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カリストロ辺境伯領編
引き継ぎます
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ハルトが自由に隠し部屋に来るようになって、いつ魔法省の研究室に行っているのか不思議に思う。それ程頻繁にここに居る。私よりも来ていると思う。ここの間取りを私たちのいいように造り替えたのもそのひとつの原因だろう。ライトール様たちが、部屋を別にしていたのは、あの汚部屋で分かるとおり、ライトール様の片づけなさのせい。本人は何処に何があるが把握していたが、エギザリーナ様にしてみたら汚いし、資料が紛れて何処にあるか分からなくなったことも度々あったようだ。まあ、私たちには関係ないことだから、研究室は一緒にして、それぞれの研究スペースを確保。資料も共有出来るようにした。寝室は別の部屋に造ったが、休憩場所は研究室内にある。
「これだけの資料があるのに来ない訳がない。それに、ここあるものはいろんな意味で危なすぎて出せないものばかりだ」
まあ、そうだよね。私が見て分かるものだけでもヤバそうなのばっかりだった。
「前、ハルトに相談した魔道具のことなんだけど・・・・」
「領地のセキュリティーのことでしょ?」
「うん」
私とハルトの過去世が分かった今、この領地のセキュリティーのことを黙っていても無意味だ。エギザリーナ様は、そのセキュリティーの構築を手伝ったのだから、過去世を思い出したハルトにも筒抜けだ。
「確かに、紙で遺すのは悪手だね。ライトール様は口伝の形を取ったけど、長い年月の中で忘れられた。レーネの手に見取り図が渡っていなかったら、後どれくらい領内のセキュリティーがもったか分からないくらい不確実だ。やっぱり魔道具で伝えていくのがいいかな」
「手伝って、くれる?」
この前、自分でちょっとずつでも創るって言った手前、お願いするのは気が引けて、怖ず怖ずと上目遣いに聞いてみた。
「もちろん」
ハルトは「可愛すぎる」と私の髪に顔を埋めながら、ぎゅっと抱きしめた。
それから、時間が許す限り黒鋼と真珠も含めた4人でライトール様とエギザリーナ様の遺した資料を漁り、素材を調達して試行錯誤を繰り返した。私のお勉強と訓練の時間も増し増しで確保されている。そして、1年半の時間をかけてそれは遂に出来上がった。
「「「「カンパーイ♪」」」」
出来上がったのは、本を模した魔道具。それを起動することが出来る指輪型の魔道具。ふたつでひとつの役割を果たす。指輪型の魔道具は、国王を継ぐ際に引き渡される玉璽と連動させている。無断で玉璽を拝借したときは本当にハラハラした。
「さて、あとはこれをどうやって陛下に渡すかだね」
「え?!黒鋼が渡せばいいんじゃない?ライトール様の従魔だって知られてるんだし」
「それでは今まで渡さなかった理由がつかぬ」
それは、そうだよね。出会ってから6年?今更感が凄いか。
「私たち以外の誰かに見つけさせるのが一番なのよね」
「誰に?」
「テオドール様が適任なんだけど」
確かに。まだ、4歳のテオドールなら怪しまれにくい。
「離宮の隙間に埋もれさせるか。テオドールの目線にあれば、大人は気付かない。隠れんぼでそこに誘導すれば見つけてくれるはず」
「それなら決行は秋の狩りだね。領主一家はその前後に離宮を訪れるよね?」
「ハルトも一緒にね」
狩りの後、予定通り私たちは離宮でテオドールと隠れんぼをした。テオドールはちゃんと指輪型の魔道具を見つけて、大喜びで父様に自慢し始めた。彼にとっては新しい玩具と同じ扱いなのだ。父様とお祖父様はすぐにそれが玩具ではなく、魔道具だと気が付いたようだ。
「これは、何の魔道具だ?」
テオドールからお菓子と交換にそれを受け取り、じっくりと検分し始めた。
「ハルトよ。分かるか?」
魔法省に所属するハルトにも意見を求めている。
「さあ?ですが、これだけで何か出来るわけではなさそうですね」
私はそれを少し離れたところから眺めている。だって、近くに居たらポロッと余計なことを言っちゃいそうなんだもん。
「黒鋼殿!これを見たことはないか?」
私の隣でのんびりと寛ぐ黒鋼を父様は大声で呼んだ。
「知っておる。代々の国王に受け継がれるべき物だ。それと対を為す魔道具が存在する。それを開くための鍵だ」
黒鋼は、チラッとそれを視線の端に映すと、淡々と事実のみを伝える。
「まさか!父上。ご存じですか?」
「いいや。聞いたこともない」
そりゃ、そうだ。
「対となる魔道具とはどのような物か?」
「本型をしておったな」
そこまで言うと黒鋼は徐に立ち上がり、父様とお祖父様の元へ移動した。かわりにハルトがこちらへ来る。
「国王が知っておくべき、この領の機密が書かれておる」
「「!!!」」
私たちには聞こえないように話を進めていく。
「国王の持つ玉璽によって、この指輪を使える者を特定しておるぞ」
「随分と念の入ったことだな」
「それだけ、重要ということか。だが、何故伝わってないんだ?」
「さあな。長い年月の中で忘れ去られることも多い」
「早急に本型の魔道具を見つけねばな」
「それなら、国王の私室にあるはずだ。隠し部屋があるだろう?」
「そんなものが?!」
「それも知らんのか?嘆かわしいことだな。マントルピースの真ん中を下からその指輪で押してみるがいい」
これも、実は急遽繋げた。そこは、私たちの隠し部屋と違って、階段を降りた先にある。階段も部屋も元々あったものだが、忘れ去られていたから、それを指輪と連動させた。こうして、目論見通り、カリストロ領のセキュリティーを父様たちの手に委ねることが出来た。城に帰ってから、お祖父様と父様はコソコソと慌ただしく、セキュリティーの点検に奔走していると黒鋼から報告された。今まで私が頑張ってたんだから父様たちもがんばれ!
「これだけの資料があるのに来ない訳がない。それに、ここあるものはいろんな意味で危なすぎて出せないものばかりだ」
まあ、そうだよね。私が見て分かるものだけでもヤバそうなのばっかりだった。
「前、ハルトに相談した魔道具のことなんだけど・・・・」
「領地のセキュリティーのことでしょ?」
「うん」
私とハルトの過去世が分かった今、この領地のセキュリティーのことを黙っていても無意味だ。エギザリーナ様は、そのセキュリティーの構築を手伝ったのだから、過去世を思い出したハルトにも筒抜けだ。
「確かに、紙で遺すのは悪手だね。ライトール様は口伝の形を取ったけど、長い年月の中で忘れられた。レーネの手に見取り図が渡っていなかったら、後どれくらい領内のセキュリティーがもったか分からないくらい不確実だ。やっぱり魔道具で伝えていくのがいいかな」
「手伝って、くれる?」
この前、自分でちょっとずつでも創るって言った手前、お願いするのは気が引けて、怖ず怖ずと上目遣いに聞いてみた。
「もちろん」
ハルトは「可愛すぎる」と私の髪に顔を埋めながら、ぎゅっと抱きしめた。
それから、時間が許す限り黒鋼と真珠も含めた4人でライトール様とエギザリーナ様の遺した資料を漁り、素材を調達して試行錯誤を繰り返した。私のお勉強と訓練の時間も増し増しで確保されている。そして、1年半の時間をかけてそれは遂に出来上がった。
「「「「カンパーイ♪」」」」
出来上がったのは、本を模した魔道具。それを起動することが出来る指輪型の魔道具。ふたつでひとつの役割を果たす。指輪型の魔道具は、国王を継ぐ際に引き渡される玉璽と連動させている。無断で玉璽を拝借したときは本当にハラハラした。
「さて、あとはこれをどうやって陛下に渡すかだね」
「え?!黒鋼が渡せばいいんじゃない?ライトール様の従魔だって知られてるんだし」
「それでは今まで渡さなかった理由がつかぬ」
それは、そうだよね。出会ってから6年?今更感が凄いか。
「私たち以外の誰かに見つけさせるのが一番なのよね」
「誰に?」
「テオドール様が適任なんだけど」
確かに。まだ、4歳のテオドールなら怪しまれにくい。
「離宮の隙間に埋もれさせるか。テオドールの目線にあれば、大人は気付かない。隠れんぼでそこに誘導すれば見つけてくれるはず」
「それなら決行は秋の狩りだね。領主一家はその前後に離宮を訪れるよね?」
「ハルトも一緒にね」
狩りの後、予定通り私たちは離宮でテオドールと隠れんぼをした。テオドールはちゃんと指輪型の魔道具を見つけて、大喜びで父様に自慢し始めた。彼にとっては新しい玩具と同じ扱いなのだ。父様とお祖父様はすぐにそれが玩具ではなく、魔道具だと気が付いたようだ。
「これは、何の魔道具だ?」
テオドールからお菓子と交換にそれを受け取り、じっくりと検分し始めた。
「ハルトよ。分かるか?」
魔法省に所属するハルトにも意見を求めている。
「さあ?ですが、これだけで何か出来るわけではなさそうですね」
私はそれを少し離れたところから眺めている。だって、近くに居たらポロッと余計なことを言っちゃいそうなんだもん。
「黒鋼殿!これを見たことはないか?」
私の隣でのんびりと寛ぐ黒鋼を父様は大声で呼んだ。
「知っておる。代々の国王に受け継がれるべき物だ。それと対を為す魔道具が存在する。それを開くための鍵だ」
黒鋼は、チラッとそれを視線の端に映すと、淡々と事実のみを伝える。
「まさか!父上。ご存じですか?」
「いいや。聞いたこともない」
そりゃ、そうだ。
「対となる魔道具とはどのような物か?」
「本型をしておったな」
そこまで言うと黒鋼は徐に立ち上がり、父様とお祖父様の元へ移動した。かわりにハルトがこちらへ来る。
「国王が知っておくべき、この領の機密が書かれておる」
「「!!!」」
私たちには聞こえないように話を進めていく。
「国王の持つ玉璽によって、この指輪を使える者を特定しておるぞ」
「随分と念の入ったことだな」
「それだけ、重要ということか。だが、何故伝わってないんだ?」
「さあな。長い年月の中で忘れ去られることも多い」
「早急に本型の魔道具を見つけねばな」
「それなら、国王の私室にあるはずだ。隠し部屋があるだろう?」
「そんなものが?!」
「それも知らんのか?嘆かわしいことだな。マントルピースの真ん中を下からその指輪で押してみるがいい」
これも、実は急遽繋げた。そこは、私たちの隠し部屋と違って、階段を降りた先にある。階段も部屋も元々あったものだが、忘れ去られていたから、それを指輪と連動させた。こうして、目論見通り、カリストロ領のセキュリティーを父様たちの手に委ねることが出来た。城に帰ってから、お祖父様と父様はコソコソと慌ただしく、セキュリティーの点検に奔走していると黒鋼から報告された。今まで私が頑張ってたんだから父様たちもがんばれ!
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