不憫な貴方を幸せにします

紅子

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2人は甘い砂糖菓子?

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私と取引している彼が第1王子のグランバートル・スノウベールと分かってからも、私たちは秘密の畑で定期的に会っている。大きな木に擬態した木のおうちをライムに作ってもらって、快適に過ごせるようになった。

「今日は何があるの?」

「魔蟻の砂糖と魔魚の卵と魔鳥の卵。それと、魔草の実」

魔魚の卵って、イクラじゃない?うっわ。超貴重。魔蟻の砂糖だって、普通の砂糖の50倍の値段がするし、魔鳥の卵は濃厚だから、お菓子にするとやみつきになる。

「また、珍しい物を。無理したんじゃない?」

「これで、美味しいものを作ってもらえるんだから、多少の無理はする」

グランは私の前では顔を隠さなくなった。それに、とても甘い。今まで誰にも愛情を注げなかった分が、全部私に向けられている。ここにいる間中、私のそばを離れないし、隙あらば抱っこしてくる。縦抱きで。私、重いと思うんだよね。なにせ、子豚ちゃんだから。成長して益々プニプニのポヨポヨ。胸も大きく育ってる。腹の方が出てるけどね!

とりあえず、グランが持ってきた砂糖と卵でパイを作る。他にもグランが餓えないようスープ、サラダ、パン、揚げ物、煮物、焼き物と同時進行でせっせと調理した。虫の混入とか毒とか毒とか毒とか。食べられないものが食事に混ざるらしい。怖すぎる。魔術棟の公共の食堂ですらそうなのだから、今までよく生きてたと思う。

「はい。あーん」

グランの口許に果物を運ぶ。嬉しそうに食べてくれるから止められない。

「ティナもあーん」

私を膝に乗せて同じように真似をするグランは、格好いいのに可愛く見える。まあ、端から見たらバカップルそのものだよね。

「そういえば、私、来月から王都に行くことになったよ。王宮で王子様たちと親睦を深めるんだって。他の候補とも会うことになるらしいよ。グランもいるんだよね?」

グランの膝の上から確認した。知り合いがひとりもいないところに行くなんて嫌だ。そこに来るのは、ライバルだと息巻くご令嬢たちと目の保養にもならない王子たちだ。グランがいてくれるなら心強い。

「・・・・呼ばれてないから。それに、親睦会と言っても王子たちだけじゃなくて、同じ年頃の子息たちも招待されてる。要するに集団お見合いなんだよ」

そんな・・・・。私の癒やしが。集団お見合いなんて最悪。どんぐりの背比べ的な美男子ぶーちゃんたちがいっぱいなんでしょ?私、この世界じゃ美少女なんだけど。え?グラン、いないの?絶望のまま、グランに抱きつく。

「じゃあ、顔出したらすぐにグランのところに避難する」

「待ってるよ」

来ないと思ってるな、この顔は。絶対抜け出してやる!グランの胸に額を擦り付けていた私は、私の髪を梳くグランの切なそうな顔に気付かなかった。

「王都に行ったら、グランとももっと会えるね」

「うーん。どうかな?」

「グランは普段どこにいるの?王都じゃないの?」

「王都の魔術師団か離宮にいる。離宮に温室があるんだ。そこでティナから貰った種を育ててる」

「うわあ。見てみたい」

「うん。いつでもおいで。ああ。でも、もてなしは出来ないよ?離宮に使用人はいないから」

え?王子様なのにひとりなの?寂しくないの?それは聞いてはいけない気がした。

「そんなの気にしない。グランだけなら、遠慮なく転移できるね。あんまり人に知られたくない」

「そうだね。ライムに連れてきてもらうといいよ」

私たちはくっついたままたわいもない話をする。いつものことだ。グランはとにかくひっつきたがる。人の温もりを確かめるように、私の頬や額、手に触れて。時にはそこに口づけを落とす。そして、私にもそれを求めてくる。初めての触れ合いと注がれる愛情を確認したいのだろうと、私もチュッチュとおかえしする。これだけの美丈夫だ。ご褒美にしかならない。でも、ここまでが今の精一杯。中身40歳超えでも、実際はまだ12歳なのが何とも口惜しい。もう少し大人になったら、ね。

2人の甘い砂糖のような時間はまだまだ続く。
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