貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子

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女神様がやってきた

対策と対応、決まるかなぁ?

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わたしたちは、宿へ転移してすぐに、皇城に向かった。通された部屋には、昨日のメンバーに加えて、各ギルドの総帥と各国の神殿長がいた。

(神殿長って国毎にひとりしかいないの?)

(ええ、各神殿のトップは神官長なんですよ。神殿長は各王都の神殿にのみ存在します。その中でも頂点にいるのが、皇都の神殿長です)

それは、知らなかった。

「お待たせして、申し訳ありません」

「いや、ご苦労であった。楽にしてよい」

わたしたちが座ると、それを待っていたかのように、龍人の国の宰相が話し出した。

「ここにいる者には、先程、女神様の仰ったことは説明済みです。破壊神とアンデッドへの対策と方針を話し合うところであなた方が戻ってこられました」

「して、どうやってタルまで戻ったのだ?それにアンデッドとやらはどうであった?」

皇帝陛下は、興味津々だ。

我らの女神・・・・・のご助力によって、と言えばご納得いただけますか」

「「「なんと!」」」

朝一緒だった人たちは、チラッとわたしを見て納得顔だが、その他の人たちはざわざわと驚いている。それを無視してざらぱぱが、先程のアンデッドの討伐を説明していく。時々、りーぱぱやガルが補足をしていくので、かなり詳細に伝わった。

「女神様の仰ることを疑ったわけではないが、聖水は有効ということだな?」

「常備していれば、それほどの脅威にはなりません。魔獣型は別ですが」


話し合いは、宰相や各ギルドの総帥、神殿長、騎士団長、魔術師団長によって進められていく。

「聖水は、無料配布でかまいませんな?女神様がこれだけ多くの壺を用意してくださったのですから、有料というのは愚の骨頂。神殿は、女神様のご意志に逆らうことはいたしませんよ」

「それにしても使用期限がのぅ・・・・。冒険者ギルドにくる依頼は、何日も森の中を歩くようなものも多いからのぅ。次の街まで、野営を含むような依頼は、受けてくれなくなるぞぃ」

「それは困ります。商人たちも仕入れがしにくくなってしまう」

「薬草はどうなる?在庫がなくなれば、ポーションも作れん。値が高騰する」

「それだけではありませんぞ。新しく出来た複合スキルのこともありますゆえ。職人ギルドでは、なるべく早い段階で周知して育成に力を注ぎたいがこれでは、職人も集められん」

「「「どうしたもんか」」」

みんなに頭を抱えてしまった。


時間、かかりそうだなぁ。
話し合いが落ち着くまで、寝よう!
朝も忙しかったし。

くわぁーっ、とあくびをして、こてんとあっさり眠りに落ちた。

「寝たな・・・・」

「・・・・ええ、眠ってしまいましたね」

「朝から忙しかったからな、疲れたんだろう」









くわぁー。
よく寝たなぁ。

両手を上げて伸びをした。

「おっ、起きたか?」

「じゃらぱぱ、おはにょう」

いつの間にか、ガルからざらぱぱの膝の上に移動していた。さっと横から飲み物が出てくる。りーぱぱは、安定のおかん振りだ。

今日は、レモン水。

それをコクコクと飲みながら、キョロキョロと周りを見回す。

「ガルドなら、私の隣に・・・・」

うん、居た。人目も憚らずに居眠りしている。眠っているわたしが窮屈そうだったのをみかねたざらぱぱが、ガルから避難させてくれたんだって。ちょっと呆れてしまった。

第一皇子がそれでいいのかね?

だが、話し合いを暫く聞いていて、納得した。

ここの人たち、話し合いが下手すぎる・・・・。
だってね、わたしが眠る前と同じことをぐるぐると言い合ってるだけなんだもん。

(ねぇ、りーぱぱ?どれくらい、同じこと話してるの?ここでは、こんな感じが普通なの?)

(ああ・・・・、そうですね。鐘ひとつ分でしょうか。自分達の利権をできるだけ多く手に入れるためになかなか進みませんね・・・・)

利権かぁ。
利害関係者が多すぎると思う。
というか、利害関係にない人がいない?
うーん。それでこれは、ダメだと思うよ。
でもそれよりも、・・・・。

ぐぅ。きゅるるるる。

お腹減った!

「りーぱぱ、お腹すいた。帰っちゃダメなの?」

子供の声はよく通る。話し合いをしていた声が途切れ、みんなこちらを見ている。

「そうですね、ここに居ても退屈ですから、帰りましょうか?」

やっぱり、りーぱぱも退屈だったんだ。

「そうだな!ガルドを起こして、帰るか!」

ざらぱぱも嬉しそうだ。


「うおほん。一旦、休憩とする。再開は半刻後だ」

慌てたような皇帝陛下の鶴の一声で、一時休憩になった。帰っちゃダメなんだ。仕方ないので、ガルを起こして昨日泊まった離宮へ戻った。




「ハァ・・・・。何時ものことながら、疲れますね」

「全くだ。同じ話を何時までもグダグダと」

「なんだ、ふたりとも真面目に聞いてたのか?」

「いや、俺はシャナを堪能しながら、片手間だな」

「聞かないわけにいかないでしょう。私がシャナを堪能したかったですよ」

わたしを堪能するってなんだ?!止めて・・・・。

「しかし、あれではいっこうに決まらんな」

「何時ものことでしょう。何を今さら」

「いや、今回は緊急だからな。もう少しましかと思ってたんだが」

「「ハァ・・・・」」

「早く決めないと、アンデッドだらけになっちゃうけど、そこんとこ分かってるのかなぁ?」

おやつがわりの肉まんを頬ばりながら、タルのみんなを思う。何時までも門を閉ざしておくなんて出来ない。

「女神様にここまでしてもらっておいて、決まったときには、この地の殆どがアンデッドとか、笑えないよね・・・・」

あり得る。あの話し合いじゃ無いとは言いきれないよ。人口がどれくらいか知らないけど、自分で言っておきながら、冗談と笑い飛ばせないところが辛い。

「笑えねぇな・・・・」

ざらぱぱの顔色が悪い。ふたりも頷いている。タルでアンデッドの異様な増え方を目の当たりにしたなら、想像は難しくないだろう。それでも、あと半刻もしないうちに、またあの、くだらない話し合いが始まるかと思うと、憂鬱だ。

「もうさ、緊急なんだし、各国の王様と宰相さんで決めちゃえばいいんじゃない?利害関係者の主張はあらかた聞いたんだし。もう、帰りたいよ」

「そうですね。アンデッドや聖剣、聖水のことを一番良く分かっているのは、シャナですから、帰ってほしくないなら・・・・と少し、おどし・・交渉して危機感を煽ってみましょう」

脅すつもりなんだね、りーぱぱ。

「そうだな。そうしよう。それで渋るようなら、聖剣の試し抜きだけして、タルに帰ろうぜ」

「おっ!先に試し抜きしに行きてぇな!」





そして、3人がわたしを連れて向かったのは・・・・。

聖剣がある神殿。各国の皇族・王族だけがその開けられる。ガルは、皇子様だもんね!

結果は・・・・、というと、3人とも抜けました。

妥当かな。

そして、ガルに持ち上げられたわたしも試したところ、抜けちゃった・・・・。これ、誰でも抜けるんじゃない?
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