不憫な貴方を幸せにします

紅子

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私の守護精霊

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帰りの馬車で、ザクロとライムは、10歳の私の膝にすっぽりと収まるくらいの大きさになって、ザクロは膝の上に、ライムは頭の上に居場所を決めたようだ。重さは感じない。ザクロを撫でながら考える。私基準の美男子、美丈夫が見つからないのなら、生涯独身で通そうか?パパ程度の醜男イケメン寄りフツメン?いやいや、そこは妥協しちゃ駄目でしょ?前世はそこを妥協して、見事に痛い目に遭った。結婚3年目に離婚。子供がいなかったことが幸いした。

まだ、10歳。手に職をつける時間はある。ザクロとライムが居てくれるなら、寂しくもない。うん。そうしよう。私は、お父様とお母様の途方に暮れたように私を見る目から逃れるべく、そんなどうでもいいことに思考を飛ばしていた。この時私はまだ貴族社会というものを本当の意味では理解していなかったのだ。




家に着いてから、なんだか深刻な顔の両親と別れ、まず基本的なことを確認する。

「ザクロとライムはどんな魔法を使うの?」

『俺は闇系と付与だ』

『我は汎用系と緑の手だ』

「汎用?付与?緑の手?」

『汎用系とは、基本属性に含まれない魔法のことだ。時空間もこの汎用に含まれる。初級守護精霊はこの汎用系の中のひとつを持つものも多い』

「たとえば、転移とか亜空間収納とか?」

『ああ。そういった類いのものは上級守護精霊でないと扱えないがな。他には重力を操ったり、魔法を反射して返したり、気配や魔力を察知したり、身体強化もだ』

「気配を消したり姿を隠したりは?」

『それは、闇系の魔法だ。我の汎用では出来ないが、ザクロの分野だな』

『闇系は、影を操るのが有名だが、攻撃も出来るぞ。状態異常の解除と呪の反転も可能だ。あまり知られていないが、傷や病を癒やすことも出来る。光系よりも克明な指示イメージが必要だから使える者は限られるが。付与は、そうだな。隠密の魔法をローブに付与することで誰でも使えるように出来る。ライムのもつ亜空間収納を魔石に付与することも可能だ』

『緑の手は、植物の育成を促し成長を促進する。収穫まで何月もかかる成長が1日で可能になるということだ。守護精霊の階級に依るがな。我ほどになると種は必要ない。頭に描く事が出来るなら、あらゆる植物が栽培可能だ。当然、上位の守護精霊ほど出来映えはよくなる』

チートだ。間違いなくチート。人生の勝ち組。これ、絶対儲かるよね?将来の金策に目処が立ってニヤリとしてしまった。

守護精霊ザクロとライムと契約した翌日、私はお父様に呼び出された。

「お父様。ティナです」

「入りなさい」

滅多に入ることのない執務室に通されると、そこには、渋~い顔のお父様と心配顔のお母様がいた。執事と侍女はお茶の用意をしたあとすぐに外に出されていない。

「どうかしましたか?」

「・・・・ティナは、昨日のことをどれだけ把握している?」

「昨日のこと?ザクロとライムですか?2体の能力は聞きました。検証したいとは思っています」

私の返答にお父様は頭を抱えた。

「そういうことではない。1度の契約で2体の守護精霊を得た事についてだ」

私はこてんと首を傾げた。全く話が見えない。

「既に近隣の貴族に知れ渡っている。神殿から国王陛下にも話が行ったはずだ」

はっ?!昨日の今日でしょ?情報速っ!

「王族から婚約の打診が来たら断ることは出来ない。能力だけでなく、ティナは見た目も天使のようだし、我が家の家格も伯爵で問題ない。分かるね?婚約者候補とはなるだろうが。ハァ」

分かりたくはないけど、最高権力者に逆らうなんて出来ないことくらい子供でも分かる。第2王子は12歳、第3王子は11歳。どちらも年回りは問題ない。第1王子も17歳と歳は少し離れてるけど、婚約者はいなかったはずだ。

「婚約者候補ということは、私以外にもいるということですか?」

「第2王子殿下と同じ歳の公爵家のご令嬢が2人。第3王子殿下と同じ歳の侯爵家のご令嬢が3人とティナと同じ歳の公爵家のご令嬢が2人。第2王子と第3王子の婚約者を区別はしていない。控えめに言って激戦だと聞いている」

激戦・・・・。王子2人が年子だから、この辺りの子供が多くなったんだろう。さすがにこの高位貴族の戦いには混じりたくはない。怖すぎる。

「第1王子にも婚約者はいませんよね?」

「ああ。ただ、あの方は見た目の問題というか、同年代のご令嬢がまともに彼を直視できなくてなぁ。失神者が相次ぎ、修道院へ駆け込むご令嬢が多発したことから、一応探している体はとっているが・・・・。本人も魔術師団に籠もってしまってなぁ。候補者の内、選ばれなかった者が第1王子の婚約者になる」

!!!こんなところで、有力情報?!それって、私にとっての優良物件では?え?違うかも?それでも期待しちゃう♪

「とにかく、そういうことだから、心に留めておいてくれ」

心に留めるくらいはかまわない。でも、人気のある王子なんて、私の望む美男子にはほど遠い。どうか、お父様の杞憂でありますように。もしくは、第1王子が私の王子様ですように。
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