巻き込まれ召喚になった私はまったりのんびりスローライフを目指します!

紅子

文字の大きさ
28 / 28

スローライフ

しおりを挟む
精霊の世界へ行った後は、またのんびりと畑を耕し、パンをこねこねして、洋服や小物を作って売る生活を楽しんでいる。ああ。平和だ。私が平穏を噛みしめていると、来客を告げるベルが鳴った。

「ハァ」

出たくない。どうせカイゼスなのだ。放っておきたい。無視して畑仕事を続けている間もベルが鳴り響く。まあ、船が桟橋にある時点で、居留守は使えないんだけどねぇ。

「遅い!」

やっぱりカイゼスだった。

「毎日毎日、暇なの?」

「言っただろ?俺は神麻と居ないと狂うって」

最近はこれを盾にしてくる。殺意が湧かなくもないけど、そんなことをしても喜ばせるだけだと分かってからは、諦めることにした。ヘルバーから聞いたのだ。龍族の究極の幸せは、番に殺されることだと。特に私のように逆鱗を取り込んだ番は、寿命を共有しているから、カイゼスを殺せば私も死ぬ、諸共に。重い。重すぎる。もっと、こう、軽快な感じの軽~いノリはダメなの?

「ちょっと待ってて。もう少しで畑仕事も終わるから。後でそっちの島に行くよ」

「入れてくれないの?」

入れるわけない。帰らなくなるじゃない。

「自分の島で!大人しく!待てるよね?」

甘やかしてはいけないと、これもヘルバーから教わった。つけあがるらしい。「飴と鞭を上手に使って飼い慣らせ!」とはヘルバーの実感のこもった教えだ。

カイゼスの番ということは受け入れた。劇場で様子のおかしくなった私をずっとお世話してくれた上、この世界に繋ぎ止めてくれたあたりから、少しずつ心を許し始めていたんだと思う。元の世界に戻って祖父と名乗る男や精霊王たちから私を護ってくれたことで信じてもいいかなと思うようになった。真実を隠すことなく曝したのも信用度を上げた。

ブォーンと船を走らせて、カイゼスのひとり島を訪ねると、見覚えのある物体が庭に鎮座していた。

「これ、私の車、だよね?」

「ああ。仕組みは解ったから、この部分とこの部分を魔道具化して、こっちでも使えるようにした。乗ってみろ」

魔道具化されているのは、エンジンと電気系だった。エンジンは、彼女聖女のEVを参考にしたらしい。車の仕組みが解るなんてもしかして、カイゼスって賢い?私は恐る恐る乗り込むとエンジンをかけた。独特のエンジン音がして、ランプが灯る。ゆっくりとアクセルを踏み込むと・・・・。

「動いた。凄い」

でこぼこ道ばかりだからすぐにパンクしそうだけど、使えることには変わりない。早速、私のひとり島の道を整備しようと心に決めた。エンジンを止めてカイゼスを見ると、得意げな顔をしている。

「どうだ?使えそうか?」

どうやら、これを実用化したいらしい。ちなみに、テレビとスマホは持ち帰れなかった。まあ、そうだよね。いろいろと無理がある。

「うん。もう少し改善の余地はあるけど、馬車より快適なのは間違いない」

「こっちにはない部品とか素材も多いからすぐには無理だな」

「その間に、道の整備と交通規則を作らないとね」

「そうか。馬車よりスピードが出る分、危険度も増すな。その辺はあいつらに丸投げするか」

あいつらとは、タナートやジム、タマキ、ロルフたちのことだ。

「脳筋ばっかりだけど大丈夫?」

「その辺は補佐や大臣たちが何とかするさ」

皇帝を退いたカイゼスは、国のことにはノータッチを貫き、ずっとやりたかったという魔道具作りに精を出している。島の一角に工房を創るほどの入れ込みようだ。暫くは、車の作成で手一杯になるだろう。楽しそうで何よりだ。

「今日は、ヘルバーがタナートと来るって」

ヘルバーの伴侶がタナートだと知ったときには、顎が外れるくらい驚いた。私のことを知って以来、ずっと出入り禁止にしていたそうだ。最近になって漸く解禁になったとヘルバーに抱きついて離れないタナートに呆れてしまった。これが、龍族の普通らしい。引き攣った顔でカイゼスを見ると、私の隣でソワソワしていた。当然、見なかったことにしたが。

それよりも前にダムやジム、ロルフ、アキ、タナート、タマキに会い、直接謝罪を受けた。カイゼスは、許さなくていいと言ったが、私はそれを受け入れた。特にダムは私を過保護なくらい心配してくれただけで、何もされてはいないし、ロルフやアキも同様だ。

「じゃあ、料理の量を増やさないとね」

「泊まっていくだろう?」

「うん」

それが当然の顔をしたカイゼスと受け入れる私は、周りから見るとそれぞれのひとり島で、別々に暮らしているのが信じられないらしい。私のひとり島は、私の心の安寧には必要なのだ。手放すつもりは全くない。今は、まだ、時々こうして泊まるくらいがちょうどいい。少しずつ、この家に私の私物が増えていくけど、私が帰るのはあの私のひとり島だ。カイゼスもそれを許してくれている。

「魚と貝を捕ってきてくれる?」

「分かった。希望は?」

「淡泊なのがいい。貝はムール貝とアサリを多めに。エビがあるとなおよし!」

「りょーかい」

パンを焼いて、スープを作り、サラダを用意する。カイゼスの家政婦は卒業した。ある日、仕事と割り切るのは寂しいと感じてしまったのだ。それに、朝と夜はたいてい一緒に食べるし、それでなくとも、毎日この島に通っているのだから。



巻き込まれ召喚されてから今日まで、幸運値100は実にいい仕事してくれている。念願のスローライフ。始まったばかりです♪










~END~













最後までお読みいただき、ありがとうございました\(^o^)/
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されましたが、お兄様がいるので大丈夫です

榎夜
恋愛
「お前との婚約を破棄する!」 あらまぁ...別に良いんですよ だって、貴方と婚約なんてしたくなかったですし。

夫より強い妻は邪魔だそうです【第一部完】

小平ニコ
ファンタジー
「ソフィア、お前とは離縁する。書類はこちらで作っておいたから、サインだけしてくれ」 夫のアランはそう言って私に離婚届を突き付けた。名門剣術道場の師範代であるアランは女性蔑視的な傾向があり、女の私が自分より強いのが相当に気に入らなかったようだ。 この日を待ち望んでいた私は喜んで離婚届にサインし、美しき従者シエルと旅に出る。道中で遭遇する悪党どもを成敗しながら、シエルの故郷である魔法王国トアイトンに到達し、そこでのんびりとした日々を送る私。 そんな時、アランの父から手紙が届いた。手紙の内容は、アランからの一方的な離縁に対する謝罪と、もうひとつ。私がいなくなった後にアランと再婚した女性によって、道場が大変なことになっているから戻って来てくれないかという予想だにしないものだった……

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

慈愛と復讐の間

レクフル
ファンタジー
 とある国に二人の赤子が生まれた。  一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。  慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。  これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。  だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。 大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。  そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。  そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。  慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。  想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……

そんな未来はお断り! ~未来が見える少女サブリナはこつこつ暗躍で成り上がる~

みねバイヤーン
ファンタジー
孤児の少女サブリナは、夢の中で色んな未来を見た。王子に溺愛される「ヒロイン」、逆ハーレムで嫉妬を買う「ヒドイン」、追放され惨めに生きる「悪役令嬢」。──だけど、どれもサブリナの望む未来ではなかった。「あんな未来は、イヤ、お断りよ!」望む未来を手に入れるため、サブリナは未来視を武器に孤児院の仲間を救い、没落貴族を復興し、王宮の陰謀までひっくり返す。すると、王子や貴族令嬢、国中の要人たちが次々と彼女に惹かれる事態に。「さすがにこの未来は予想外だったわ……」運命を塗り替えて、新しい未来を楽しむ異世界改革奮闘記。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

猛獣のお世話係

しろねこ。
恋愛
「猛獣のお世話係、ですか?」 父は頷き、王家からの手紙を寄越す。 国王が大事にしている猛獣の世話をしてくれる令嬢を探している。 条件は結婚適齢期の女性で未婚のもの。 猛獣のお世話係になった者にはとある領地をあげるので、そこで住み込みで働いてもらいたい。 猛獣が満足したら充分な謝礼を渡す……など 「なぜ、私が?私は家督を継ぐものではなかったのですか?万が一選ばれたらしばらく戻ってこれませんが」 「その必要がなくなったからよ、お義姉さま。私とユミル様の婚約が決まったのよ」 婚約者候補も家督も義妹に取られ、猛獣のお世話係になるべくメイドと二人、王宮へ向かったが…ふさふさの猛獣は超好み! いつまでもモフっていたい。 動物好き令嬢のまったりお世話ライフ。 もふもふはいいなぁ。 イヤな家族も仕事もない、幸せブラッシング生活が始まった。 完全自己満、ハピエン、ご都合主義です! 甘々です。 同名キャラで色んな作品を書いています。 一部キャラの台詞回しを誤字ではなく個性として受け止めて貰えればありがたいです。 他サイトさんでも投稿してます。

平民に転落した元令嬢、拾ってくれた騎士がまさかの王族でした

タマ マコト
ファンタジー
没落した公爵令嬢アメリアは、婚約者の裏切りによって家も名も失い、雨の夜に倒れたところを一人の騎士カイルに救われる。 身分を隠し「ミリア」と名乗る彼女は、静かな村で小さな幸せを見つけ、少しずつ心を取り戻していく。 だが、優しくも謎めいたカイルには、王族にしか持ちえない気品と秘密があり―― それが、二人の運命を大きく動かす始まりとなるのであった。

処理中です...