1 / 22
子にゃんこ、山賊に保護される
しおりを挟む
「フィリア!居るのは分かってるのよ。出てらっしゃい。今日こそは、ここを出て人の中に修行に行ってもらうわよ!」
嫌だぁー!私はこの森に居られれば幸せなのよ。魔女の掟なんて知らない!
私は物置の奥にじっと隠れて、師匠のアルテが帰るのを待った。だが、しかし、そうは問屋が卸さない。私のことなどお見通しの師匠はすぐに私を見つけ出し、容赦なく引きずり出した。
「いやー!やだやだ。私はここに居るの~!」
「だから、人の中で修行しないと、魔女じゃなくなるのよ!そうしたら、貴女は消えちゃうの!人と魔女の差を学んでらっしゃい!あわよくば、貴女と魔力の相性がいい相手も捕まえるのよ?」
「でもでも、人、怖いー!私はここで消えていくの~」
師匠は、イライラマックスの顔で私に魔法を施してきた。
「んも~!!!せっかく見つけてここまで育てたんだから、きっちり修行してもらいます!その身体の間はここへは戻れないから。それに、自分のためには命の危険でもない限り、最低限の魔法しか使えないわ。でも、そうね。ひとりではここから出ていけそうもないから、ここまで迎えを寄越すから。そのあとは、好きにすればいいわ。修行が終われば元に戻るから。じゃあね♪」
「にゃ、にゃにゃ~ん!にゃあ~!」
し、師匠~!置いてかないで!
え?にゃあ?
私は慌てて自分を見た。見下ろしたそこにあるのは、白い毛に覆われたぽっこりのお腹と目の端に映るピンとしたお髭。そして、くるんと身体に沿って丸まったしっぽ。
急いで鏡の前に走った。そこにいたのは、紛れもなくネコ。しかも、子ネコ。白い体毛に金の瞳の子ネコ。しかも、可愛い。
・・・・。
子ネコ・・・・?
師匠、なんで子ネコ?
白いふわふわのおけけとピンクの肉球がぷりちー♪
「なぁ・・・・」
ハァ・・・・
私が自分を認識したのを見届けたかのように、「ぽん!」と音をたてて、私の大切な大切な家が消えた。
消えた・・・・消えた・・・・。
「ふにゃあーーーーー!!!!にゃあにゃあにゃあーーー!!!」
いやーーーーー!!!!私の家を返してーーー!!!
「にゃあーーー!」
どうしろっていうのーーー!
もう、どうにでもなれ!と、私は家があった場所で子ネコのまま、ふて寝することにした。まあ、師匠が誰かを寄越すって言ってたし、たぶんファビアーノだから見つけたら連れていってくれるでしょう。
そして、目が覚めて青褪めた。
「にゃ!にやあにゃにゃにゃなああああ!」
師匠!なんでよりによって山賊なんて寄越すの~!
「お、起きたな。こらこら、そんなに暴れると落ちるぞ。おまえ、あんなところで昼寝なんてしてたら、危ないだろう?俺が通りかかったからよかったものの、魔獣に襲われるぞ。なんであんなところにいたんだ?」
あれ?あの辺りは魔女の縄張りだから、魔獣は来れないはず。それに、人間も。ましてや山賊なんて、途中でお帰り願うようになってるはずなのに、なんで?
私は寝ていたから気づかなかった。師匠の依頼を受けた師匠の弟子、私の兄弟子が私を人間でも入り込める森の中に運び放置したことを。兄弟子よ、私が魔獣に襲われてたら呪ってやったのに!
「フシャーーー!!!」
おろせーーー!!!
「おい、助けてやったのに、威嚇するなよ。ああ、よしよし、怖かったんだな?」
「ブミャア!!!」
お前がな!!!
「そうかそうか。可愛いなぁ。もうすぐ、俺の仲間と合流できるからな。そしたら、王都に一緒に連れていってやる。お前、野良だろう?安心しろ、ちゃんと飼ってやるからな」
「びみ″ゃー。みゃみゃみゃ」
やめてー。スリスリしないで。
この山賊にもふもふスリスリされながら暫く行くと、開けた場所に出た。その間この山賊は私に甘々、デレデレ。赤ちゃん言葉じゃないだけましかもしれないけど、さすがに引く。山賊の掌から辛うじて開いている目をキョロキョロ動かして辺りを伺った。そこには、結構な数の男と女がのんびりとくつろいでいる。大きな荷物もたくさんあった。あれ?山賊じゃない?
「団長!何処まで行ってるんですか!もう出発の用意は整ってますよ!団長待ちです!」
この山賊は団長だそうだ。マジか・・・・。ということは、山賊ではなくて騎士?私にもそのくらいの常識はある。家に引きこもっていたとはいえ、師匠が教えてくれたし、何より、魔女は自分の生きた人生全ての記憶があるのだ。忘れていることも多々あるけど・・・・。服装で気づけ!というのは受け付けない。私には、この山賊の顔しか見えなかったんだから。
騎士より山賊の方がピンとくるよね。こんな凶悪な顔、なかなかお目にかかれないよ。うわー、山賊の騎士団長、ないわー。いや、ありなのか?見ただけで逃げ出す仕様なのか?
私は山賊改め団長にもふもふスリスリされ過ぎて、グッタリと団長の手の中で寝そべりながら、どうでもいいことを考えていた。その間も団長は、私をもふり続けている。
「悪かったな。こいつを森の中で見つけたもんだから、保護してきた」
団長に声を掛けた男の人は手の中でグッタリとしている私を見て、顔をひきつらせた。
「・・・・団長。その子ネコは、死にかけだったんですか?」
「いや、ただ寝てたところを捕まえた」
「・・・・死にかけてますよ?」
「えっ!!!うわー!!!しっかりしろ!」
もふもふスリスリし過ぎなんだよ!
「死なせたくなければ、僕に渡すか、ポケットに入れて休ませてください。いいですね?お触り禁止です!」
団長は「わかった」と言うとすぐさま私を自分の胸ポケットに仕舞った。
ふうー、やっと休める。ありがとう、名も知らぬ青年騎士よ!
適度に暖かいポケットの中は居心地がよく、子にゃんこの私はほどなく眠りに落ちた。
嫌だぁー!私はこの森に居られれば幸せなのよ。魔女の掟なんて知らない!
私は物置の奥にじっと隠れて、師匠のアルテが帰るのを待った。だが、しかし、そうは問屋が卸さない。私のことなどお見通しの師匠はすぐに私を見つけ出し、容赦なく引きずり出した。
「いやー!やだやだ。私はここに居るの~!」
「だから、人の中で修行しないと、魔女じゃなくなるのよ!そうしたら、貴女は消えちゃうの!人と魔女の差を学んでらっしゃい!あわよくば、貴女と魔力の相性がいい相手も捕まえるのよ?」
「でもでも、人、怖いー!私はここで消えていくの~」
師匠は、イライラマックスの顔で私に魔法を施してきた。
「んも~!!!せっかく見つけてここまで育てたんだから、きっちり修行してもらいます!その身体の間はここへは戻れないから。それに、自分のためには命の危険でもない限り、最低限の魔法しか使えないわ。でも、そうね。ひとりではここから出ていけそうもないから、ここまで迎えを寄越すから。そのあとは、好きにすればいいわ。修行が終われば元に戻るから。じゃあね♪」
「にゃ、にゃにゃ~ん!にゃあ~!」
し、師匠~!置いてかないで!
え?にゃあ?
私は慌てて自分を見た。見下ろしたそこにあるのは、白い毛に覆われたぽっこりのお腹と目の端に映るピンとしたお髭。そして、くるんと身体に沿って丸まったしっぽ。
急いで鏡の前に走った。そこにいたのは、紛れもなくネコ。しかも、子ネコ。白い体毛に金の瞳の子ネコ。しかも、可愛い。
・・・・。
子ネコ・・・・?
師匠、なんで子ネコ?
白いふわふわのおけけとピンクの肉球がぷりちー♪
「なぁ・・・・」
ハァ・・・・
私が自分を認識したのを見届けたかのように、「ぽん!」と音をたてて、私の大切な大切な家が消えた。
消えた・・・・消えた・・・・。
「ふにゃあーーーーー!!!!にゃあにゃあにゃあーーー!!!」
いやーーーーー!!!!私の家を返してーーー!!!
「にゃあーーー!」
どうしろっていうのーーー!
もう、どうにでもなれ!と、私は家があった場所で子ネコのまま、ふて寝することにした。まあ、師匠が誰かを寄越すって言ってたし、たぶんファビアーノだから見つけたら連れていってくれるでしょう。
そして、目が覚めて青褪めた。
「にゃ!にやあにゃにゃにゃなああああ!」
師匠!なんでよりによって山賊なんて寄越すの~!
「お、起きたな。こらこら、そんなに暴れると落ちるぞ。おまえ、あんなところで昼寝なんてしてたら、危ないだろう?俺が通りかかったからよかったものの、魔獣に襲われるぞ。なんであんなところにいたんだ?」
あれ?あの辺りは魔女の縄張りだから、魔獣は来れないはず。それに、人間も。ましてや山賊なんて、途中でお帰り願うようになってるはずなのに、なんで?
私は寝ていたから気づかなかった。師匠の依頼を受けた師匠の弟子、私の兄弟子が私を人間でも入り込める森の中に運び放置したことを。兄弟子よ、私が魔獣に襲われてたら呪ってやったのに!
「フシャーーー!!!」
おろせーーー!!!
「おい、助けてやったのに、威嚇するなよ。ああ、よしよし、怖かったんだな?」
「ブミャア!!!」
お前がな!!!
「そうかそうか。可愛いなぁ。もうすぐ、俺の仲間と合流できるからな。そしたら、王都に一緒に連れていってやる。お前、野良だろう?安心しろ、ちゃんと飼ってやるからな」
「びみ″ゃー。みゃみゃみゃ」
やめてー。スリスリしないで。
この山賊にもふもふスリスリされながら暫く行くと、開けた場所に出た。その間この山賊は私に甘々、デレデレ。赤ちゃん言葉じゃないだけましかもしれないけど、さすがに引く。山賊の掌から辛うじて開いている目をキョロキョロ動かして辺りを伺った。そこには、結構な数の男と女がのんびりとくつろいでいる。大きな荷物もたくさんあった。あれ?山賊じゃない?
「団長!何処まで行ってるんですか!もう出発の用意は整ってますよ!団長待ちです!」
この山賊は団長だそうだ。マジか・・・・。ということは、山賊ではなくて騎士?私にもそのくらいの常識はある。家に引きこもっていたとはいえ、師匠が教えてくれたし、何より、魔女は自分の生きた人生全ての記憶があるのだ。忘れていることも多々あるけど・・・・。服装で気づけ!というのは受け付けない。私には、この山賊の顔しか見えなかったんだから。
騎士より山賊の方がピンとくるよね。こんな凶悪な顔、なかなかお目にかかれないよ。うわー、山賊の騎士団長、ないわー。いや、ありなのか?見ただけで逃げ出す仕様なのか?
私は山賊改め団長にもふもふスリスリされ過ぎて、グッタリと団長の手の中で寝そべりながら、どうでもいいことを考えていた。その間も団長は、私をもふり続けている。
「悪かったな。こいつを森の中で見つけたもんだから、保護してきた」
団長に声を掛けた男の人は手の中でグッタリとしている私を見て、顔をひきつらせた。
「・・・・団長。その子ネコは、死にかけだったんですか?」
「いや、ただ寝てたところを捕まえた」
「・・・・死にかけてますよ?」
「えっ!!!うわー!!!しっかりしろ!」
もふもふスリスリし過ぎなんだよ!
「死なせたくなければ、僕に渡すか、ポケットに入れて休ませてください。いいですね?お触り禁止です!」
団長は「わかった」と言うとすぐさま私を自分の胸ポケットに仕舞った。
ふうー、やっと休める。ありがとう、名も知らぬ青年騎士よ!
適度に暖かいポケットの中は居心地がよく、子にゃんこの私はほどなく眠りに落ちた。
10
お気に入りに追加
157
あなたにおすすめの小説

【完結】死の4番隊隊長の花嫁候補に選ばれました~鈍感女は溺愛になかなか気付かない~
白井ライス
恋愛
時は血で血を洗う戦乱の世の中。
国の戦闘部隊“黒炎の龍”に入隊が叶わなかった主人公アイリーン・シュバイツァー。
幼馴染みで喧嘩仲間でもあったショーン・マクレイリーがかの有名な特効部隊でもある4番隊隊長に就任したことを知る。
いよいよ、隣国との戦争が間近に迫ったある日、アイリーンはショーンから決闘を申し込まれる。
これは脳筋女と恋に不器用な魔術師が結ばれるお話。

【完結】べつに平凡な令嬢……のはずなのに、なにかと殿下に可愛がれているんです
朝日みらい
恋愛
アシェリー・へーボンハスは平凡な公爵令嬢である。
取り立てて人目を惹く容姿でもないし……令嬢らしくちゃんと着飾っている、普通の令嬢の内の1人である。
フィリップ・デーニッツ王太子殿下に密かに憧れているが、会ったのは宴会の席であいさつした程度で、
王太子妃候補になれるほど家格は高くない。
本人も素敵な王太子殿下との恋を夢見るだけで、自分の立場はキチンと理解しているつもり。
だから、まさか王太子殿下に嫁ぐなんて夢にも思わず、王妃教育も怠けている。
そんなアシェリーが、宮廷内の貴重な蔵書をたくさん読めると、軽い気持ちで『次期王太子妃の婚約選考会』に参加してみたら、なんと王太子殿下に見初められ…。
王妃候補として王宮に住み始めたアシュリーの、まさかのアツアツの日々が始まる?!
【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。
美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?

虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜
ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」
あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。
「セレス様、行きましょう」
「ありがとう、リリ」
私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。
ある日精霊たちはいった。
「あの方が迎えに来る」
カクヨム/なろう様でも連載させていただいております
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください
楠結衣
恋愛
田舎の薬屋に生まれたエリサは、薬草が大好き。薬草を摘みに出掛けると、怪我をした一匹の子犬を助ける。子犬だと思っていたら、領主の息子の狼獣人ヒューゴだった。
ヒューゴとエリサは、一緒に薬草採取に出掛ける日々を送る。そんなある日、魔王復活の知らせが世界を駆け抜け、神託によりヒューゴが勇者に選ばれることに。
ヒューゴが出立の日、エリサは自身の恋心に気づいてヒューゴに告白したところ二人は即結婚することに……!
「エリサを泣かせるなんて、絶対許さない」
「エリサ、愛してる!」
ちょっぴり鈍感で薬草を愛するヒロインが、一途で愛が重たい変態風味な勇者に溺愛されるお話です。
【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした
楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。
仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。
◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪
◇全三話予約投稿済みです
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる