山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する

紅子

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兄弟子、ほくそえむ

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私は、団長と別れるとすぐに師匠の住処へ急いだ。フィリアの半身が見つかったのだ。真っ先に知らせなければ、叱られるのは私だ。

「師匠!」

「ファビアーノ。ちょうど解析が終わったところよ」

「流石ですね。もう少し掛かるかと思いました」

「あら?それなのに来たの?」

「それが・・・・」

すぐさまフィリアの片翼が見つかったことを師匠に伝えた。その時の歓喜ときたら私の時を遥かに上回る。

「!!!♪そう♪良くやったわ!ファビアーノ!あの子のことだからあと300年は見つからないかと思っていたわ♪」

「ですが、当のフィリアは気付いておりません」

「いいのよ。人間の方には手応えがあるんでしょう?」

「フフフ、それはもう。相当な可愛がりようですよ。私以上の過保護ぶりです」

「なら、問題ないわ。その人間が死ぬまでまだ時間はあるし。あとは、あの子が自分の中の力に目覚めるだけね」

「そうですね」

私と師匠は密かにほくそえんだのだった。



その後、師匠から例の魅力魔法の解析の結果を聞かされた。それはかなり厄介なものだった。そして今からあの間抜けな王子達の処遇を決める話し合いが行われる。今日は、婚約破棄された令嬢の父兄の他にも王子の取り巻きとして騒動に加担した令息の父親も来ることになっている。私が陛下の執務室に入ると既に全員が揃っていて、人払いも済ませてあった。ガルザムがこの場にいるのは、近衛の団長に代わって、ということだろう。あまり広めたい話しではないからな。

「遅くなりました」

「よく来てくれた。座ってくれ」

私は、さっさと自分のために用意されている椅子に腰掛けた。ここには、ファビアーノとしてではなく、魔女として来ている。

「早速ですが、魅了魔法の詳細な効果をお伝えします。今回の魅了魔法は、まず、ただ掛けられただけなら数日でその効果は切れます。毎日掛けられていたとしても10日もあれば、自然に解呪され正気に戻るため、たいした脅威はありません」

「だが、あれから半月以上経っておりますが、私の息子は未だに解けた様子はありませんが?」

「私の息子もだ」

「ええ、我が息子もです」

「そうだな」

「ええ。ですから、ただ掛けられただけと申しました」

「「「「???」」」」

「魅了の使い手、この場合は、男爵令嬢ですが、と関係を持ってしまうと魅了魔法が身体の内側に固定され、人にはどうにもできなくなります。魔女に頼んで解呪してもらう必要がありますが・・・・知っての通り、聞き入れられるかは魔女次第です。そして、これがこの男爵令嬢の魅了の恐ろしいところですが、解呪しても関係を持った回数によっては廃人となり得ます。・・・・若しくは、自然と解呪されるのを待つことも可能です。但しその場合は、解呪に30年以上掛かる上に、魅了をかけた相手に会うことはご法度。その為、数年で精神を病むと予想されます。それほどに強い魔法なのです。彼女を襲ったという破落戸達がそのいい例ですね。過去に彼女と関係を複数回持ち魅了に抗えなくなった彼らは、彼女を求めて度々男爵邸の周りを徘徊していたようです」

「「「「・・・・」」」」

どの親も顔色をなくしている。だが、本題はここからだ。嫌な役だが、これも魔女の仕事だと割りきるしかない。

「それで、皆さんのご子息ですが・・・・」

一度言葉を切り、ひとりひとりの顔を確認する。どの親も固唾を飲んで次の言葉を待っているのが分かった。

「皆さん、関係を持っています。それも複数回」

「あ、あああああ!何と言うことだ!」

「あの馬鹿が!」

「・・・・」

「クソッ・・・・」

「結論から言うと第3王子、クレマン侯爵子息、バレリー伯爵子息、ドミニコ伯爵子息への解呪は可能です。今回の件は、我々魔女の体面もありますから私がお引き受けします。対価は不要です」

「解呪が可能ということは、廃人にはならないんだな?」

国王の言葉に、私は首を横に振った。

「全員、何らかの後遺症が出ます。読み書き計算は出来なくなるでしょう。記憶障害に依るものですから今後覚えることは難しいとお考えください。また、記憶力が著しく低下するため普通の生活は営めません」

「そんな・・・・」

「最も深刻なのは、キンバス男爵です。間違いなく廃人となるでしょう。彼は、キンバス男爵令嬢となる前の彼女とご自分の領の酒場で出会い、魔法を掛けられた。夫人とご子息は、男爵がその娘を養女にすると決めた時点で、離縁し実家に帰りましたから彼女とは会っていません。彼らも被害者、と言えばそうなのかもしれませんね」

誰も何も言えなくなったようだ。

「魅了魔法でキンバス男爵を操り、養女となったことを考えても、魅了魔法の効果を正確に把握していたかはともかく、ある程度は自分の魔法でどのようなことになるかは分かっているでしょうね。その上で、第3王子や高位貴族の子息にそれを使用した彼女の思惑ですが、・・・・。ですので、魔女の仕事としても私から魔術具を渡すことに異議はありませんね?」

「そんなことのために・・・・」

「愚かな息子だが、・・・・。」

本当に、そんなこと、だ。
どの親も怒りの矛先を件の令嬢に向けつつも、どうにもできない苛立ちが握られた拳から伝わってくる。

「・・・・。我が国を虚仮にした件の娘だが、ファビアーノ殿が魔女の仕事として魔術具を着けるのはかまわない。明日の夜会で場を設けよう」

「承知しました。では、私はここで失礼致します」

キンバス男爵や第3王子、その取り巻きの処遇についても話し合いが持たれるようだが、私には関係ない。早々にその場を辞し、我が家へと戻ることにした。
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