
今日は、俺たち兄姉弟とその婚約者を招いてのお茶会が開かれている。アンジェリーナ嬢は厳密にはレン兄様の婚約者ではないけれど、マリーの友人枠で呼んである。そんな中、俺はルナをガッチリ膝の上に確保して、餌付けの真っ最中である。小さなルナが可愛すぎて、一緒に居るときは離れたくない。
「キースは相変わらずね。いい加減、ルナに嫌われるわよ?」
「!そんなことないよね?!ルナ」
慌ててルナを覗き込んだ。
「えっと。キース様を嫌いになんてなりませんけど・・・・は、恥ずかしいですぅ」
ルナが顔を手で覆ってしまった。真っ赤な顔のルナも可愛い。思わず、ぎゅうっと抱き締めてしまった。
「もう!ルナも嫌ならちゃんと言わないと!キースが調子に乗りますわよ!」
「そう言うけどさ。レン兄様だって、アンジェリーナ嬢にあ~んしてるし」
レン兄様は、俺を参考にアンジェリーナ嬢と接しているらしい。どう愛情表現したらいいのか、何度も相談を受けている。
「あの、おふたりはいつもこうなんですか?」
俺たちと初めて過ごすナイジェルことナージュは、目を白黒させていた。ここで言うふたりとは、俺とレン兄様のことだろう。体格もよく若干強面なナイジェルはどちらかというと奥手のようで、俺たちを直視できずに顔も真っ赤だ。なんなら、耳まで赤い。
「ナージュ。私的な場では、もっと砕けていいよ。こちらに滞在中は一緒に学ぶんだ。堅苦しい言葉遣いで騎士団の稽古なんて受けてられないぞ?」
ナージュの領地から王都まで馬車で1月はかかる。だから、半年ごとに往き来することになった。こちらに滞在中は、宰相閣下の邸宅でお世話になる。
「では、お言葉に甘えます」
まだまだ固いが、そのうち慣れるだろう。
「そう言えば、ルナ様は、剣術も体術も嗜むのですね」
「はい。自分の身は自分で守れるようにと、お父様から言われました。キース様とレンディール殿下とマリー様と一緒に訓練しております」
前オーシャック侯爵の方針とはいえ、小さなルナがドレスのまま、大きな騎士に突っ込んでいった時には、度肝を抜かれた。剣術も体術もサボってばかりいるネルロワイエ異母兄より強いと思う。
「わたくしも身を護る術は持つべきだとキースから言われて、剣術はともかく護身術の稽古をつけてもらっておりますわ」
騎士でもない女性が、剣術や体術、護身術を身に付ける事はあまりない。女性は護られる存在だという考えがあるからだ。それに貴族女性は、走りまわることがないから、体力がない。
「わたくしもご一緒しようかしら?」
「アンジュなら大歓迎よ。明日からナージュも加わるし!賑やかになるわね」
「王子妃教育が終わった午後から参加すればいいよ」
レン兄様は柔らかくアンジェリーナ嬢に微笑みかけた。ついでに、髪にも触れている。恥ずかしそうにするアンジェリーナ嬢も微笑ましい。なんて甘酸っぱいのか。翌日から本当にアンジェリーナ嬢が加わった。俺たちと走りまわって遊んでいたから、体力は問題ない。少し離れたところで、マリーたちと無理なく励んでいる。
「気合い入ってるね、レン兄様」
「当たり前だ。アンジュに無様なところは見せられないさ」
とは言いつつも、しこたま扱かれて、終わる頃には俺たち3人はヘロヘロだった。そんな日が続き、何処から聞きつけたのか、珍しくネルロワイエ異母兄が訓練場に顔を出した。そして・・・・。
「アンジェリーナ!おんなに剣の訓練など必要ない!すぐに止めろ。お母様の言う通りだったな。兄上を使ってまで俺にかくま?かま?ってほしいとはな。兄上とのふとい?がはっか?れば、王妃の座から降ろされると思え!」
ふんぞり返って言いたいことを言い終えると、ネルロワイエ異母兄は訓練所を後にした。残された俺たちは、何が起こったんだ?と呆気にとられてしまった。お子ちゃまが『かまってほしい』とか『ふとい』とか『はっか?れば』とか。意味分かってないよな?『不貞が発覚』と言いたかったんだろうけど、全く言えてなかったし。王妃様の入れ知恵とは言え、あまりにも意味不明すぎて、俺たちは暗黙の了解で何もなかったことにした。
「ルナ。次は何が食べたい?」
今日は、俺たち兄姉弟とその婚約者を招いてのお茶会が開かれている。アンジェリーナ嬢は厳密にはレン兄様の婚約者ではないけれど、マリーの友人枠で呼んである。そんな中、俺はルナをガッチリ膝の上に確保して、餌付けの真っ最中である。小さなルナが可愛すぎて、一緒に居るときは離れたくない。
「キースは相変わらずね。いい加減、ルナに嫌われるわよ?」
「!そんなことないよね?!ルナ」
慌ててルナを覗き込んだ。
「えっと。キース様を嫌いになんてなりませんけど・・・・は、恥ずかしいですぅ」
ルナが顔を手で覆ってしまった。真っ赤な顔のルナも可愛い。思わず、ぎゅうっと抱き締めてしまった。
「もう!ルナも嫌ならちゃんと言わないと!キースが調子に乗りますわよ!」
「そう言うけどさ。レン兄様だって、アンジェリーナ嬢にあ~んしてるし」
レン兄様は、俺を参考にアンジェリーナ嬢と接しているらしい。どう愛情表現したらいいのか、何度も相談を受けている。
「あの、おふたりはいつもこうなんですか?」
俺たちと初めて過ごすナイジェルことナージュは、目を白黒させていた。ここで言うふたりとは、俺とレン兄様のことだろう。体格もよく若干強面なナイジェルはどちらかというと奥手のようで、俺たちを直視できずに顔も真っ赤だ。なんなら、耳まで赤い。
「ナージュ。私的な場では、もっと砕けていいよ。こちらに滞在中は一緒に学ぶんだ。堅苦しい言葉遣いで騎士団の稽古なんて受けてられないぞ?」
ナージュの領地から王都まで馬車で1月はかかる。だから、半年ごとに往き来することになった。こちらに滞在中は、宰相閣下の邸宅でお世話になる。
「では、お言葉に甘えます」
まだまだ固いが、そのうち慣れるだろう。
「そう言えば、ルナ様は、剣術も体術も嗜むのですね」
「はい。自分の身は自分で守れるようにと、お父様から言われました。キース様とレンディール殿下とマリー様と一緒に訓練しております」
前オーシャック侯爵の方針とはいえ、小さなルナがドレスのまま、大きな騎士に突っ込んでいった時には、度肝を抜かれた。剣術も体術もサボってばかりいるネルロワイエ異母兄より強いと思う。
「わたくしも身を護る術は持つべきだとキースから言われて、剣術はともかく護身術の稽古をつけてもらっておりますわ」
騎士でもない女性が、剣術や体術、護身術を身に付ける事はあまりない。女性は護られる存在だという考えがあるからだ。それに貴族女性は、走りまわることがないから、体力がない。
「わたくしもご一緒しようかしら?」
「アンジュなら大歓迎よ。明日からナージュも加わるし!賑やかになるわね」
「王子妃教育が終わった午後から参加すればいいよ」
レン兄様は柔らかくアンジェリーナ嬢に微笑みかけた。ついでに、髪にも触れている。恥ずかしそうにするアンジェリーナ嬢も微笑ましい。なんて甘酸っぱいのか。翌日から本当にアンジェリーナ嬢が加わった。俺たちと走りまわって遊んでいたから、体力は問題ない。少し離れたところで、マリーたちと無理なく励んでいる。
「気合い入ってるね、レン兄様」
「当たり前だ。アンジュに無様なところは見せられないさ」
とは言いつつも、しこたま扱かれて、終わる頃には俺たち3人はヘロヘロだった。そんな日が続き、何処から聞きつけたのか、珍しくネルロワイエ異母兄が訓練場に顔を出した。そして・・・・。
「アンジェリーナ!おんなに剣の訓練など必要ない!すぐに止めろ。お母様の言う通りだったな。兄上を使ってまで俺にかくま?かま?ってほしいとはな。兄上とのふとい?がはっか?れば、王妃の座から降ろされると思え!」
ふんぞり返って言いたいことを言い終えると、ネルロワイエ異母兄は訓練所を後にした。残された俺たちは、何が起こったんだ?と呆気にとられてしまった。お子ちゃまが『かまってほしい』とか『ふとい』とか『はっか?れば』とか。意味分かってないよな?『不貞が発覚』と言いたかったんだろうけど、全く言えてなかったし。王妃様の入れ知恵とは言え、あまりにも意味不明すぎて、俺たちは暗黙の了解で何もなかったことにした。
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