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巻き込まれぇ~
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私は、天咲羽 神麻。1年と少し前に両親が事故で亡くなって、天涯孤独になった。親戚もいない。もっとも、当時既に24歳だったから、生活に支障はなかった。今も変わらず、両親から引き継いだ畑の野菜を毎日見て回り、時間を見つけては趣味のコスプレの衣装作りで稼いでいる。今は、ネットという有難い文明の利器のお蔭で、コスプレの衣装も完全オーガニックの野菜も順調に売れて、手間は掛かるけど充実した日々だ。たまに、こういう迷惑な客も来るけど。
「だからぁ、ここの野菜を契約してあげるって言ってるの」
「ですから、結構です。そんなに数が出来るわけではないですから、専属契約は出来ません」
「もう!分からない人ね!出来た分だけでいいって言ってるのにぃ。余らせて腐らせるくらいならぁ売ればいいのよ」
「足りないことはあっても、余ることはないんです。そんなに簡単じゃありません」
どこのお嬢様のお遊びか知らないけど、オーガニック野菜のことを知らなすぎて話にならない。大きなレストランと契約できるほど作れないから、断ってるのに!
「これ以上話すことはありません。お帰りください」
「お茶の一杯も出さないなんて、常識ないんじゃないのぉ?」
突然やって来て、いきなり契約の話をしてきたのはそっち。いい加減ウンザリしてイライラし始めた私は、家に入ろうと踵を返した。
「待ちなさいよぉ!!!」
あまりの金切り声に振り向いた私の目に映ったのは、地面に何の前触れもなく、突然浮かび上がった何かの模様。私の居たところ、彼女から一歩分のところを中心に円形に広がっている。見間違いかと目をこすって見るも、さっきよりもはっきりと見えてしまった。
「え?」
「何よ。突然黙り込まないでよねぇ」
「いや、でも・・・・、それ」
私の指さした先を見た彼女も目を見開いた。どうやら、私の目がおかしくなったわけじゃないらしい。
「何これ?!あんた、何したのよ?!」
私?!
「知るわけないでしょ?!突然」
そこまで言ったところで、彼女の周りに風が巻き起こり、それは徐々に勢いを増していく。竜巻の様相を呈してきた。
「やだ。や。何これ。たす、助けて!助けてよぉ!」
こんなのどうすればいいの?!あたふたしつつも、私はその竜巻に、近くにあった箒を恐る恐る差し入れた。
「へ?!」
グワン!という効果音が聞こえそうなくらいの勢いで、私もその渦に巻き込まれ、咄嗟にめがねを抑えた。条件反射のようなものだ。すぐに箒を手放したにも関わらず、竜巻に飲み込まれた。はあ?!
コロコロコロコロ
ゴン
痛った・・・・。何が起きたの?
自宅の玄関を出たところに居たはずなのに・・・・。竜巻から放り出されてぶつかったのは石の壁。床に触れる手の感触は何処までも冷たい。家は、土間と畳の部屋しかないし、木造だ。間違っても大理石のような床と壁ではない。目の前には、重厚という言葉が相応しい緋色のベルベットのカーテンが、私と外界を隔離していた。何処まで運ばれちゃった、私?
「成功だ!」
「召喚、出来たぞ!」
「おおおお~♪!!!!」
カーテンの向こうから年配と思われる男の人の声が聞こえた。不穏な単語があった気がする。
「聖女様。召喚に応じていただきありがとうございます♪」
へぇぇぇぇ!!!!聖女ぉ!召喚だぁあ?!
まるでゲームのような単語が飛び交っている。私以外の誰か、いや、あのお嬢様しかいないか、が、このカーテンの向こうにはいるらしい。ここから出て行くべきか?
「あ、あのぉ?何がどうなって?」
彼女の混乱に満ちた声が届いた。ペタンペタンと靴音が響く。
「混乱するのも無理はありません。私たちは精霊王様たちの神託によって、あなたをこの世界に召喚いたしました」
「え?!何の、ために・・・・?」
同意する。何のために?嫌な予感がするのは彼女も同じらしく、声が固い。
「どうかこの世界を共にお救いください」
ざっと大勢の人が動いた音がした。
「還して!元の世界に戻しなさいよぉ!」
うん。私もそう言いたい。
「残念ながら、精霊王様たちのご意志です」
「どういうことよぉ!!!」
ダン!と足を踏み鳴らす音が部屋に木霊した。その時、カタンという音と風が部屋に流れ込んできた。ペタペタと靴音がする。
「聖女様」
今までのおっさんの声とは明らかに違う若々しい静かな声が響いた。
「ようこそお越しくださいました。図々しいことは承知しておりますが、どうかこの世界のためにそのお力を貸してくださいませんか?」
「あっ。あの、そのぉ」
さっきまでの彼女の勢いは消え失せている。ああ。しどろもどろになるほどいい男なのか。声の端々にハートが飛んでるねぇ。
「私たちの都合でこちらに召喚してしまったのです。あなたの今後は私が責任を持ちましょう」
「殿下!」
「いいんだよ。突然この世界に連れ去られて、帰れないんだ。不安になるのは当然だよ」
殿下・・・。ここは身分制度のある社会か?
「あの、でも。私に力なんてありません」
「大丈夫」
カチャッと金属がこすれる音が微かに聞こえて・・・・。
「な、何を!!!」
「この傷を治して?」
「そ、そんなこと・・・!どうやって?!」
「大丈夫。出来るよ。私を信じて?ヒールと唱えてごらん」
うーん。何が起こってるのか、さっぱり分からない。
「ひ、ヒール」
「お、おおおおおお」
何が起こってるの?!!!!!ここから出て行った方がいいんじゃない?私がどうしようか悩んでいると、ふわふわと金色の光の玉が幾つか眼鏡の隙間から私の目の中に飛び込んできた。
「本物だ!」「素晴らしい!」「ひゃっ」
私の声は野太い歓声に掻き消され、何故か私はそのまま意識を失った。
「だからぁ、ここの野菜を契約してあげるって言ってるの」
「ですから、結構です。そんなに数が出来るわけではないですから、専属契約は出来ません」
「もう!分からない人ね!出来た分だけでいいって言ってるのにぃ。余らせて腐らせるくらいならぁ売ればいいのよ」
「足りないことはあっても、余ることはないんです。そんなに簡単じゃありません」
どこのお嬢様のお遊びか知らないけど、オーガニック野菜のことを知らなすぎて話にならない。大きなレストランと契約できるほど作れないから、断ってるのに!
「これ以上話すことはありません。お帰りください」
「お茶の一杯も出さないなんて、常識ないんじゃないのぉ?」
突然やって来て、いきなり契約の話をしてきたのはそっち。いい加減ウンザリしてイライラし始めた私は、家に入ろうと踵を返した。
「待ちなさいよぉ!!!」
あまりの金切り声に振り向いた私の目に映ったのは、地面に何の前触れもなく、突然浮かび上がった何かの模様。私の居たところ、彼女から一歩分のところを中心に円形に広がっている。見間違いかと目をこすって見るも、さっきよりもはっきりと見えてしまった。
「え?」
「何よ。突然黙り込まないでよねぇ」
「いや、でも・・・・、それ」
私の指さした先を見た彼女も目を見開いた。どうやら、私の目がおかしくなったわけじゃないらしい。
「何これ?!あんた、何したのよ?!」
私?!
「知るわけないでしょ?!突然」
そこまで言ったところで、彼女の周りに風が巻き起こり、それは徐々に勢いを増していく。竜巻の様相を呈してきた。
「やだ。や。何これ。たす、助けて!助けてよぉ!」
こんなのどうすればいいの?!あたふたしつつも、私はその竜巻に、近くにあった箒を恐る恐る差し入れた。
「へ?!」
グワン!という効果音が聞こえそうなくらいの勢いで、私もその渦に巻き込まれ、咄嗟にめがねを抑えた。条件反射のようなものだ。すぐに箒を手放したにも関わらず、竜巻に飲み込まれた。はあ?!
コロコロコロコロ
ゴン
痛った・・・・。何が起きたの?
自宅の玄関を出たところに居たはずなのに・・・・。竜巻から放り出されてぶつかったのは石の壁。床に触れる手の感触は何処までも冷たい。家は、土間と畳の部屋しかないし、木造だ。間違っても大理石のような床と壁ではない。目の前には、重厚という言葉が相応しい緋色のベルベットのカーテンが、私と外界を隔離していた。何処まで運ばれちゃった、私?
「成功だ!」
「召喚、出来たぞ!」
「おおおお~♪!!!!」
カーテンの向こうから年配と思われる男の人の声が聞こえた。不穏な単語があった気がする。
「聖女様。召喚に応じていただきありがとうございます♪」
へぇぇぇぇ!!!!聖女ぉ!召喚だぁあ?!
まるでゲームのような単語が飛び交っている。私以外の誰か、いや、あのお嬢様しかいないか、が、このカーテンの向こうにはいるらしい。ここから出て行くべきか?
「あ、あのぉ?何がどうなって?」
彼女の混乱に満ちた声が届いた。ペタンペタンと靴音が響く。
「混乱するのも無理はありません。私たちは精霊王様たちの神託によって、あなたをこの世界に召喚いたしました」
「え?!何の、ために・・・・?」
同意する。何のために?嫌な予感がするのは彼女も同じらしく、声が固い。
「どうかこの世界を共にお救いください」
ざっと大勢の人が動いた音がした。
「還して!元の世界に戻しなさいよぉ!」
うん。私もそう言いたい。
「残念ながら、精霊王様たちのご意志です」
「どういうことよぉ!!!」
ダン!と足を踏み鳴らす音が部屋に木霊した。その時、カタンという音と風が部屋に流れ込んできた。ペタペタと靴音がする。
「聖女様」
今までのおっさんの声とは明らかに違う若々しい静かな声が響いた。
「ようこそお越しくださいました。図々しいことは承知しておりますが、どうかこの世界のためにそのお力を貸してくださいませんか?」
「あっ。あの、そのぉ」
さっきまでの彼女の勢いは消え失せている。ああ。しどろもどろになるほどいい男なのか。声の端々にハートが飛んでるねぇ。
「私たちの都合でこちらに召喚してしまったのです。あなたの今後は私が責任を持ちましょう」
「殿下!」
「いいんだよ。突然この世界に連れ去られて、帰れないんだ。不安になるのは当然だよ」
殿下・・・。ここは身分制度のある社会か?
「あの、でも。私に力なんてありません」
「大丈夫」
カチャッと金属がこすれる音が微かに聞こえて・・・・。
「な、何を!!!」
「この傷を治して?」
「そ、そんなこと・・・!どうやって?!」
「大丈夫。出来るよ。私を信じて?ヒールと唱えてごらん」
うーん。何が起こってるのか、さっぱり分からない。
「ひ、ヒール」
「お、おおおおおお」
何が起こってるの?!!!!!ここから出て行った方がいいんじゃない?私がどうしようか悩んでいると、ふわふわと金色の光の玉が幾つか眼鏡の隙間から私の目の中に飛び込んできた。
「本物だ!」「素晴らしい!」「ひゃっ」
私の声は野太い歓声に掻き消され、何故か私はそのまま意識を失った。
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