不憫な貴方を幸せにします

紅子

文字の大きさ
上 下
2 / 17

契約

しおりを挟む
今日は守護精霊との契約の日。私は浮かれてる。前世も合わせた人生の中で一番浮かれてると言ってもいい。フリルいっぱいの痛いドレスも気にならない。

フフフフフ。誰がいいかなぁ。もふもふ?フェンリルとか定番じゃない?ペガサスとかユニコーンもいいなぁ。ドラゴンもかっこいいよね。空飛びたい。ふわふわした精霊種も捨てがたいし。夢は広がるよ、どこまでも。

「ティナ、着いたよ」

私はお父様とお母様に挟まれて、ニッコニコで神殿に入っていった。その時神殿に来ていた人たちの頬を染めた表情も、私を拝む人が数人でなくいたことも、全部ぜーんぶ、アウトオブ眼中だった。

「ようこそおいでくださいました、領主様。本日はご息女様の契約の儀で宜しかったでしょうか」

ここは、シャンピーニ伯爵領の神殿。私たちは大神官に促され、すぐに客間に通された。大神官は、ボテッとした身体に開いているのか分からない細い目が特徴的な比較的美男子ぶーちゃんよりのおじさんだった。

「ああ、世話になるよ。10歳になったし体調も落ち着いたからね。忙しくなる前にと思ってね」

お話はいいから早く契約をしてほしいなぁ。大人の話が長いのはどの世界でも共通らしい。私は伯爵令嬢としてみっともない態度にならないようおとなしく座って待つことしか出来ない。お母様がちょっと意外そうな顔で見ているのは、今までの私ならこんなに長く待たされたら、癇癪を起こしているから。長いといっても15分くらいなんだけどね?漸く大人の話が一段落して、私は儀式の間に通されることになった。ドキドキする。

「では、ご息女様。陣の中央に立って祈りを捧げてください」

「はい」

祈り。それは両手を組んでこの世界の神様に呼びかけ、感謝を捧げることだったりする。ついでにこんな守護精霊がほしいなぁと付け加えてみた。図々しい?黙って心の中でお願いする分には誰にも分からないもん。

もふもふがいいかなぁ。ドラゴンもいいなぁ。誰が守護精霊になってくれるかなぁ。楽しみだなぁ。

わくわくと祈りながら浮かれていると、陣からぶわっと風が巻き起こった。

『俺だ!もふもふを望んでるだろうが』

『いいや!ドラゴンと名指ししておるのだから、我が行く!』

『まだ言うか!』

言い合いをする2体の身体がぶつかり暴風が巻き起こった。火花が物理的に散る。何が起こっているのか、全く理解できない私はポカンとその様子を見守るしかない。ちなみに私には被害はない。

「これは!!!!」

大神官の大きな声が2体の暴走を止めた。素晴らしい声量だった。

『ん?』

『何事だ?』

「2体が一度に顕れるなど前代未聞。しかも最上級の守護精霊とは!!!ご息女様には、龍様のご加護がございますぞ!」

大興奮の大神官と状況を一瞥し冷静さを取り戻した2体の守護精霊。私はその2体に挟まれる形で陣にいる。

『どうやら、神界から出てしまったようだな』

『我は戻らんぞ』

『俺たちを喚べたのだから戻る必要もないだろう』

『それもそうだな』

『改めて、俺はフェンリル。名をつけろ』

『我はドラゴン。名を貰おうか』

2体。きちゃった。チート?チートなの?そういう設定?只今、混乱中。

「・・・・・・あの。よろしくお願いします?名前ね。えっと・・・・」

白いもふもふに覆われたフェンリルとプラチナに輝く鱗?を持つドラゴン。

「フェンとゴン」

『『却下だ』』

ですよね。

「ザクロ、ライム。若しくは、鈴木、佐藤。あるいは、リン、シュガー。どれがいい?」

ザクロとライムというは2体の瞳の色から。透き通るような赤と瑞々しい緑が印象的だ。ほかは、まあ、呼びやすくて忘れなさそうだから?

『ザクロにきまってる』

『ライムだな。いいだろう』

『『契約成立だ』』

こうして私は、一度に2体の守護精霊を手に入れて、大騒ぎの神殿をあとにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。 そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。 そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。 ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。

私、確かおばさんだったはずなんですが

花野はる
恋愛
不憫系男子をこよなく愛するヒロインの恋愛ストーリーです。 私は確か、日本人のおばさんだったはずなんですが、気がついたら西洋風異世界の貴族令嬢になっていました。 せっかく美しく若返ったのだから、人生勝ち組で楽しんでしまいましょう。 そう思っていたのですが、自分らしき令嬢の日記を見ると、クラスメイトの男の子をいじめていた事が分かって……。 正義感強いおばさんなめんな! その男の子に謝って、きっとお友達になってみせましょう! 画像はフリー素材のとくだ屋さんからお借りしました。

【完結】男の美醜が逆転した世界で私は貴方に恋をした

梅干しおにぎり
恋愛
私の感覚は間違っていなかった。貴方の格好良さは私にしか分からない。 過去の作品の加筆修正版です。

やさしい・悪役令嬢

きぬがやあきら
恋愛
「そのようなところに立っていると、ずぶ濡れになりますわよ」 と、親切に忠告してあげただけだった。 それなのに、ずぶ濡れになったマリアナに”嫌がらせを指示した張本人はオデットだ”と、誤解を受ける。 友人もなく、気の毒な転入生を気にかけただけなのに。 あろうことか、オデットの婚約者ルシアンにまで言いつけられる始末だ。 美貌に、教養、権力、果ては将来の王太子妃の座まで持ち、何不自由なく育った箱入り娘のオデットと、庶民上がりのたくましい子爵令嬢マリアナの、静かな戦いの火蓋が切って落とされた。

私だけ価値観の違う世界~婚約破棄され、罰として醜男だと有名な辺境伯と結婚させられたけれど何も問題ないです~

キョウキョウ
恋愛
どうやら私は、周りの令嬢たちと容姿の好みが違っているみたい。 友人とのお茶会で発覚したけれど、あまり気にしなかった。 人と好みが違っていても、私には既に婚約相手が居るから。 その人と、どうやって一緒に生きて行くのかを考えるべきだと思っていた。 そんな私は、卒業パーティーで婚約者である王子から婚約破棄を言い渡された。 婚約を破棄する理由は、とある令嬢を私がイジメたという告発があったから。 もちろん、イジメなんてしていない。だけど、婚約相手は私の話など聞かなかった。 婚約を破棄された私は、醜男として有名な辺境伯と強制的に結婚させられることになった。 すぐに辺境へ送られてしまう。友人と離ればなれになるのは寂しいけれど、王子の命令には逆らえない。 新たにパートナーとなる人と会ってみたら、その男性は胸が高鳴るほど素敵でいい人だった。 人とは違う好みの私に、バッチリ合う相手だった。 これから私は、辺境伯と幸せな結婚生活を送ろうと思います。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

前世を思い出した我儘王女は心を入れ替える。人は見た目だけではありませんわよ(おまいう)

多賀 はるみ
恋愛
 私、ミリアリア・フォン・シュツットはミターメ王国の第一王女として生を受けた。この国の外見の美しい基準は、存在感があるかないか。外見が主張しなければしないほど美しいとされる世界。  そんな世界で絶世の美少女として、我儘し放題過ごしていたある日、ある事件をきっかけに日本人として生きていた前世を思い出す。あれ?今まで私より容姿が劣っていると思っていたお兄様と、お兄様のお友達の公爵子息のエドワルド・エイガさま、めちゃめちゃ整った顔してない?  今まで我儘ばっかり、最悪な態度をとって、ごめんなさい(泣)エドワルドさま、まじで私の理想のお顔。あなたに好きになってもらえるように頑張ります! -------だいぶふわふわ設定です。

あなたの運命になれたなら

たま
恋愛
背の低いまんまるボディーが美しいと言われる世界で、美少女と言われる伯爵家のクローディアは体型だけで美醜を判断する美醜感に馴染めずにいる。 顔が関係ないなんて意味がわからない。 そんなか理想の体型、好みの顔を持つ公爵家のレオンハルトに一目惚れ。 年齢も立場も離れた2人の運命は本来重なる事はないはずだったが…

【完結】溺愛される意味が分かりません!?

もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢 ルルーシュア=メライーブス 王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。 学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。 趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。 有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。 正直、意味が分からない。 さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか? ☆カダール王国シリーズ 短編☆

処理中です...