不憫な貴方を幸せにします

紅子

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エピローグ

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それからは、大変だった。領地にいる両親は寝耳に水の話に、領地から2歳の弟を連れて急いでやって来た。

「ティナ!!!これはどういうことだ?!」

王家からの書状を手に私の部屋に駆け込んできたお父様。真っ青な顔をしている。

「お父様、いらっしゃいませ?」

領地から駆けつけたお父様には「お帰りなさいませ」が正しかったか?どっちだろう。

「何故そんなに冷静なのだ?!ここに、ここにティナの名前が、ある。相手は第1王子殿下となっているが、間違いないのか?!」

「はい。間違いありませんわ。この間、陛下とお会いして認めていただきました」

あっ。お父様が倒れた。後ろにいたセルマが受け止めている。何処に倒れる要素があった?

「お嬢様。もう少し、言葉を選んでお話し頂きたく存じます」

「セル、セルマ。夢では、夢ではないのだな?私の天使が第1王子殿下の婚約者となってしまったのだな。・・・・ああ。そんな。王室に嫁ぐだなんて、苦労しかないのに」

お父様、さすがにそれは不敬です。みなさん、苦労しかないのを承知の上で嫁ぐんですよ?・・・・・・ねぇ?

「王室に嫁ぐといっても、我が領にある王家所有の別荘を新居にいただけるそうです。婚姻後は大公を賜る予定ですわ」

「そうなのか?それなら、うちから近くて安心だな」

お父様は、ほっと息を吐いた。そんなに心配なのかな?私、ちゃんと淑女してるよ?

「・・・・第1王子殿下との婚約については反対なさらないんですね?」

以前に見た目の問題で婚約者が出来ないと言いませんでしたか?

「ティナが承知しているなら反対はしない。既に殿下とは面識を得ているんだろう?その上で失神したり神殿に駆け込もうと思わないなら問題ないな。王家からの離れるなら苦労も減る。なにより、我が家から近いのがいい」

「近いうちに第1王子殿下を屋敷にお連れいたしますね?」

「・・・・それは・・・・」

お父様の顔がさっと分かりやすく引きつった。後ろに控えるセルマも青い顔をしている。

「庭で、できる限り遠くなるように席を配置することで妥協しましょう?会わないわけにはいかないのですから」

「そうだな。不敬にならない程度には距離を取ろう」

それくらいならグランも傷つかないと思う。自分が避けられたり、相手を気絶させてしまうのは、外見でなく、魔力が強すぎるからだと判明したのだから。強大な力に恐れ戦くのは本能だから仕方ないと受け入れられる。


そして、顔合わせ当日。私は気乗りしないグランを宥めすかして我が家へ招待した。

「やはり、迷惑だから、今からでも遅くない。帰らないか?」

「もう!腹をくくりなよ、グラン。ああ、ちょっとだけ距離があるのは許してね?」

渋々、庭の用意された席まで来ると、グランは固まった。お父様たちとの距離が遙か遠い。怒鳴り合うわけにもいかず、守護精霊を介しての会話となるのはどうなんだろうか?

「ごめんね?グランの魔力の影響がない距離にしたら、こうなったの」

「いや、この方が落ち着く。近すぎると緊張で倒れそうだ」

最善だったようだ。主催者と招待客揃って気絶とか、笑えない。お母様と弟は屋敷の2階から見ているはずだ。ちょっと変わった顔合わせは1時間ほどで和やかに終了。殆ど私とお父様が会話し、グランは「ああ」とか「そうです」とか「もちろんです」くらいしか話していなかった。内容はともかく、顔は合わせた。この事実が重要。自宅に戻りやっと身体の力が抜けたグランから彼女たちのその後が語られた。

「デリバティ公爵家のスザンナ嬢は、毒蛇と毒蜘蛛を王宮内に引き入れ、毒の入ったお菓子を持ち込んだとして、貴族位を剥奪の上、医療向上施設に送られた。実質の死刑だね。デリバティ公爵家は毒のある生物を多数屋敷で飼育していたことから、当主の交替と伯爵に格下げ。領地の半分を没収。ムスケール侯爵家のマリアンヌ嬢は、毒物を王宮に持ち込んだ罪、侍女を買収して毒を盛らせた罪、毒を購入した罪、暗殺者を王宮に潜ませた罪で、貴族位を剥奪の上、処刑。ムスケール侯爵家は、裏社会との繋がりが明るみに出た。犯罪も数知れず。関わった者は極刑。ムスケール侯爵家は取り潰しだ。裏社会の解体の足がかりになったとはいえ、悪質すぎる」

私はグランの膝の間から、逞しく鍛えられた胸にぺったりと張り付いてそれを聞いた。プヨプヨしかいないこの世界で、硬いこの胸筋は宝物だ。誰にも触らせるつもりはない。

「聞いてる?」

「うん。妥当じゃないかな?王宮には陛下も王子殿下たちもいるんだから、国家転覆罪を適用出来ちゃう」

「そうだな。それが分からない者が王室に入ることはない」

「結局さ。エルフィント殿下とライオネル殿下の婚約者は決まったの?」

「エルフィントは隣国の王女と、ライオネルはもう少しご令嬢たちの動向を観察したいそうだよ」

クラッシア公爵令嬢とミノーグ公爵令嬢は、大変な思いをしただけかぁ。グランを譲る気はないけどね。そっとグランを見上げると、視界一杯にグランが広がった。

「チュッ」

え?

「チュッ」

ふえええ?!

「この間のお返し」

不意打ちの優しく唇に触れるだけの口づけに、私の顔は急速に熱を帯びた。悪戯が成功して意地悪く笑うグランの顔が瞳に映る。真っ赤なのは私と同じ。

「じゃあ、お返しのお返し」

まだまだ、初々しいだけの口づけだけど、私たちはお互いに理想の相手を手に入れて、誰からも理解されない2人だけの世界でキャッキャウフフとするのだろう。

先祖返りの醜男美丈夫と異世界の記憶を持つ美少女子豚ちゃん割れ鍋に綴じ蓋的宿命な愛の物語は、めでたしめでたしで幕を下ろす。










~END~













最後までお読みいただき、ありがとうございました\(^o^)/
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