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プロローグ
ハッピーエンド?
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レン兄様の腕にそっと手を置いて、側近候補たちの視線を受け流し、アンジェリーナ嬢は、侮蔑の視線をネルロワイエ異母兄に向けた。
「ネルロワイエ殿下は、わたくしとの婚約は望まない、ということ、承知致しました。バウンキース殿下、マリーテレーズ殿下がその証人ですわ」
アンジェリーナ嬢の視線を受けて、俺と双子の姉マリーテレーズは、しっかりと頷いた。
「確かに。ネルロワイエ異母兄様は、アンジェリーナ義姉上との婚約を拒否なさいました」
「ええ。わたくしとキースが証人となりましょう」
「ありがとうございます。ですが!わたくしが虐めをしたことについては、身に覚えの無きこと。証拠を提示していただきたく存じますわ。国の信用に関わりますもの」
「なっ!自分の罪を認めぬとは!なんと傲慢な」
「そうですぅ。わたくしぃ、アンジェリーナが、謝ってくれたらぁ、それでいいんですぅ。国とかぁ、関係ないですぅ」
これのハニトラに引っかかるとか。いくら王女という身分があれど、全てにおいて、アンジェリーナ嬢の方が勝っているというのに。
「ミナレアは、優しいな。こんな人を人とも思わぬ女を許すなど、聖女のようだ」
「ネル様」
ふたりは見つめ合って、自分たちの世界に入っていく。バカバカしくて溜め息が出た。レン兄様も呆れている。
「ハァ。虐めの件については外交問題に発展する可能性がある。故に王女殿下にもご協力いただき、証拠を揃えて提出をしていただきます。こちらも調査致しますが、冤罪であった場合は、国として抗議させていただきます。シモン」
「畏まりました」
レン兄様は、早速、手続きして調査に乗り出すようだ。俺も控えている従者に目配せした。
「ちょっ、ちょっとぉ、待ってください!わたしはぁ!アンジェリーナに謝って貰えれば、いいんですよぉ」
ミナレア王女は慌てて止めに入ったが、既に遅い。アンジェリーナ嬢を陥れようとした輩をレン兄様が許すはずがないのだ。
「王妃となるアンジュの疑いは晴らしておくべきだ。なぁ、ネルロワイエ」
「なっ!何を言っている?!俺に婚約破棄された傷物が王妃になれるわけないだろう!王妃となるのは俺と『真実の愛』を誓ったミナレアだ!」
「そうですぅ」
やはり、何も分かっていないようだ。次期王妃はアンジェリーナ嬢に決まっている。それは、揺るぎようのない事実だ。それに、アンジェリーナ嬢の婚約者は、事実上まだ決まってはいなかった。ネルロワイエ異母兄がこんな茶番をするまでは。
「何を言っている?アンジュは次期王妃だ。アンジュの婚約者となった者が王太子となり、ゆくゆくは、国王となる。そのように父上である陛下から一緒に聞いたはずだし、共に魔法誓約書にサインもしただろう?」
ぽかんと間抜け面を晒すお馬鹿たちに、レン兄様は一瞬だけ侮蔑の視線を送ったが、それ以上の説明はせず、それより一刻も早く既成事実を作ることを優先したようだ。従者から真っ赤なバラの花束を受け取ると、砂糖を吐きそうなほど甘い笑顔でアンジェリーナ嬢の手を取った。何処までも用意周到なことだ。
「アンジュ。やっと、やっと、私だけのアンジュになった。どれだけこの日を待ち望んだか。愛してる、アンジュ。どうか私の伴侶となってくれないか?」
レン兄様は、アンジェリーナ嬢の指先に口吻けた。もはやふたりともお互いしか見えていないらしい。見ているこちらが恥ずかしくなるような光景が繰り広げられている。あちこちから「はぅ」とか「きゃー」とか控えめながら聞こえてくるし、固唾を飲んで見守るとはこのことを言うのだろう。
「わたくしも。漸くあなただけの手を取ることが叶いました。わたくしの伴侶に相応しいのはあなたしかおりません、レン」
涙目のアンジェリーナ嬢を隠すように、レン兄様はアンジェリーナ嬢をしっかりと抱き締めた。薔薇はいつの間にか従者が回収している。俺が手を叩くとこの場は一気に盛り上がり、先程までの重たくしらけた空気は吹き飛び、お祝いムードが広がった。「どういうことぉ?!わたくしぃ、王妃に、なれないのぉ?!」と言うミナレア王女の言葉はレン兄様とアンジェリーナ嬢を祝福する拍手に掻き消されて誰にも聞かれることはなかった。ネルロワイエ異母兄以外には。
「ネルロワイエ殿下は、わたくしとの婚約は望まない、ということ、承知致しました。バウンキース殿下、マリーテレーズ殿下がその証人ですわ」
アンジェリーナ嬢の視線を受けて、俺と双子の姉マリーテレーズは、しっかりと頷いた。
「確かに。ネルロワイエ異母兄様は、アンジェリーナ義姉上との婚約を拒否なさいました」
「ええ。わたくしとキースが証人となりましょう」
「ありがとうございます。ですが!わたくしが虐めをしたことについては、身に覚えの無きこと。証拠を提示していただきたく存じますわ。国の信用に関わりますもの」
「なっ!自分の罪を認めぬとは!なんと傲慢な」
「そうですぅ。わたくしぃ、アンジェリーナが、謝ってくれたらぁ、それでいいんですぅ。国とかぁ、関係ないですぅ」
これのハニトラに引っかかるとか。いくら王女という身分があれど、全てにおいて、アンジェリーナ嬢の方が勝っているというのに。
「ミナレアは、優しいな。こんな人を人とも思わぬ女を許すなど、聖女のようだ」
「ネル様」
ふたりは見つめ合って、自分たちの世界に入っていく。バカバカしくて溜め息が出た。レン兄様も呆れている。
「ハァ。虐めの件については外交問題に発展する可能性がある。故に王女殿下にもご協力いただき、証拠を揃えて提出をしていただきます。こちらも調査致しますが、冤罪であった場合は、国として抗議させていただきます。シモン」
「畏まりました」
レン兄様は、早速、手続きして調査に乗り出すようだ。俺も控えている従者に目配せした。
「ちょっ、ちょっとぉ、待ってください!わたしはぁ!アンジェリーナに謝って貰えれば、いいんですよぉ」
ミナレア王女は慌てて止めに入ったが、既に遅い。アンジェリーナ嬢を陥れようとした輩をレン兄様が許すはずがないのだ。
「王妃となるアンジュの疑いは晴らしておくべきだ。なぁ、ネルロワイエ」
「なっ!何を言っている?!俺に婚約破棄された傷物が王妃になれるわけないだろう!王妃となるのは俺と『真実の愛』を誓ったミナレアだ!」
「そうですぅ」
やはり、何も分かっていないようだ。次期王妃はアンジェリーナ嬢に決まっている。それは、揺るぎようのない事実だ。それに、アンジェリーナ嬢の婚約者は、事実上まだ決まってはいなかった。ネルロワイエ異母兄がこんな茶番をするまでは。
「何を言っている?アンジュは次期王妃だ。アンジュの婚約者となった者が王太子となり、ゆくゆくは、国王となる。そのように父上である陛下から一緒に聞いたはずだし、共に魔法誓約書にサインもしただろう?」
ぽかんと間抜け面を晒すお馬鹿たちに、レン兄様は一瞬だけ侮蔑の視線を送ったが、それ以上の説明はせず、それより一刻も早く既成事実を作ることを優先したようだ。従者から真っ赤なバラの花束を受け取ると、砂糖を吐きそうなほど甘い笑顔でアンジェリーナ嬢の手を取った。何処までも用意周到なことだ。
「アンジュ。やっと、やっと、私だけのアンジュになった。どれだけこの日を待ち望んだか。愛してる、アンジュ。どうか私の伴侶となってくれないか?」
レン兄様は、アンジェリーナ嬢の指先に口吻けた。もはやふたりともお互いしか見えていないらしい。見ているこちらが恥ずかしくなるような光景が繰り広げられている。あちこちから「はぅ」とか「きゃー」とか控えめながら聞こえてくるし、固唾を飲んで見守るとはこのことを言うのだろう。
「わたくしも。漸くあなただけの手を取ることが叶いました。わたくしの伴侶に相応しいのはあなたしかおりません、レン」
涙目のアンジェリーナ嬢を隠すように、レン兄様はアンジェリーナ嬢をしっかりと抱き締めた。薔薇はいつの間にか従者が回収している。俺が手を叩くとこの場は一気に盛り上がり、先程までの重たくしらけた空気は吹き飛び、お祝いムードが広がった。「どういうことぉ?!わたくしぃ、王妃に、なれないのぉ?!」と言うミナレア王女の言葉はレン兄様とアンジェリーナ嬢を祝福する拍手に掻き消されて誰にも聞かれることはなかった。ネルロワイエ異母兄以外には。
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