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針の筵
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あれから、私はグランと別れた後、会場には戻らずに帰宅した。折角グランと恥ずかしくも、うれしたのし大好きな時間を過ごしたのに、水を差されたくなかった。
翌日、王宮を訪れると、廊下のそこかしこからヒソヒソと声が漏れ聞こえてくる。婚約者候補たちの取り巻きと侍女たちのようだ。
「あら、見た目だけの伯爵家の令嬢が来ましたわよ」
「嫌だわ。守護精霊2体と同時に契約したというだけで選ばれただけはありますわね」
「まあ、挨拶もないなんて、きちんとマナーを学ばれたのかしら?」
「殿下たちに気に入られたからって調子に乗ってますのよ、きっと」
婚約者候補たちは、あからさまに攻撃してきた。お茶会の翌日から私たちは、王宮で自宅での淑女教育よりも更に高等なことを学ぶことになっている。個人ではなく集団で学ぶのは、切磋琢磨を期待してのことだろう。今ここにいるのは、5人。エルフィント殿下と同じ歳の公爵家のご令嬢が2人。ライオネル殿下と同じ歳の侯爵家のご令嬢が1人。私と同じ歳の公爵家のご令嬢が1人。それに私。
「皆さま、ご機嫌よう」
それだけ言うと、すっと壁に寄った。一番身分の低い私は彼女たちが座ってくれないと席にも着けない。そこで聞こえるように私の陰口を言うくらいなら早く王子たちを落としてほしいものだ。せいぜい、4人で切磋琢磨して立派な王太子妃、王子妃になってくれることを祈る。
「皆さま、席についてくださいませ」
いよいよ本格的な王子妃の実践教育が始まった。4人とも真剣に取り組んでいる。私も落第しない程度には頑張るつもりだ。もちろん、グランのために。
「さあ、今日からは自国の貴族を招いての大規模なお茶会を想定して準備を進めてもらいます。あなたがたは王子妃ですから、それ相応の品格を持って開催しなければなりません。当日にお出しする飲み物や食べ物はもちろん、事前準備も重要です。まずは、招待状を認めるところから始めましょう」
ああ。なんか教えてもらったら記憶がある。まずは、招く貴族家の選定からか。・・・・あれ?私、グランの嫁になった後って、お茶会開く必要あるのかな?グランに必要なくても私に必要なのか。どうなんだろう。グランに聞いてみよう。
「ベルティナ様。集中しておられないようですが、進んでおりますか?」
「申し訳ございません」
クスクスとあざ嗤う4人の顔が見えた。どうしても私にダメージを与えたいようだ。思うところはあるけれど、今は集中することにした。この貴族家の選定に午前中を費やし、それで終わるわけもなく、午後の自主学習を使って、それぞれの家について調べることになった。昼餐の時間も気を抜けない。食事を美しく食べる練習の時間の始まりだ。それが終わると、自主学習となり、帰宅も出来る。
そんな日が何日も続き、私の被害も大きくなってきた。嫌みだけではなく、ノートを破られるだとかはかわいいもの。廊下を歩けば水が降り注ぎ、庭を散歩すれば毒蛇や毒蜘蛛が撒き散らされる。今日なんて矢が射かけられた。どれも犯人は分かっている。ザクロとライムの能力の高さをなめてはいけない。命の危機を感じ始めた矢先。
「やあ」
「お疲れ様」
「まあ!エルフィント殿下。ライオネル殿下」
「「「「ご機嫌よう」」」」
「少しでも親睦を深めようと思ってね」
「お茶でもどうかな?」
「「「「是非」」」」
帰りたい。
「ベルティナ嬢は、こちらにどうぞ」
「あの、本日はわたくし、お暇をさせていただきたく」
「そんなに長い時間じゃないから。私たちもなかなか時間をとれないしさ」
「ちょっとくらいいいよね?」
「は、はい」
はは。明日あたり死ぬな、私。
ここまで言われて帰れるわけがない。私、殺されそうになったんだけど、聞いてないのかな?気遣いの出来ない2人に挟まれて、またも甲斐甲斐しく世話を焼かれる。放っておいてくれとも言えず、更にご令嬢たちの恨みを買うことになってしまった。今回は抜け出すことも出来ず、1時間ほど針の筵で過ごす羽目に。本当に死ぬな、私。
「グラン、明日一緒に王宮に行って?だめ?」
お茶会が終わるとすぐに自宅からグランの離宮に転移した。私の癒し。むぎゅうっとグランに抱きついた。
「どうした?珍しいな、そんなこと言うなんて」
「そろそろ、身の危険を感じる。今日は、矢が飛んできた」
「なんだって?!」
「ザクロとライムが全部防いでくれたから」
「そういう問題じゃなくて、王宮内でそんなことが起こることが問題なんだ。分かった。明日迎えに行く」
グランは私の隠れた意図も読み取り、承諾してくれた。これで丸く収まるといい。暫くの間、温かいグランの腕の中で、私は疲れを癒やした。
翌日、王宮を訪れると、廊下のそこかしこからヒソヒソと声が漏れ聞こえてくる。婚約者候補たちの取り巻きと侍女たちのようだ。
「あら、見た目だけの伯爵家の令嬢が来ましたわよ」
「嫌だわ。守護精霊2体と同時に契約したというだけで選ばれただけはありますわね」
「まあ、挨拶もないなんて、きちんとマナーを学ばれたのかしら?」
「殿下たちに気に入られたからって調子に乗ってますのよ、きっと」
婚約者候補たちは、あからさまに攻撃してきた。お茶会の翌日から私たちは、王宮で自宅での淑女教育よりも更に高等なことを学ぶことになっている。個人ではなく集団で学ぶのは、切磋琢磨を期待してのことだろう。今ここにいるのは、5人。エルフィント殿下と同じ歳の公爵家のご令嬢が2人。ライオネル殿下と同じ歳の侯爵家のご令嬢が1人。私と同じ歳の公爵家のご令嬢が1人。それに私。
「皆さま、ご機嫌よう」
それだけ言うと、すっと壁に寄った。一番身分の低い私は彼女たちが座ってくれないと席にも着けない。そこで聞こえるように私の陰口を言うくらいなら早く王子たちを落としてほしいものだ。せいぜい、4人で切磋琢磨して立派な王太子妃、王子妃になってくれることを祈る。
「皆さま、席についてくださいませ」
いよいよ本格的な王子妃の実践教育が始まった。4人とも真剣に取り組んでいる。私も落第しない程度には頑張るつもりだ。もちろん、グランのために。
「さあ、今日からは自国の貴族を招いての大規模なお茶会を想定して準備を進めてもらいます。あなたがたは王子妃ですから、それ相応の品格を持って開催しなければなりません。当日にお出しする飲み物や食べ物はもちろん、事前準備も重要です。まずは、招待状を認めるところから始めましょう」
ああ。なんか教えてもらったら記憶がある。まずは、招く貴族家の選定からか。・・・・あれ?私、グランの嫁になった後って、お茶会開く必要あるのかな?グランに必要なくても私に必要なのか。どうなんだろう。グランに聞いてみよう。
「ベルティナ様。集中しておられないようですが、進んでおりますか?」
「申し訳ございません」
クスクスとあざ嗤う4人の顔が見えた。どうしても私にダメージを与えたいようだ。思うところはあるけれど、今は集中することにした。この貴族家の選定に午前中を費やし、それで終わるわけもなく、午後の自主学習を使って、それぞれの家について調べることになった。昼餐の時間も気を抜けない。食事を美しく食べる練習の時間の始まりだ。それが終わると、自主学習となり、帰宅も出来る。
そんな日が何日も続き、私の被害も大きくなってきた。嫌みだけではなく、ノートを破られるだとかはかわいいもの。廊下を歩けば水が降り注ぎ、庭を散歩すれば毒蛇や毒蜘蛛が撒き散らされる。今日なんて矢が射かけられた。どれも犯人は分かっている。ザクロとライムの能力の高さをなめてはいけない。命の危機を感じ始めた矢先。
「やあ」
「お疲れ様」
「まあ!エルフィント殿下。ライオネル殿下」
「「「「ご機嫌よう」」」」
「少しでも親睦を深めようと思ってね」
「お茶でもどうかな?」
「「「「是非」」」」
帰りたい。
「ベルティナ嬢は、こちらにどうぞ」
「あの、本日はわたくし、お暇をさせていただきたく」
「そんなに長い時間じゃないから。私たちもなかなか時間をとれないしさ」
「ちょっとくらいいいよね?」
「は、はい」
はは。明日あたり死ぬな、私。
ここまで言われて帰れるわけがない。私、殺されそうになったんだけど、聞いてないのかな?気遣いの出来ない2人に挟まれて、またも甲斐甲斐しく世話を焼かれる。放っておいてくれとも言えず、更にご令嬢たちの恨みを買うことになってしまった。今回は抜け出すことも出来ず、1時間ほど針の筵で過ごす羽目に。本当に死ぬな、私。
「グラン、明日一緒に王宮に行って?だめ?」
お茶会が終わるとすぐに自宅からグランの離宮に転移した。私の癒し。むぎゅうっとグランに抱きついた。
「どうした?珍しいな、そんなこと言うなんて」
「そろそろ、身の危険を感じる。今日は、矢が飛んできた」
「なんだって?!」
「ザクロとライムが全部防いでくれたから」
「そういう問題じゃなくて、王宮内でそんなことが起こることが問題なんだ。分かった。明日迎えに行く」
グランは私の隠れた意図も読み取り、承諾してくれた。これで丸く収まるといい。暫くの間、温かいグランの腕の中で、私は疲れを癒やした。
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