不憫な貴方を幸せにします

紅子

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生理的に無理

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王宮の顔合わせは、グランの言っていたとおり、集団お見合いだった。伯爵以上の貴族階級を持つ子息令嬢たちがわんさかいる。みんな、ぷくぷく。ぶよんぶよん。股擦れをおこしてないかな?っていうくらいの膨らみ具合。潰れた鼻に埋もれた目。ハムのような指。いくら見た目じゃない、と思ってみても・・・・。ふえーん。グランに会いたいよう!

「今日は息子たちのために集まってくれてありがとう。皆さまの未来が明るいものとなるよう、是非出会いを楽しんで」

王妃様の言葉でお茶会という名の集団お見合いが始まった。3日前に婚約者候補と王子たちだけで既に顔合わせは済んでいて、辞退した候補も数人いる。私も辞退したいが、グランのためにもそれは出来ない。

「やあ、ベルティナ嬢。今日も麗しいね」

最初に私に話しかけてきたのは第2王子であるエルフィント殿下だ。

「兄様。抜け駆けは狡いですよ。今日のドレスもよくお似合いですよ、ベルティナ嬢」

続いてやって来たのは第3王子であるライオネル殿下。片方ずつ両手を取られて手の甲に口付ける。鳥肌が・・・・。

もうね、他の候補の視線が厳しい厳しい。この2人の何処がいいのか。少なくとも私は受け付けない。と言うのも・・・・。第2王子は、赤い髪に緑の瞳をした一言で言うなら巨漢。お腹が垂れていないのと糸目じゃないのが救い。第3王子は、赤茶の髪をした普通のデブ。ぽっちゃりなんて可愛いものじゃない。お顔にもたっぷりのお肉が付いて、辛うじて目が開いているのが分かる。瞳の色?見えないから分からない。どちらが人気か?そんなことは知らん!!!

「ご機嫌よう、エルフィント殿下、ライオネル殿下」

淑女らしい笑みアルカイックスマイルを貼り付けて取り繕う。2人に両側から挟まれて圧迫感が凄い。然り気無く握られた手を引き抜いて取り返した。

「さあ、こちらにどうぞ、ベルティナ嬢」

「このお菓子をお好みでしたよね?」

「飲み物をこちらに。ああ、これがお好きでしたね」

2人は私を挟んで座り、あれこれと世話を焼いてくる。嫉妬ダダ漏れでこちらを睨む候補のご令嬢たちと興味津々の招待客たち。保護者も一緒だから、その数や。チビリそうだ。2人は困惑した顔の私に全く気付くことなく話しかけ、あの手この手で迫ってくる。

「エルフィント殿下、わたくし達ともお話しいたしませんか?」

「そうですわ。ライオネル殿下、こちらのケーキはとても美味しゅうございましてよ」

「ベルティナ様は、わたくし達がご一緒ではご迷惑かしら?」

しびれを切らしたご令嬢たちが、私と王子たちの間に割って入った。

「とんでもない。わたくしもみなさんとお話がしたいですわ。いいですよね?エルフィント殿下、ライオネル殿下」

どうぞ、王子たちを引き取ってください。

「それは、まあ、仕方ないな」

「ベルティナ嬢はここでいいよね?」

席をご令嬢たちに譲るつもりが先に牽制されてしまった。仕方ないから適当なところで抜け出すことにしよう。それまでの我慢。ぴったりと張り付く2人が気持ち悪い。本当に、生理的に駄目ってあるんだなぁと実感した。

「エルフィント殿下の守護精霊は上級の風系ですのね。わたくしもですのよ」

「あら、わたくしは中級ですが火系の守護精霊ですから、殿下の守護精霊とは相性が良いですわね」

「そうだね」

「ライオネル殿下は珍しい守護精霊ですけど、どういった精霊ですの?」

「僕のは上級の植物系。見た目はそう見えないところが気に入ってるんだ」

「まあ、でしたら、わたくしの守護精霊と仲良く出来そうですわ」

右と左からそれぞれの王子に話しかけるご令嬢たちと、間に挟まれてどちらの話にも入れない私。王子たちはご令嬢たちと話しながらも私にお菓子や飲み物を差し出し、時には皿やグラスを使用人に片付けさせ、細々と世話を焼いてくる。その度にご令嬢たちの視線が痛くて痛くて。ちゃんと話を聞いてあげて!私にかまわないで!何度そう言いたかったか。

「エルフィント殿下、あちらのお花が見頃ですわ。行きませんか?」

「ライオネル殿下、あちらで珍しい催しが始まりますわ。ご一緒に如何ですか?」

「「ベルティナ嬢、一緒に行こう」」

ああ。ここで私を巻き込まないでほしい。退散するから、しっかりガッチリ王子様の心をつかんでくださいな。

「済みません。少し失礼致します」

「ベルティナ嬢、どこに?」

「ちょっと・・・・」

「ああ。すぐに戻って来るんだよ?」

私はお花摘みを装って、激しいバトルが始まったその場からそそくさと立ち去った。
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